トップアスリートのメンタルパフォーマンスコーチに聞く経営者の心の準備

1 心はトレーニングで強くなる?

「心は強くなりません」

と荒木先生は、インタビューの冒頭でハッキリと明らかにしてくれました。

「メンタルをトレーニングするというのは、何かをすればうまくいくとか、腹が立たなくなるとか、成功や勝利の方方程式があるとか、心が強くなるとか、そういうことではありません。そもそも心は強くなりません。

メンタルのトレーニングは、高いパフォーマンスを発揮し続けられるように準備をし、調整をしていくということなんです」

荒木先生は最初にこう言って、「メンタルをトレーニングする」という言葉から誤解されがちな点を解いてくれました。この「心は強くはならない。準備と調整をするのだ」をしっかり認識すると、それだけで、新たな視点を持てる気がします。

荒木香織先生は、2015年のラグビーW杯で日本代表が南アフリカを相手に歴史的な勝利をおさめたとき、メンタルコーチとしてラグビー日本代表チームを支えたスポーツ心理学の第一人者です。現在は株式会社CORAZONのチーフコンサルタントとして、ラグビー、アイスホッケー、陸上競技といったアスリートチームのほか、ビジネスリーダーやアーティストなど、最高のパフォーマンスを求める人々を科学的な知見からコンサルテーションされています。

心は強くならない。では、経営者はどのように日々の経営と向き合い、どうやって高いパフォーマンス、判断を実践していけばいいのか。荒木先生にバシバシ教えていただきました。以降、経営者には耳の痛い話もあるかもしれませんが、おそらく今日から

時間と気持ちの使い方が変わる

と思います。

荒木先生のプロフィール詳細は、本記事の最後に掲載しています。スポーツ科学、特にスポーツ心理学を専門に学び博士・修士課程を修了し、学術的・科学的な研究に基づいてメンタルパフォーマンストレーニングを実践されています。

2 すべての始まりは、自分自身を「知る」こと

アスリートは勝ち負けの世界で結果を出していかなければなりません。そこで、メンタルパフォーマンストレーニングにも精度の高さが求められます。こうしたトレーニングは、日々、良いパフォーマンス、良い判断を求められる経営者にも、効果的な面があると荒木先生は言います。

では、経営者は、具体的に何から始めればいいか。実は、第一歩は極めて内省的な「自分への理解」にありました。

「トレーニングは、自分自身を『知る』ことからしか始まらないんです」

と荒木先生。例えば、

  • 自分は何が好きで何が嫌いか?
  • なぜその出来事、あの部下の一言に腹が立つのか?
  • どんな人と一緒に働くのが好きなのか? または嫌なのか?
  • どこに行くと楽しくなり、何を飲むとホッとするのか?

など。このように自分のことを徹底的に理解することがまず大事なのだそうです。自分を知ることは、後に紹介する「自分がパフォーマンスを発揮できる準備をしていく(常に)、良い習慣を身に付ける」にもつながっていくのだと思います。

「自分自身を知るというスキルを持つことができている人は、何かあったとき自分に原因を求める。他(相手)のせいにするのではなく」と荒木先生。「なぜ何回言っても分からんのか」で終わるのではなく、「(自分が)違う方法で伝えたら伝わるのかもしれない。どう伝えたら伝わるだろう」となります。

また、自分自身を知るスキルがあると、自分の部下や周りの人への理解も進みます。そして、これに関連して日本人が陥りやすい「自分への厳しさ」にも、荒木先生は警鐘を鳴らします。

「日本人は他人に優しく、自分に厳しくという教育のせいか、自分のことを理解しようとしていない。他人のこと優先。自分に厳しくしすぎて、心が折れて戻ってこれなくなる人もいます。自分に優しくするにはどうすればいいのか、自分はどこで傷つくのか。誰と一緒に仕事をしたらうまくいくのか、いかないのか。そうした特徴を知ることは、自分の力を最大限に発揮する、自分自身を活かすための前向きな戦略です。経営者は、まず自分を知ることから始める必要があります」

3 組織を知る。そして指導スキルを磨く

経営者が知ったほうがいいのは自分自身。そして、荒木先生は

「『自分の組織を知る』ことも大事です」

と言います。

例えば、会議や会食に行く回数を減らしてでも、朝、早起きして仕事前に社員とちょっと会話する時間をつくる。1on1など改まったミーティングではなくてもいいので、コーヒーブレイク、数分立ち話、雑談。そうして、社員のことを知る努力、時間が経営者には必要です。経営者や上司が積極的に雑談していれば「雑談できる雰囲気」が組織に醸成されるので、そういう効果もあるでしょう。月に一度などたまに、社員皆と一緒にカードゲームをして楽しむと、社員の人となりやそれぞれの好き嫌いが分かったりするのでオススメです。

トップアスリートのチームでも、出身国も年齢も考え方も違う人たちが集まっています。言葉を選ばずに言うと、最初は「寄せ集め状態」です。そのため、練習前、練習後などにちょっとでも会話する、お互いを知るということがとても大切になってくるといいます。

また、中小企業では人材不足、ミスマッチで離職増加などの悩みもあります。「若手がすぐ辞める」「社員にやる気がない」など。ここでも、荒木先生の指摘は鋭く刺さります。「すぐに辞める若手など社員のせいにしがちですが、そもそも自社にフィットしない人を採用してしまってはいないでしょうか。面接官が自社のビジョン、目的をしっかり理解できていないのであれば、そこも問題です」

そして荒木先生は、こう続けます。

「(仮にミスマッチがあったとしても)採用したからには育てる責任があります。そうなると今度は経営側、上司側が、育てるスキルを持っているか、信頼関係を築くスキルを磨いているか」

