もしも、あなたが喫茶店を開業する場合、資金はいくら必要だと思いますか? また開業してから経営を軌道に乗せるには、いくら売上が必要でしょうか?
この記事では、喫茶店を開業するときに必要な資金をシミュレーションとともに解説し、併せて資金調達の手段もまとめていきます。

1 初期投資で必要な額は約1000万円

1)前提条件

1.売上高
まずは客単価などの条件を次の通り設定し、「客単価×座席×回転×営業日数」で売上高を試算します(試算結果は図表1)。

  • 客単価:1600円(厚生労働省「喫茶店営業の実態と経営改善の方策(2016年3月)」における、客一人当たりの平均単価(1573.7円)を基に設定)
  • 席数:15席
  • 回転:休日の昼をピーク(1.0回転)と仮定し、平日・土日昼夜で図表1の通り設定
  • 営業日数:月26日(毎週火曜日を定休日とし、2023年6月の暦を基に設定)

喫茶店の売上予測の画像です

月間売上高は90万7200円、年間売上高は1088万6400円となります。よって、この記事では売上高を年間1089万円とします。

2.原価率
日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査(飲食店・宿泊業)」(2023年2月発表)に掲載の喫茶店(黒字かつ自己資本プラス企業平均)の売上高総利益率71.7%を参考に、原価率は年間売上高の28.3%とします。

3.人件費
上記、喫茶店(黒字かつ自己資本プラス企業平均)の人件費対売上高比率37.9%を参考に、人件費を年間413万円とします。

4.店舗設備整備費用
シミュレーションでは、東京都江東区清澄白河に、家賃20万円の物件を借りると仮定します。なお、借りるテナントはスケルトン物件(内装や設備が全くない状態の物件)です。また、工事費は300万円(1坪当たり30万円)、建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は150万円に設定しました。なお、この他に広告宣伝にかかる開業費用などが10万円発生すると仮定しています。

損益収支計画の前提条件の画像です

損益収支計画の画像です

主な財務指標の画像です

2 喫茶店開業に必要な資金の調達方法は?

1)日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を活用すると、喫茶店の開業時に資金調達できます。また、開業に必要な自己資金を総額の1/10程度まで収えられることも大きなメリットでしょう。
新創業融資制度の利用条件は、以下を確認してみてください。

・対象者の条件
新たに事業を始める方、または事業開始から2期分の税務申告を終えていない方

・自己資金の要件
新たに事業を始める方、または1期分の税務申告を終えていない方は、創業資金総額の1/10以上の自己資金を確認する
「同業種での経験がある方」「創業塾や創業セミナーを受けて事業を始める方」などは別途条件あり

・融資限度額
3,000万円(運転資金1,500万円)

・貸付利率
こちらをご確認ください

2)地方銀行や信用金庫の制度融資

地方銀行や信用金庫の制度融資を利用して資金調達する方法も考えられます。制度融資とは、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行なっている融資のことです。地方銀行や信用金庫が窓口になり、創業資金を貸し付けてくれます。
例えば「東京都中小企業制度融資」は、都内に住居がある方など、所定の条件を満たしている方が利用できる制度です。
信用保証料率(手数料のようなもの)は0.27〜1.72%と、比較的低利率で開業資金を用意できます。自治体や信用保証協会が連携しているため、創業者の負担を軽減できているといえるでしょう。

3)家族・知人からの資金援助

家族・知人からの資金援助も開業資金を用意する方法の1つです。同意があれば手続きの時間がかからないため、他の方法よりも手間をかけずに用意できます。
また、家族や知人からの借り入れであれば、金利がかからない点も大きなメリットです。実際に資金援助をお願いするときは、条件や返済期間を明確にしてから融資を受けましょう。
家族・知人から資金援助を受けるときは、トラブルにならないように条件を明確にすることが重要です。大きな金額を借りることになるため、計画的に返済しないとお互いの関係性にヒビが入ってしまいます。

