書いてあること
- 主な読者:自社や商品の情報を、メディアに取り上げてもらうよう働き掛けたい広報担当者
- 課題:パブリシティー活動のノウハウがない
- 解決策:内容を工夫することに加えて、体裁や読みやすさなどの見た目にも注意を払ったプレスリリースにすることで、メディアに取り上げてもらいたやすくなる
1 中小企業におけるパブリシティー活動
1)パブリシティー活動って何?
大企業や大手フランチャイズチェーンは、多くの営業担当者に多数の企業を訪問させたり、多額の資金を投じて広告を打ったりすることで、商品の知名度を向上させることができます。しかし、人材や資金に限りのある中小企業においては、大企業と同じ活動はできません。特徴のある商品・サービス(以下「商品」)にもかかわらず、知名度が低いために、うまく顧客を獲得できないのは残念なことです。
こうした企業が検討するとよいのが「パブリシティー活動」です。パブリシティー活動とは、「企業などが自社や商品の情報を発信して、メディアに取り上げてもらうよう働き掛ける活動」であり、多くの営業担当者を割くことや、多額の予算を投入することなく、広く自社や商品の情報を発信することができます。
2)企業の情報発信と中小企業におけるパブリシティー活動の重要性
パブリシティー活動を含め、企業の情報発信は次のように行われています。
パブリシティー活動においても、物量(人材や資金力)が豊富で知名度が高い大企業のほうが有利です。しかし、パブリシティー活動は、「メディア側が取り上げる情報を決定する」という特性により、他の情報発信の取り組みと比べると、大企業と中小企業との差が少ない活動であるともいえます。
例えば、ビジネス誌で「地方発・海外進出に成功している中小企業」の特集が組まれたり、情報番組で「ユニークなメニューを目玉にした、行列の絶えない飲食店特集」が組まれたりすることがあります。そこにうまくアプローチし、メディアから評価されれば、中小企業であっても自社や商品が大きく取り上げられる可能性があります。
以上から、多額の広告費などをかけにくい中小企業にとって、パブリシティー活動は、知っておきたい情報発信の取り組みの1つといえます。以下で、もう少し詳しくパブリシティー活動について見ていきましょう。
2 パブリシティー活動の基本的な流れ
1)メディアに取り上げてもらいたい情報の整理
まず、メディアに取り上げてもらいたい情報を整理します。例えば、新商品の告知であれば、発売日・価格・販売場所などの商品に関する基本的な情報は必須です。また、新商品の発売に至った経緯・新商品の特徴・他社の類似商品との差異化点・新商品の対象とする顧客なども大切な情報です。特に他社の類似商品との差異化点を強調することで読者・視聴者のメリットが明確になるため、メディアに取り上げてもらいやすくなるかもしれません。
2)情報を取り上げてほしいメディアの選定
自社が情報を受け取ってほしいと考えている対象者を明確にし、そうした人をターゲットとしているメディアを見つけます。例えば、十代の女性向けの化粧品に関する情報をビジネス誌に掲載しても、ターゲットが異なるため効果が見込めません。こうした情報とメディアのミスマッチが生じないようにします。
まず、主なメディアには「テレビ」「ラジオ」「新聞」「雑誌」「インターネット」がありますが、情報を受け取ってほしい対象者がよく接するメディアは何かを考えて、選ぶようにしましょう。
メディアの種類を選定したら、次は具体的な媒体を決定します。雑誌に掲載するのであれば、「どの出版社の、どの雑誌に掲載するのか」を決定します。日本雑誌協会では、協会員である出版社の雑誌について、「総合月刊誌」「女性ヤング誌」などジャンルごとに発行部数のデータを公開しています。メディアを選定するに当たっては、こうしたデータを参考にするのもよいでしょう。
また、「共同通信PRワイヤー」「PR TIMES」などのプレスリリース配信サービスでは、複数の配信先(メディア)がパッケージングされており、プレスリリースの内容によって配信先を選ぶことができます。ポータルサイトやニュースサイトなどとも提携しているので、ネットニュースのコーナーの1つで取り上げられる可能性もあります。こうしたサービスを利用すれば、メディアの選定や配信先の連絡先を調べる手間も省くことができます。
3)プレスリリースに盛り込む内容
プレスリリースを作成する際、内容を工夫するのはもちろんのこと、体裁や読みやすさなどの見た目にも注意を払いましょう。プレスリリースを目立たせるための一例として、「タイトルを大きい文字にする」「文字フォントにメリハリを付ける」といった方法があります。「どの程度、文字を大きくするか?」といったことについては、既にインターネット上などで公開されている他社のプレスリリースを参考にするとよいでしょう。
また、初めてアプローチするメディアには、プレスリリースに加えて会社概要など、自社について理解を深めてもらうための資料も同封します。
では、プレスリリースに盛り込む具体的な内容を見ていきましょう。
1.タイトル
内容が一目で分かるキャッチフレーズをつくるのが理想的です。また、ネットニュースで取り上げられたり、SNS上で拡散されたりしやすいように、あえて“突っ込みどころ”をつくるのも効果的でしょう。この他、商品などに関連した顧客アンケートや調査データなどの「数字」があると、メディアで取り上げられやすいといわれています。インターネット調査などを実施している会社に依頼し、顧客アンケートなどを実施して、タイトルや本文にその結果を紹介してもよいでしょう。
- (例)「『孫の日』の贈り物に悩む祖父母は約50%! 今年はモノより思い出を」
2.要約
要約とは、プレスリリース全体をまとめたものです。「いつ、どこで、誰を対象に、何を、どうするか」などを記載します。