厳しい言葉かもしれませんが、これは組織運営の本質を突いています。

「例えば、監督やコーチは、アスリートに対して『できないんだったら残って練習しろ』と言います。では、その監督やコーチは『指導する方法を 練習しているのでしょうか』ということです。

組織に不満がある経営者も上司も、組織を良くするために何をしていますか? 組織を良くする、指導するスキルをどこでどう練習していますか? しかも繰り返し、継続していますか? ということだと思います」

会社ごとの組織形態にもよりますが、人事部や人材教育の部門が教えるスキルを磨くというのも大事なことかもしれません。

また、荒木先生は組織における「指導の勘違い」を正すための具体的な例も挙げてくれました。実際の職場でよくあるのではないでしょうか。

「例えば成果を上げられない営業担当者がいた場合、その営業担当者の話をよく聞くと、『自分が売る商品自体に価値を感じられない』と思っていることがあります。

それなのに経営者や上司が『もっとやる気を出して売ってこい』と言うのは、課題の見落としです。

原因がやる気ではなく『商品への理解』なら商品をちゃんと理解するよう指導しなければならないし、商品自体に課題があるのなら、解決策は商品の改良です。こう改良したのだから、さあ売ってきてくれ、と。期待していることと現状とを理解し、課題がどこにあるのかを、対話を通じて見極めなければなりません」

4 “げんかつぎ”とはまったく違う「ルーティーン」

荒木先生は、ラグビー元日本代表の五郎丸歩氏のキック前に行う「プレ・パフォーマンス・ルーティーン」をともに作り上げた方でもあります。

大切な決断の前に「験を担ぐ(げんをかつぐ)」という経営者の方もいるでしょう。どちらが良い悪いではないですが、験を担ぐことと、この「ルーティーン」は明確に違うと荒木先生は教えてくれました。

ルーティーンは、パフォーマンスの向上を目的としています。そのパフォーマンスのために必ず必要とされる内容を理論ベースでリストアップして、実際のルーティーンに反映して、準備をすることです。一方、験担ぎ(げんかつぎ)は単なる神頼みです。右足から靴下を履くことで契約できるかは、理論的に説明がつきません。

繰り返しになりますが、ルーティーンは、「パフォーマンス(目的)につながる行動を遂行していくこと」です。「プレ・パフォーマンス・ルーティーン」は、神頼みではなく、

自分自身を成功につなげるための仕組み

です。経営者が知っておいたほうがいいのは、ルーティーンの3つの種類です。

1.事前のルーティーン

行動の前にやること。例えば戦略や戦術を確認するミーティングを行う、など

2.途中のルーティーン

進行中に、修正や確認を行うこと。例えば、このタイミングで顔合わせしましょう、など

3.事後のルーティーン

終わった後に、レビューを行うこと。「何がうまくいったのか」「もっとよくするにはどうすればいいか」を具体的に言語化する、など

これらはすべて、自分自身で成功の確率を上げるための仕組みです。

「つまり、もし成果が出ないなら、手順を見直して微調整していく。ルーティーンが マッチしていれば成果につながります。ルーティーンがマッチしていないのであれば、成果が出るように調整して変えていかなければなりません」

と荒木先生。この準備から調整のサイクルこそが、トップアスリートも実践しているルーティーンの正体です。例えば、このルーティーンを実行後にキックを蹴り、それでゴールが入らないのであればルーティーンを調整していく=角度の確認の仕方を変えていく等、ということです。

営業活動で考えると分かりやすいかもしれません。プレゼンの前には必ず何を確認するか、どうやって確認するか。途中でどのような行動で相手の反応を確認して調節するか。プレゼン後はどのようにレビューして次のプレゼンに活かすか。この一連のルーティーンを行って、成約の確率を高めていくのです。例えば自分自身でルーティーンを作ってみるのも一策でしょう。

5 メンタルはコントロールするものでもない

経営者の中には、「自分でメンタルをコントロールして強い気持ちで自分に負けないように」と思っている方もいるかもしれません。荒木先生はこれに関しても「メンタルはコントロールするものではない」とハッキリ言います。

「メンタルはコントロールするものではありません。むしろコントロールしようとしないでください。コントロールするというのは、他人の評価を気にしたり、その瞬間だけ無理やり自分を変えようとしたりすること。それでは効果は期待できません。そうではなく、自分自身をうまく循環させる『良い習慣』を身につけていく。これが大事です」

自分の今の状態を把握して、不調になりそうなら先回りして手を打つ。こうした日常的なセルフ・レギュレーション(自己調整)をして良い習慣を身に付け、積み重ねていくことが、パフォーマンスを発揮し続けるプロセスです。セルフ・レギュレーションの例を、荒木先生は次のように挙げてくれました。

  • 仕事の状況で今週は疲れそうだと思ったら早めに寝る
  • 金曜日にはストレスが溜まっていそうなスケジュールだから土曜日には友人と食事の約束をしておく。趣味の時間を予定しておく

こうしたセルフ・レギュレーションを実践してパフォーマンスを発揮し続けていくためにも、先に紹介した

自分自身を知る

がとても大事になってくることが分かります。

とはいえ、繁忙期やトラブルなどがあるのがビジネスの常ですが、それらも織り込み済みで準備しておけば、「来た来た。この後はこうすればいいんだしな」と、不要に右往左往せず、ある程度は受け止められるかもしれません。そして、その結果を受けて「次はもう少しこういう準備をしておけばいいのだな」と次回に活かすことも考えられます。

「心は強くなりません」とハッキリ言い、その上で荒木先生はこう教えてくれました。「心を鋼のように硬くしようとするのではなく、自分を知った上でパフォーマンスを発揮するための準備をし、そして結果を受けて成功を確実に手に入れることができるように調整する。それを繰り返していくことです」。日々、地道に準備と調整。これが経営者に必要なメンタルトレーニングの形なのかもしれません。

以上(2026年1月作成)