4)クラウドファンディング

喫茶店の開業資金を、クラウドファンディングで募ることも手段の一つとして考えられます。クラウドファンディングとは、インターネットを介して不特定多数の方から融資を募ることです。
クラウドファンディングには「CAMPFIRE」「READYFOR」「MAKUAKE」などのサービスがあります。融資を募りたい方は、それぞれのメディアで自分の事業をアピールしてみてください。
クラウドファンディングで資金援助を成功させるには、自分の事業に対して共感してもらうことが重要になります。喫茶店のコンセプトや開業に至るまでの背景など、さまざまなストーリーを作り込まなければなりません。
また起案者から出資者に対するリターンを決める必要もあるでしょう。寄付型でない限り、オーナーは出資してくれた方に対して何かしらお返しをします。
例えば自店舗の利用券やオリジナルグッズの配布など、目に見える形でリターンをすることも大切です。リターンの内容によっては寄付額が変わる可能性もあるので、綿密に計画を立てましょう。

5)りそな銀行の資金援助システム

りそな銀行では、喫茶店の開業資金を援助するビジネスローンを用意しています。普段からりそな銀行を利用していたり、喫茶店の予定地近くに店舗があったりする方は、ビジネスローンを申込みするのも一つの手です。

ビジネスローン「活動力」

ビジネスローン「活動力」は、来店なし(原則)で1000万円までの資金を用意できる融資制度です。メール・電話・郵送で手続きを行えるため、開業までの忙しい時期でも申し込みやすくなっています。
例えば「思ったよりも初期費用がかさんでしまった」「他の融資制度の審査に落ちてしまった」というときに、同社のローンが役に立つでしょう。
気になる方は、本人確認書類を用意して仮審査を受けてみてください。
初めは税金面のメリットから、個人事業主として始める方がほとんどです。法人として喫茶店を運営するタイミングで資金不足に悩んだときは、りそなビジネスローン「活動力」の利用を検討してみてください。
りそなビジネスローン「活動力」は、仮審査終了後にりそな銀行の法人口座が必要です。口座を開設していない方は、こちらから手続きしてみてください。

3 喫茶店経営を成り立たせるために必要な3つのポイント

1)小さく始める

喫茶店を開業するときは、小さく始めましょう。なぜなら、万が一赤字になってしまったときも被害を最小限に抑えられるからです。
例えば、初めての喫茶店経営で数千万円の融資を受けたり、アルバイトを何人も雇ったりしてしまうと、固定費や変動費が大きくのしかかってしまいます。実際に売上が立つか予測できない状況で初めから高額な費用が発生してしまうと、リスクになりかねません。
従業員を雇わず小さな店舗で始めるなどスモールスタートを心がければ、万が一赤字になってしまったときも大怪我を負わずに済みます。経営者として、背負える範囲でリスクコントロールすることが大切です。

2)SNSを活用する

喫茶店を開業するときは、SNSを活用しましょう。無料の集客ツールとして活用できるため、広告宣伝費を抑えて売上増加を狙えます。
仮に集客ツールとしてチラシを活用した場合、料金は数万円から十万円程度かかってしまいます。しかしSNSを利用して集客すれば、初期費用を抑えながら集客が可能です。
また、広告を出したいときも、SNSの機能を活用すれば精度の高いターゲティングができます。例えば、Instagramでは年齢・性別・地域・興味などの項目を選択しながら詳細にターゲティングできるため、届けたい層へ的確に広告を届けられるでしょう。特に若い世代をターゲットにしている喫茶店を開業する方は、SNSを活用して集客してみてください。

3)資金調達前に物件を探す

喫茶店の開業で資金調達を検討している経営者は、優先的に物件を探しましょう。創業計画書など、資金調達で必要な資料を作成するときに物件の情報が必要だからです。
例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を活用するときは、創業計画書内に物件の家賃を記載しなければなりません。契約している必要はないものの、おおよその見当がついていないと資金調達までたどり着けないでしょう。
希望の物件が見つかったら、仮押さえの交渉をしてから資金調達の手続きを始めるのがおすすめです。自己資金が少なく融資が必要な経営者は、別件探しと資金調達の順序を間違えないようにしましょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年8月4日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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