書いてあること

  • 主な読者:テレワークで働く部下の人事考課のポイントを知りたい上司
  • 課題:働いている姿が見えにくく、「頑張っているから」といった基準では評価できない
  • 解決策:「できる/できない」を基準に人事考課を実施する。手厚い教育とセットにする

1 「できる/できない」を基準にするとは

今どきは、テレワークでも常にWeb会議ツールなどでつながることができ、オフィスにいるときとほぼ同じように仕事ができます。

というのは建前で、実際は目の前に相手がいない状況は特に細かいことを伝えたり、熱量を込めたコミュニケーションを取ったりするのに不向きです。特に、上司からすれば、目の前で部下が働いていないので、指導も評価もしにくいというのが本音でしょう。

ここで必要となるのが上司の意識転換です。テレワークの大前提は「上司や先輩が近くにいなくても自立して働けること」なので、

「頑張っている」など曖昧な基準を排除し、シンプルに「できる/できない」で評価する

ことに徹すると、人事考課も適切に実施することができます。「できる/できない」のイメージは、例えば次のようなものです。

  • 自分で考えて、仕事を「作れる/作れない(指示待ち)」
  • 実際にその仕事が「できる/できない」
  • 自分で時間管理が「できる/できない」
  • 自分からきめ細かいコミュニケーションが「取れる/取れない」
  • 自分の足りない部分を知り、自ら勉強が「できる/できない」

このように言うと、「人事考課が結果主義に偏らないか?」と心配する人もいるでしょうが、ここで言う「できる/できない」は、それとは少し違います。結果主義は「できた/できなかった」という、文字通りの結果だけを評価しますが、テレワークの人事考課では、

成果に結びつくような行動を「取れた/取れなかった」も評価の対象

に加えます。そして、これが本当に重要なポイントですが、

「できる/できない」は教育とセットで行う

ことが不可欠です。つまり、

  • 会社はできるように全力で社員教育をする
  • その教育を効率的に行うために仕事を見える化し、マニュアルを作る
  • そのマニュアルがテレワークのルールとなる

といった流れになります。

2 具体的なイメージとなる「学習の5段階レベル」

「できる/できない」をイメージする際に参考になるのが、NLPの「学習の5段階レベル」です。この考え方に基づくと、社員の「できる/できない」は次のようなレベルになります。

  • レベル5:人に教えることができるほど、その仕事に精通している
  • レベル4:深く考えなくても、その仕事ができる
  • レベル3:深く考えれば、その仕事ができる
  • レベル2:浅く知っているだけで、その仕事ができない
  • レベル1:その仕事ができず、できるようになろうともしない

オフィスワークの場合、部下の実力はレベル1や2でも、上司の指示やフォローで「げた」を履き、レベル3として評価されることがあります。また、その社員が遅くまで残業をしていると、「真面目に頑張っている(ようだ)」と、さらに高い評価がされることさえあります。

しかし、テレワークだと事情は変わってきます。もちろん、Web会議ツールなどでつながることはできますが、「部下が困っていそうなときに声をかける」「部下のパソコンを見て『そこ間違っているよ』と修正を図る」といった、こまめな指示やフォローはしにくくなります。つまり、レベル1や2の部下が、「げた」を履きレベル3などと評価される可能性は下がっていきます。こうした、本来のレベルに基づいて人事考課をするための基準が「できる/できない」です。

厳しい取り組みのように感じられますが、「できる/できない」の人事考課を行うことで、「組織全体の戦闘力」の向上が期待できます。レベル1や2のままでは評価が下がることを知った部下の一部は、できるようになる努力をするでしょう。また、これが大きいのですが、現時点でレベル3以上の部下は、自分の仕事に集中できるようになります。

3 仕事を見える化し、失敗を許容する

繰り返しになりますが、「できる/できない」の評価とは結果主義ではありません。例えば、部下に初めての仕事を与えたとします。部下は、どうすれば「できるのか」という勝ち筋が分かっていないので、多くは失敗するでしょう。しかし、勇気を持って新しいことにチャレンジしているのに、失敗したら評価が下がるというのでは、部下のモチベーションは上がりません。

そこで、最初は手間がかかりますが、

できるだけ仕事のプロセスを「見える化」

していきます。テレワークは自由なようで、実は細かなルールの積み重ねが重要です。そこで、仕事の手順についてもマニュアル化し、成功や失敗を共有します。どこが難所なのか、手順にムダ・ムラ・ムリはないのかということも分かってきます。

また、コミュニケーションの一環として、各社員の仕事の進捗を共有するオンラインを実施することで、そこでの発言によって社員の成長や課題感も把握できるようになります。

4 教育に力を注ぐ

「できる/できない」の人事考課は、一部の社員にとっては厳しいものとなります。そこで、前述したマニュアルで仕事の進め方を示すと同時に、教育を充実させ、社員ができるようになるための努力を後押しするべきです。

ここに社員の気持ちが乗れば、従来のようなノルマ消化的なセミナーとは全く違う次元で、社員は本気で学ぶようになるでしょう。これも「できる/できない」の人事考課で期待できる一つのメリットであり、会社としても一定の予算を確保すべきところです。

以上(2024年9月更新)

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画像:pixabay

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