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画像:日本情報マート

■荒木香織先生 プロフィール■

株式会社CORAZON
https://corazonmental.com/

株式会社CORAZON チーフコンサルタント, 順天堂大学スポーツ健康科学部 客員教授

米国にて修士課程、博士課程を修了 (Ph.D. スポーツ科学:スポーツ心理学専攻)。これまで、アメリカ、シンガポール、日本の大学・大学院において専任教員として約24年間教鞭をとる。現在は、教育・研究活動に加え、最新の科学的知見を基盤に、ラグビー15人制男子日本代表メンタルコーチをはじめ、スポーツチーム、アスリート、指導者、アーティスト及び企業へメンタルパフォーマンストレーニングのプログラムを提供。オンラインサロンMiCORAZÓN(ミコラソン)を主宰。

●最終学歴:

博士(Ph.D.) 米国ノースカロライナ大学大学院グリーンズボロ校
運動スポーツ科学 (スポーツ運動心理学専攻)

●主な経歴:

  • ラグビー15人制男子日本代表メンタルコーチ(2024−現在, 2012−2015年)
  • リーグワンチーム・SVリーグチーム
  • 社会人陸上競技部(長距離種目)・大学陸上競技部(長距離種目)
  • アジアリーグアイスホッケーチーム
  • 東証プライム市場上場企業

他、スポーツチーム・選手・指導者、アーティスト、企業等多数

●代表著書:

リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力 講談社
ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 講談社+α新書

■オンラインサロンMiCORAZÓN ■

オンラインサロンMiCORAZÓN
https://micorazon.jp/

【有利な契約】自社が不利にならない「契約期間」の定め方

1 契約期間を長く(短く)したほうがよい場合

契約書を確認する際、金額や知的財産の帰属もそうですが、契約期間についてもしっかり確認しなければなりません。なぜなら、契約期間が適切でないと、

  • 契約期間が短く、想定よりも自社の権利から得られる収益が小さくなった
  • 契約期間が長く、必要以上に契約上の義務を負うことになった

などの問題が起こるからです。契約期間は、契約相手との力関係、契約内容、契約依存度などによって異なりますが、基本的な考え方は次の通りです。

(図表)【契約期間の基本的な考え方】

主な契約内容 契約が自社ビジネスに与える影響 望ましい契約期間
自社への権利付与 大きい 長いほうがよい
自社への権利付与 小さい 契約によって付与されている権利の内容・程度を勘案して決定
自社の義務負担 大きい 一般的に短いほうがよい
自社の義務負担 小さい 契約によって負担する義務の内容・程度を勘案して決定

(出所:日本情報マート作成)

契約内容が自社に権利を付与する面が大きく、契約依存度が高い(契約が自社ビジネスに与える影響が大きい)場合、契約期間は長いほうがよいでしょう。逆に、契約内容が自社に義務を負わせる面が大きく、契約依存度が低い(契約が自社ビジネスに与える影響が小さい)場合、契約期間は短いほうがよいといえます。

この記事では、自社の不利にならない契約期間の考え方、定め方を紹介します。また、秘密保持契約、取引基本契約、ライセンス契約の契約期間を決める際の注意点も説明します。

2 契約書における契約期間の3つの定め方

1)契約期間(有効期間) に関する定め

契約期間(有効期間)は、

本契約書の有効期間は○年○月○日から△年△月△日までとする

などと定められます。物品やサービスを販売・提供するだけで即時に完結する、いわゆる「一回的契約」などを除き、契約期間を定めたほうがよいでしょう。「本契約書の有効期間は本契約締結日から○年間とする」といったように、契約期間だけを定めるケースもありますが、「初日不算入の原則」(民法第140条) や期間満了日が休日である場合、翌営業日を期間満了日とするなどのルールや慣習がトラブルにつながる恐れがあります。そのため、明確に始期と終期を特定しておきましょう。

2)契約更新に関する定め

契約更新は、

契約当事者から書面による解約の申し出がないときは、本契約書と同一条件でさらに○年間延長し、以後も同様とする

などの定めで、これは契約期間を長くしたい場合の定め方です。一方、契約を短くしたい場合は、更新拒絶ができる条項にします。具体的には、

本契約は契約満了により終了するものとする。ただし、甲乙が同一条件での更新に合意した場合はさらに1年間延長する

といった具合です。

契約更新は双方の利害が一致しにくい部分なので、慎重に検討しましょう。なお、契約更新に関する定めは、契約期間(有効期間)に関する定めと同じ条項に記載されることが多いです。

3)中途解約に関する定め

中途解約は、

契約当事者は、相手方当事者に対して○カ月以上の予告期間を置いて書面で通知することにより、本契約を中途解約することができる

などの定めです。これは契約期間を長くしたい場合の定め方ですが、さらに強化する場合は、

中途解約に違約金を設けたり、中途解約の定めを置かなかったりする

ことが考えられます。一方、短くしたい場合は、できるだけ制限なく中途解約ができるようにすることがポイントで、

中途解約の通知をすれば、通知をした月の末日に契約を終了できる

といったように定めます。

なお、中途解約に関する定めがなくても、相手方に債務不履行があれば契約は解除できます。逆に言うと、債務不履行ではない理由で解約することは難しいです。契約期間中、契約に拘束されることがリスクになるかどうかを考えた上で、中途解約について検討しましょう。

3 契約期間はどれくらいが適切なのか?