- (例)「一生の思い出に残る、ユニークな旅行をお届けする株式会社○○(自社名)では、孫の日(10月第3日曜日)に合わせて、祖父母・父母・孫の3世代が楽しめるパッケージ旅行を販売いたします」
3.特徴、商品開発の背景など
商品の特徴、商品を開発するに至った背景などを記載します。タイトルや要約を見て興味を持ったメディアが、記事を作成するためのヒントになるような事実を盛り込みましょう。書き方は、文章形式でも、箇条書き形式でも構いません。
- (例)「弊社が孫のいる祖父母300人に実施したアンケート調査によると、孫の日の贈り物に困っていると回答された方が46.7%に上ります。
弊社では『孫や家族に特別な贈り物をしたい』と考える祖父母の方に向けて、大自然や歴史的な建造物に囲まれて、家族がともに楽しい時間を過ごすことができるパッケージ旅行をご提案します。玩具や洋服などのモノではなく、一生忘れないすてきな思い出をプレゼントするお手伝いをさせていただきます」
4.問い合わせ先
メディアからの問い合わせを受け付ける窓口を記載します。自社の住所、電話番号、FAX番号、担当者名、担当者のメールアドレスなどを記載します。
4)プレスリリースの送付
作成したプレスリリースをメディアに送付します。メディアの代表番号に電話し、プレスリリースを送付したい旨を伝え、担当部署に取り次いでもらいましょう。この際、掲載を希望する番組や紙面などがあらかじめ決まっている場合には、直接その担当部署に電話を取り次いでもらうよう依頼します。
担当部署に電話を取り次いでもらったら、電話した意図(プレスリリースを送りたい旨、取り上げてほしい情報の概要など)を簡単に説明した上で、相手からの承諾が得られた場合、プレスリリースを送付します。
5)送付先へのフォロー
プレスリリースを送付したら、到着する時期を見計らって、メディアの担当者宛てに「プレスリリースをお送りしましたが、到着していますか」といったフォローの電話やメールをします。
メディア担当者が興味を示している場合は、「実物をお持ちして、直接説明させてください」「実際に店舗(会社、工場など)に取材に来ていただけないでしょうか」など、さらに詳しい情報を発信するチャンスをうかがいます。一方、まだ到着していない、あるいは到着したが目を通していないといった場合には、内容の確認をお願いします。
6)メディア担当者に説明をして、取材を受ける
メディアの担当者と直接会って説明をする、もしくは取材に来てもらうことになったら、事前に説明の流れを練っておきます。メディア担当者に直接説明する際、説明の要点が分かりにくかったり、説明がしどろもどろになってしまっては印象が悪くなります。
また、メディア担当者のスケジュールが急に変更になったときなどでも、変化に対応できるように、「メディア担当者があまり時間を取れない場合の説明」「メディア担当者が十分に時間を確保してくれた場合の説明」など、いくつか説明のパターンを考えておくとよいでしょう。
3 パブリシティー活動における留意点
1)必ずしもメディアに取り上げてもらえるわけではない
パブリシティー活動において、情報を取り上げるか否かを決めるのはメディアです。また、取材後に、社会の動きや事件などによってメディアの取り上げる内容が変わり、紙面や番組の構成が変更されることがあります。パブリシティー活動を実施したからといって、必ずしもメディアに取り上げられるわけではないことを理解しておきましょう。
2)メディアに取り上げられた後の対応を考えておく
パブリシティー活動が功を奏し、多くの問い合わせがきたとしましょう。このとき、担当者以外の従業員が情報について理解しておらず、きちんとした対応ができなければ、問い合わせてきた人に悪い印象を与えます。また、飲食店などの場合では、メディアに取り上げられたことにより来店客が増えた際に、顧客への対応がしっかりできなければ、クレームにつながり、逆に顧客を失うことにもなりかねません。こうした事態を防ぐためには、社内の情報共有や社員教育をきちんとしなければなりません。
また、メディアに取り上げられたら、その結果を他の情報発信の取り組みと連動させながら日々の営業活動に活用しましょう。例えば、「自社情報が新聞記事に取り上げられたことを紹介した、営業担当者の営業資料を作成する」「自社ウェブサイトやSNS、ダイレクトメールなどに、メディアに取り上げられたことを記載する」といった方法があります。
4 メディアに取り上げてもらうためのヒント
1)メディアに取り上げてもらうための工夫
自社の情報や商品をメディアに取り上げてもらうためには、さまざまな工夫が必要です。例えば、全国紙(全国版)やキー局のテレビ番組は競争率が高く、取り上げてもらうのが困難なため、業界専門誌や地方紙などに集中的に働き掛けるという方法を選択してもよいでしょう。また、「日本初」「業界初」などの、初めての取り組みであることは大きなアピールポイントになるようです。
この他、「社会情勢を意識した取り組み」「法や条例などに基づく認定制度の初適用」などもメディアに取り上げられやすいようです。
2)情報の受け手に具体的なメリットを併せて提示する
情報の受け手に対して、具体的なメリットを併せて提示することも、メディアに取り上げられやすくなる方法の1つです。
例えば、飲食店の新規開店の情報を取り上げてもらいたいのであれば、店舗の情報の他に「この記事を持参すると全品500円引き」という情報を加えたり、新商品の情報を取り上げてもらいたいのであれば、商品概要の他に「応募者20名様にプレゼント」という情報を加えるなどが挙げられます。
このように、情報の受け手に具体的なメリットを併せて提示することで、ただの新規開店や新商品の情報が逆にメディアにとっても価値のある情報になります。その結果として、メディアにも取り上げられる可能性が高まります。
以上(2019年10月)
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