1)秘密保持契約

秘密保持契約は、主たる契約の前段階や、付随する契約として締結することが多いです。秘密保持契約の契約期間は、主たる契約を実現するのに必要な範囲で設定するのが基本です。つまり、主たる契約が長期にわたる場合は秘密保持契約も長期となります。通常は、秘密保持契約は主たる契約が終了した後も「一定期間」は有効です。この一定期間についてですが、

秘密保持契約で開示される情報の重要性によって異なりますが、一般的には2~3年

が適切でしょう。

2)取引基本契約

ビジネスでは、取引基本契約を締結して取引の大枠を決めた上で、発注書や請求書と請書などのやり取りによって個別契約を成立させる方法で取引を進めることがよくあります。その際、個別契約の終了期間が明確ならば、取引基本契約の契約期間は「契約締結日から○年間」と定めても問題ないといえます。

しかし、個別契約の終了期間が不明確な場合、

取引基本契約は終了しているのに、個別契約は継続しているといったおかしなことになり、その結果、取引基本契約で定めたことが個別契約に適用されない

といった事態に陥りかねません。

そのため、前述した「契約期間 (有効期間)に関する定め」と矛盾しますが、取引基本契約の契約期間をあえて明確にせず、

全ての個別契約が終了してから○カ月後

といったように定めることも検討しましょう。

3)ライセンス契約

通常、ライセンス契約は長期にわたることが多いため、

契約期間を長く設定する、もしくは契約更新 (自動更新) の定めを置いて、知らない間にライセンスが失効してしまう事態を防ぐ

ことが大切です。

また、ライセンスを受けて物品を製作・販売している場合、ライセンス期間が終了した時点 (契約終了時点)で物品を完売できずに、在庫が残っていることがあります。こうしたケースに備えて、

契約終了後も当該物品の販売を可能にする、あるいは適正価格で買い取ってもらう

などの条項を定めておくことが重要です。

以上(2026年1月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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画像:picjumbo

ヒント7[仕事3]:上司は“仕事のやりがいは一人ひとり違う”と知るべき/武田斉紀の『人が辞めない会社、10のヒント』(8)

1 同じように部下を褒めても、人によって反応が違うのはなぜ

今シリーズの狙いは、経営者、人事担当者、現場の皆さんのお悩みである「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題を解決することです。「人が辞めない会社、10のヒント」と題して、毎回1つずつご紹介していきます。

「人が辞めない会社」に変わるための課題、その原因と解決策は会社によってさまざまです。

今回ご提示するヒントが皆さんの抱える原因に明らかに当てはまらない場合は、読み飛ばしてくださって結構です。ですが、ヒントの1~9までが該当しなくても、10が当てはまるかもしれません。

全社共通の原因もあれば、部署ごとの固有の原因も存在することでしょう。原因が1つだけというケースは少ないので、何回分か読んでいただければ「これはうちにも当てはまるな」というものを見つけていただけるのではと思います。

「人が辞めない会社」に変わるために、前回の第7回では、社員が入社して仕事や環境に慣れて落ち着いてきた頃からは、“仕事のやりがい”を感じられるかどうかが大きいという話をしました。

「自分の仕事が何かの役に立っている」という“仕事の意義=やりがい”の実感があれば、人は簡単には辞めません。特に仕事に前向きな社員にこそ必須です。

もし、部下が普段担当している仕事で実感が得にくいようなら、上司が小さくてもいいので成功体験を得られる機会を用意してあげてください。顧客や社会、関係部署から得にくいようであれば、上司や職場の仲間からの褒める言葉や励ましでもいいのです。

日々の仕事を通して“仕事の意義=やりがい”の実感があれば、人はたとえ嫌なことがあっても退職を踏みとどまる可能性が高いと思います。

さて、今回の第8回は「入社後のヒント」についての3回目。前回の“仕事の意義=やりがい”についてさらに踏み込みます。部下が“仕事の意義=やりがい”をどれくらい実感するかは、一人ひとりのモチベーションタイプ(MT)によるという話です。

上司は、部下一人ひとりのメインとなるMTおよび優先順位の高いMTを知り、声のかけ方を変えることで、『人が辞めない会社』に変われるのです。

2 6つのモチベーションタイプ(MT)の中で、あなたのメインはどれですか?

弊社では個人が「何に対して“仕事の意義=やりがい”を感じるか」を、6つのモチベーションタイプ(MT)に分類し定義しています。

私がリクルート社に在籍していたときに学んだ理論に、現在の会社で長年コンサルティングを行う中で修正を加えたものです。

まずは6つのモチベーションタイプ(MT)をご紹介していきましょう。この中であなたが最も大切にしたいMTはどれですか?

■①組織タイプ・・・所属する「会社の社会的評価」や「組織からの評価」を重視

◯その会社に所属していること、社会的ステータス

◯地位・出世(それによる裁量権・報酬)

◯企業内での役割・責任

◯企業の目的・目標への貢献感

■②職場タイプ・・・会社全体ではなく「所属する職場の上司やメンバーからの評価」や「職場の仲間との協働・競争や目標達成の喜び」を重視

◯所属部署や上司の評価

◯仲間の評価

◯仲間との協働の喜び・人間同士の交流

◯協働による目標達成の喜び・仲間との競争

■③顧客タイプ・・・「自分の仕事の結果が及ぶ相手(顧客・取引先・社内の次工程など)への影響や評価」を重視

◯顧客(お客様)のために

◯顧客(取引先)のために

◯顧客(社内の次工程)のために

■④仕事タイプ・・・仕事を通しての「自身の発見・工夫などの成果」や「自身の成長の実感」、「そのための職場環境など」を重視

◯仕事そのものが自己目的

◯プロセスの喜び(発見・工夫・自己表現・裁量・手ごたえ・成長感)

◯結果の喜び(達成感・手ごたえ・出来ばえ・足跡)

◯副次的な報酬(知識・技術・人脈)

◯職場施設(職場環境・設備・器具など)

■⑤社会タイプ・・・「自分の仕事の結果が地域や社会に及ぼす影響・成果・評価」を重視

◯地域のために

◯社会のために

◯地球環境のために

■⑥生活タイプ・・・仕事を通して「自身および家族の生活レベルの向上や充実」「家族からの期待・応援」を重視

◯生活レベルの向上(待遇アップ・休日等の充実)

◯家族の期待・応援

いかがでしょう。6つの中であなたが最も大切にしたいMTは絞られたでしょうか。2番目、3番目はどれでしょうか。

こう質問すると、カッコつけたがるのか真っ先に④の仕事タイプを最優先に選ぶ人が少なくありません。ですが、ここは自分に正直にいきましょう。

判断基準としては、1番目に選んだものが満たされれば、2番目以下に選んだものの評価が仮に“なかった”としても自分は我慢できそうかを想像してみてください。

例えば、仕事を通して「自身の成長(④仕事タイプ)」が感じられれば、「上司や仲間の評価(②職場タイプ)」や「会社からの評価、人事評価や昇進昇格(①組織タイプ)」がなかったとしても耐えられますか?

イエスならあなたのメインのMTは④仕事タイプだと思います。ノーであるなら、メインは他のMTであるか、あるいはメインは④ながらも次に近い優先順位で②や①が存在する可能性が高いでしょう。

まず働く上で「メインとなる最優先MT」が人によってそれぞれ異なります。

3 6つのMTを、多くの人は大なり小なりみんな持っている

もう1つ既にお気づきかと思いますが、④仕事MTがメインの人であっても、①組織や②職場や③顧客から褒められればうれしいということ。他にも⑤地域や社会に貢献できたと思えばやはりうれしいでしょう。結果、社内で評価されて待遇が向上し⑥自身や家族の生活がさらに充実し、家族が褒めてくれたら言うことはないでしょう。

すなわち6つのMTを、多くの人は大なり小なりみんな持っているということです(中には「6つの中のいくつかには全く魅力を感じない」という人も存在するでしょうが)。

であるなら、

上司としては、部下一人ひとりのメインや優先順位の高いMTを把握して、それらにフォーカスして声をかけてあげられれば、本人にとって“仕事の意義=やりがい”がより実感しやすくなるのではないでしょうか。

まとめると、大事なポイントは、1)6つのMTはいずれも多くの人が大なり小なりもっている。2)但し、そのメインと優先順位、バランスは人によって異なるということです。

4 部下のメインのMT、優先順位の高いMTを把握して、声のかけ方を変えてみる

では、みなさんの部下のメインのMTが次であるとき、どのように声をかければ本人がより“仕事の意義=やりがい”を実感できるでしょうか。かけるべき効果的な(心に刺さりそうな)“一言”を考えてみてください。

「A.頑張りをたたえるとき」

■組織タイプ→

■職場タイプ→

■顧客タイプ→

■仕事タイプ→

■社会タイプ→

■生活タイプ→

では、「A.頑張りをたたえるとき」により効果的と思われる“一言”の例を紹介しましょう。

組織タイプ→「○○さんの今回の仕事は、会社に貢献しましたね」

職場タイプ→「○○さんの今回の仕事を、仲間がみんな喜んでいますよ」

顧客タイプ→「○○さんの今回の仕事、お客様が喜んでくれますね」

仕事タイプ→「○○さん、仕事の腕を上げましたね」

社会タイプ→「○○さん、社会に貢献できましたね」

生活タイプ→「○○さん、きっとご家族も誇りに思ってくれますよ」

「B.励ますとき」

■組織タイプ→

■職場タイプ→

■顧客タイプ→

■仕事タイプ→

■社会タイプ→

■生活タイプ→

では、「B.励ますとき」により効果的と思われる“一言”の例を紹介しましょう。

組織タイプ→「○○さんは会社から活躍を期待されていますよ」

職場タイプ→「○○さんのこと、職場のみんなが心配していますよ」

顧客タイプ→「お客様は○○さんに期待していますよ」

仕事タイプ→「○○さんはもっと成長できる人だと思います」

社会タイプ→「社会は○○さんの仕事を必要としていますよ」

生活タイプ→「○○さんを、ご家族もきっと応援してくれていますよ」

いかがでしょう。

上司が部下の、あるいは先輩が後輩の一人ひとりのメインや優先順位の高いMTを把握して声をかけてあげられれば、より活力のある職場が実現し、人は簡単に辞めなくなるはずです。

5 上司が部下一人ひとりのMTを見極めるには

個人のMTのメインとなるものや優先順位、バランスが異なるとして、それをどんな方法で把握しておけばいいでしょうか。

自分自身についていえば、先ほど「2」の中で紹介した「1番に選んだものが満たされれば、2番目以下に選んだものの評価が仮に“なかった”としても自分は我慢できそうか」で判断してみる方法があります。

より正確に知りたい場合は、自身が経験してきたエピソードとその時の気持ちを振り返ることで特定することが可能です。が、そのノウハウは少し長くなりますのでまたの機会としましょう。

一方、自身ではなく、上司が部下一人ひとりのMTを把握しようとするとなると、他人である以上簡単ではなさそうです。

そこでお薦めしたいのは、常日頃から部下への声かけを実践しながら反応を見て、確認していくという方法です。

普段のやりとりの中から、AさんのメインMTは組織タイプだな、Bさんは職場タイプだな、Cさんは仕事タイプだなと仮定してみましょう。そこで先ほど紹介した「A.頑張りをたたえるとき」や「B.励ますとき」の言葉をかけてみます。

相手がビビッドに反応して目を輝かせてくれたら、恐らくメインMTは正解でしょう。もしそうでもなかった場合は、次は異なる仮定を置いて声をかけ直してみましょう。

自分からの声かけに限らず、他の人から褒められたときの反応も観察してみましょう。他にも例えば「いつも家族の話をしている(生活タイプ)」「もっと成長したいが口癖(仕事タイプ)」といった日常のコミュニケーションも参考になるはずです。

部下は一人ひとり同じ人間ではない、一人ひとりMTのメインや優先順位は違うのだという意識を持つだけで、さまざまな場面での声のかけ方に工夫をするようになるでしょう。

相手のモチベーションタイプ(MT)を把握できれば、上司も部下もお互いが気持ち良く日々働けるようになるはずです。自ずと退職防止にもつながることでしょう。

第8回を最後までお読みいただきありがとうございました。次回も[仕事]についてのヒントをご紹介します。

毎回ご紹介するヒントを参考にしながら、自社を退職する一人ひとりの「辞める理由」と、働いている一人ひとりの「辞めない理由」を丁寧に拾ってみましょう。見えてきた自社ならではの“課題”を解消し“強み”を活かせれば、『人が辞めない会社』へと変われるはずです。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mailto:brightinfo@brightside.co.jp
https://www.brightside.co.jp/

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』
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『なぜ社長の話はわかりにくいのか』
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以上(2026年2月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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画像:VectorMine-Adobe Stock

テレワークでも「成果×行動」でブレない人事評価を!

1 「できる/できない」を基準にするとは

今どきは、テレワークでも常にWeb会議ツールなどでつながることができ、オフィスにいるときとほぼ同じように仕事ができる・・・・・・というのは建前です。

実際は、目の前に相手がいない状況は特に細かいことを伝えたり、熱量を込めたコミュニケーションを取ったりするのが難しいもの。特に上司の立場からすれば、目の前で部下が働いていないので、指導も評価もしにくいというのが本音でしょう。

ここで必要となるのが上司の意識転換です。テレワークの大前提は「上司や先輩が近くにいなくても自立して働けること」なので、

「頑張っている」など曖昧な基準を排除し、シンプルに「できる/できない」で評価する

ことに徹すると、人事考課も適切に実施することができます。「できる/できない」のイメージは、例えば次のようなものです。

  • 自分で考えて、仕事を「作れる/作れない (指示待ち)」
  • 実際にその仕事が「できる/できない」
  • 自分で時間管理が「できる/できない」
  • 自分からきめ細かいコミュニケーションが「取れる/取れない」
  • 自分の足りない部分を知り、自ら勉強が「できる/できない」

このように言うと、「人事考課が結果主義に偏らないか?」と心配する人もいるでしょうが、ここで言う「できる/できない」は、それとは少し違います。結果主義は「できた/できなかった」という、文字通りの結果だけを評価しますが、テレワークの人事考課では、

成果に結びつくような行動を「取れた/取れなかった」も評価の対象

に加えます。そして、これが本当に重要なポイントですが、

「できる/できない」は教育とセットで行う

ことが不可欠です。つまり、

  • 会社はできるように全力で社員教育をする
  • その教育を効率的に行うために仕事を見える化し、マニュアルを作る
  • そのマニュアルがテレワークのルールとなる

という流れになります。

2 具体的なイメージとなる「学習の5段階レベル」

「できる/できない」をイメージする際に参考になるのが、NLPの「学習の5段階レベル」です。この考え方に基づくと、社員の「できる/できない」は次のようなレベルになります。

  • レベル5: 人に教えることができるほど、その仕事に精通している
  • レベル4:深く考えなくても、その仕事ができる
  • レベル3:深く考えれば、その仕事ができる
  • レベル2:浅く知っているだけで、その仕事ができない
  • レベル1: その仕事ができず、できるようになろうともしない

オフィスワークの場合、部下の実力はレベル1や2でも、上司の指示やフォローで「げた」を履き、レベル3として評価されることがあります。また、その社員が遅くまで残業をしていると、「真面目に頑張っている(ようだ)」と、さらに高い評価がされることさえあります。

しかし、テレワークだと事情は変わってきます。もちろん、Web会議ツールなどでつながることはできますが、「部下が困っていそうなときに声をかける」 「部下のパソコンを見て『そこ間違っているよ』と修正を図る」といった、こまめな指示やフォローはしにくくなります。つまり、レベル1や2の部下が、「げた」を履きレベル3などと評価される可能性は下がっていきます。こうした、本来のレベルに基づいて人事考課をするための基準が「できる/できない」です。

厳しい取り組みのように感じられますが、「できる/できない」の人事考課を行うことで、「組織全体の戦闘力」の向上が期待できます。レベル1や2のままでは評価が下がることを知った部下の一部は、できるようになる努力をするでしょう。また、これが大きいのですが、現時点でレベル3以上の部下は、自分の仕事に集中できるようになります。

3 仕事を見える化し、失敗を許容する

繰り返しになりますが、「できる/できない」の評価とは結果主義ではありません。例えば、部下に初めての仕事を与えたとします。部下は、どうすれば「できるのか」という勝ち筋が分かっていないので、多くは失敗するでしょう。しかし、勇気を持って新しいことにチャレンジしているのに、失敗したら評価が下がるというのでは、部下のモチベーションは上がりません。

そこで、最初は手間がかかりますが、

できるだけ仕事のプロセスを「見える化」

していきます。テレワークは自由なようで、実は細かなルールの積み重ねが重要です。そこで、仕事の手順についてもマニュアル化し、成功や失敗を共有します。どこが難所なのか、手順にムダ・ムラ・ムリはないのかということも分かってきます。また、コミュニケーションの一環として、各社員の仕事の進捗を共有するオンラインミーティングを実施することで、そこでの発言によって社員の成長や課題感も把握できるようになります。

4 教育に力を注ぐ

「できる/できない」の人事考課は、一部の社員にとっては厳しいものとなります。そこで、前述したマニュアルで仕事の進め方を示すと同時に、教育を充実させ、社員ができるようになるための努力を後押しするべきです。ここに社員の気持ちが乗れば、従来のようなノルマ消化的なセミナーとは全く違う次元で、社員は本気で学ぶようになるでしょう。これも「できる/できない」の人事考課で期待できる一つのメリットであり、会社としても一定の予算を確保すべきところです。

5 ハイブリッド勤務者への評価配慮

コロナ収束後は出社とリモートを組み合わせたハイブリッド勤務が定着しつつあります。この環境で公平性を保つために、次の点に注意しましょう。

1)「出社そのもの」を評価しない

最大の原則は、オフィスに来たかどうか自体を評価しないことです。評価すべきは場所ではなく、成果や行動です。

ただし、「出社したことで生まれた成果やチームへの貢献」は評価軸に紐づけます。例えば「出社して対面指導した結果、後輩の育成に貢献した」といった具体的エピソードに基づき評価します。

2) オンライン上も共同も評価する

「出社しない=協調性が低い」という誤解を避けるため、リモート上での協働行動も見逃さず評価します。SlackやTeamsでの積極的な情報共有、オンライン会議での活発な発言や同僚サポートなども立派なチーム貢献です。ハイブリッドでは自分の働きが正しく伝わっているか不安になりがちです。評価面談等で「どのようなプロセスや取り組み姿勢をどう評価したか」を丁寧に説明することで、社員の納得度・公平感が高まります。

以上(2026年2月更新)

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画像:pixabay

旧ソ連の「伝説のスパイ」が明かした、日本人が思わず重要情報を語ってしまうひと言

どうにかして相手の真意を知りたい……腹の探り合いが続く商談の場面で、そう思ったことはないだろうか。元公安の筆者は、あえて“知らないふり”をしたり、軽く“挑発”したり、“はったり”を交えて、機密情報を引き出していたという。ビジネスや日常でも使える、本音を引き出す会話術を解説する。

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見た目の老化が速い人は「食事」に問題、老けない人が食べているものは?

「あの人、最近なんだか疲れて見える」「急に老け込んでしまったみたい」……誰かの顔色や肌ツヤの具合を見て、その人の体調が心配になった経験があると思います。なんらかの病気であれば、それが見た目に表れるのもイメージがつきやすいかもしれません。でも実は、日常的に気になるシミや肌荒れ、ニキビなどのちょっとした肌の異変も、からだのなかの不調のサインです。見た目の老化からわかる問題と、その対策になる食事術とは。

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「まさか、孫に贈与して損するなんて…」相続税の怖すぎる落とし穴とは?

本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。

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「結果を出すチーム」を率いるリーダーが重視すべきたった1つのこと

1 情報はチームの血液のようなもの

会社では、あらゆる場面でチーム活動が行われています。上司として部下と一緒にクライアントへ提案する、これも立派なチーム活動です。でも、「提案の目的は何か」「クライアントは何を求めているのか」といった情報がメンバー間で共有されていなかったら、どうなるでしょう? チームワークは乱れ、良い結果にはつながりません。

情報はチームの血液のようなもので、スムーズに流れていなければチームは機能しない

のです。テレワークが広まり、チャットでのコミュニケーションが当たり前になった今、チーム内の情報共有は、これまで以上に重要な課題になりました。

皆さんはチームのリーダーの立場ですが、もし、「チームがうまくいっていない」と感じていたら、この記事を読んでみてください。チーム内において情報共有する上で大切なポイントを紹介していきます。

2 チーミングは最初が肝心!

1)リーダーズインテグレーションとは?

チームが立ち上がったら、リーダーが最初に行うべきこと、それが「リーダーズインテグレーション」です。簡単に言えば、

チームが形成された直後に行う“情報共有のためのキックオフミーティング”

のことです。「なんだ、キックオフか。それならいつもやっているよ」と思うかもしれませんが、ここで大切なのは、単なる顔合わせや目標発表ではなく、情報格差を埋めることです。

組織心理学者のブルース・タックマンが提唱した「タックマンモデル」によると、チームは次のような段階を経て成長します。

タックマンモデル

チームは「形成」してもすぐには「機能」せず、「混乱」と「統一」のフェーズを通ります。この混乱は、多くの場合情報格差から生まれます。チーム立ち上げ当初は、まだ情報の伝達ルールが整っていません。そのため、

「え、他のメンバーは知ってたの? 私だけ聞いてない……」

「なんで自分にだけ情報が来ないんだろう」

といった不公平感や疑心暗鬼が生まれやすいのです。だからこそ、リーダーとメンバーが最低限の情報を共有するために、リーダーズインテグレーションが必要になります。最初にしっかり情報を揃えておけば、混乱を最小限に抑えられるのです。

2)リーダーズインテグレーションの際の注意点

リーダーズインテグレーションで大切なことは、

メンバーが「知っているはず」だという先入観を持たないこと

です。素直に自分が知りたいことと、メンバーに知ってほしい情報を共有しましょう。

例えば、「自分はせっかちな性格である」「完璧主義なところがあり、細かいことが気になってしまう」などと伝えます。また、メンバーには、

  • チームについて知っていること、聞きたいこと
  • リーダーについて知っていること、聞きたいこと

を挙げてもらい、リーダーはそれに丁寧に答えます。「こんなことも聞いて大丈夫なんだ」と感じられれば、メンバーは安心して意見を言えるようになります。よく「心理的安全性」という言葉で表現されますが、これがチームがうまく機能するための土台になります。

3)リーダーのコミットメント

リーダーズインテグレーションでは、

自身がどんなリーダーでいるかをメンバーに約束(コミットメント)すること

も大切です。これにより、「この人がリーダーなんだ」という認識が共有され、基本的なルールが明確になります。コミットメントの例は次の通りです。

  • 快適なチーム活動を約束する
  • 常にリーダーとしての威厳を持って活動することを約束する
  • メンバーの業務状況、家庭生活に配慮することを約束する
  • 時間厳守を約束する(無駄に活動を長引かせない)
  • 定期的に活動の進捗を伝えることを約束する
  • 中立な立場で指揮を執ることを約束する
  • 独断しないことを約束する
  • チーム活動を周囲の雑音から守ることを約束する
  • チーム活動の責任はリーダーである自分が負うことを約束する
  • 正当な権利は、リーダーである自分が上司と交渉することを約束する

こうした約束を明確にすることで、メンバーは安心してリーダーに着いて来られるようになります。

4)リーダーの心構え「サーバント・リーダーシップ」

もう1つ、リーダーが押さえておきたいのが「サーバント・リーダーシップ」です。これは、

リーダーは「指示する人」ではなく、「チームに奉仕する人」であるという考え方です。

サーバント・リーダーシップにおけるリーダーの役割は、メンバーが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、障害を取り除き、サポートすることです。

前述したコミットメントも、まさにサーバント・リーダーシップの実践例。「自分がチームのために何ができるか」を明確にすることが、今のリーダーには求められています。

3 「ジョハリの窓」を意識した情報共有

チームが動き始めてからの情報共有については、「ジョハリの窓」というフレームワークが役立ちます。これは、心理学者のジョセフ・ルフトとハリー・インガムが考案したもので、両者の名前に由来して「ジョハリの窓」と呼ばれています。コミュニケーションにおける「気付き」のモデルとして有名ですが、チームの情報共有にも応用できます。

ジョハリの窓では、情報を4つに分類します。

ジョハリの窓

良いチームをつくるには、

「開放の窓」をできるだけ広げることが重要

です。つまり、メンバー全員が同じ情報を持っている状態を増やしていくということです。互いのことは活動を続けるうちに分かってきますが、コミュニケーションをサボると「開放の窓」は広がりません。「開放の窓」を広げるには、

  • 「隠された窓」を小さくすること
  • 「盲目の窓」(問題点)を小さくすること

が必要です。

「隠された窓」を小さくするには、リーダーが、チームに関する情報を積極的に共有します。「これは言わなくてもいいかな」と思うことでも、チームに関係することなら、どんどん開示するようにしましょう。例えば、プロジェクトの背景や経緯、上層部の意向や期待、予算やリソースの制約、今後のスケジュール感、リスクや懸念事項などがそうです。透明性を高めることで、メンバーの信頼を得られます。

「盲目の窓」を小さくするとは、メンバーからの質問や指摘を受けて、自分(やチーム)の問題点に気づくということです。「最近、報告が遅いと感じることはありますか?」「私のマネジメントで改善してほしい点はありますか?」など、質問を投げかけることで、自分では気づかなかった課題が見えてきます。大切なのは、指摘されても防御的にならないこと。「教えてくれてありがとう」という姿勢で受け止めましょう。

以上(2026年2月更新)

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画像:pixabay

【中堅社員のスピーチ例】「自分へのご褒美」で繁忙期を乗り切る!

【ポイント】

  • 仕事の山場を乗り越えるために、自分自身にご褒美をプレゼントしてみる
  • 自分の気持ちが満たされ、心に余裕ができれば周囲へのサポートにも気を配れる
  • 特別なギフトでなくとも、日常でパフォーマンスを整える工夫をしてみる

おはようございます。 早いもので2月に入りました。2月のイベントといえば、バレンタインがあります。バレンタインと言えば、親しい人にチョコレートやギフトなどを贈るイメージがありますが、最近は楽しみ方が多様化しています。その1つに、「自分へのご褒美」があります。誰かに贈るのではなく、美味しいスイーツを自分のために買い、自身を労ったり、今後の山場を乗り越えるモチベーションを高めたりしようとする人が増えているそうです。

私は、これにはビジネスの観点からも理にかなった部分があると感じています。これから年度末に向けて、自分自身の仕事を終わらせたり、後任者に仕事を引き継いだりするために動くなど、忙しい日々が続く人が多くなるでしょう。山場を乗り越えるために、あえて自分に「ご褒美」をプレゼントして、「よし、これを食べたから(買ったから)来月まで頑張ろう!」などと気合を入れる。とても良いセルフマネジメントではないでしょうか。

忙しくなるとつい自分のケアを後回しにしがちですが、最高の仕事をするためには、まずは、自分自身のパフォーマンスやモチベーションを整えておくことが肝心です。また、この「自分へのご褒美」という考え方は、自分自身だけでなく周囲に対しても良い影響があります。自分の気持ちが満たされ、心の余裕を持つことができれば、忙しい中でも同僚や部下へのちょっとした声掛けやサポートに意識を向けられるからです。

皆さんもぜひ、チョコレートに限らず、好きな食事や趣味の時間など、自分なりのご褒美を用意してみてください。自分へのご褒美が思いつかないという人は、お気に入りのコーヒーを飲む、少し早く帰ってゆっくり休むなど、日常で少し自分のパフォーマンスを整える工夫をするだけでも、長期的な活力やモチベーションにつながります。私も、繁忙期に入る前に、温泉に行ったり、美味しいものを食べたりして、自分自身のパフォーマンスを整えておこうと考えています。

適度に自分を甘やかしながら、チーム一丸となってこの繁忙期を元気に乗り切っていきましょう。 年度末まであと少し、引き続きよろしくお願いします。

以上(2026年2月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【書籍ダイジェスト】『硬くて柔らかい「複雑系」 骨のふしぎ』

本書は、鉄筋コンクリートにも似た構造や、硬いだけではなく衝撃を緩和する「しなやかさ」を備えていることなど、骨にまつわる驚きの事実を、最新の研究成果を踏まえて解説する。
骨は「不動」なものであると考えがちだが、実は、つねに破壊されつつ、つくられており、「動的平衡状態」が維持されているという。また、骨の中にある骨髄には多種多様な細胞が存在しており、骨髄腔と呼ばれる空間には、免疫細胞を保存する「図書館」のような役割があるという有力な説も紹介する。

書籍ダイジェストは、こちらからお読みいただけます。pdf