書いてあること
- 主な読者:新入社員や中途社員がテレワークにストレスを感じていることに悩む経営者
- 課題:オフィスで顔を合わせていたときに比べて細やかなコミュニケーションが取れない
- 解決策:定期的な1on1ミーティングで雑談したり、社員の本音を引き出したりする。その上で心身の健康をサポートする仕組みを取り入れる
1 テレワークでもメンタルヘルスケアの基本は同じ
働き方改革やコロナ禍を経て、テレワークは1つの働き方として、すっかり定着しました。ただ、通勤時間の短縮や業務の効率化などのメリットがある一方で、
テレワークに不慣れな社員が、孤独感や閉塞感からストレスを抱える「テレワーク疲れ」
に陥るケースが少なくありません。社会に初めて出る新入社員や、前職がオフィスワークだった中途社員などがそうです。彼らにとって、分からないことをその場で質問しづらい、他の社員と交流しづらいといったテレワーク特有の事情は、ストレスを感じやすいのかもしれません。
せっかく入社した社員がストレスで休職したり、やる気を失って転職したりする事態は避けたいところですが、「今さらオフィスワークには戻したくない」という経営者もいるでしょう。
そこで、この記事では、テレワークのメリットを享受しつつテレワーク疲れを回避するため、
コミュニケーションと環境(制度)づくりの両面から社員をフォローしていくこと
をご提案します。ポイントは、
テレワークだからといって、メンタルヘルスケアの本質が変わるわけではない
という考え方です。個々の部下と向き合って支援していくという、基本的な社員管理を、「テレワークならでは」という点で少し改善すればいいのです。以降で詳しく見ていきましょう。
2 テレワークに合ったコミュニケーションの取り方
1)定期的な1on1ミーティング
テレワークだと、上司は部下の指導に十分な時間が取りにくく、指示も曖昧になりがちです。その状態で、「この仕事をお願い」と部下に任せると、部下は会社から何を求められているのかが分からなくなります。
そこで取り組むとよいのが、オンラインによる定期的な1on1ミーティングです。1on1の場で、
- 会社の将来に関する方針を伝える
- 部下に期待する役割や成果をディスカッションする
などして、仕事の意味付けをします。また、オンラインだと部下は上司の「圧」を直接的に感じずに話しやすい面もあるので、これを機会に部下の意見をしっかり聞き、丁寧なフィードバックをすることで信頼関係が高まります。
2)毎朝の情報共有
いくらオンラインでつながっていても、テレワークだとチームとしての一体感を共有しにくいものです。現場に全員が集まって、「頑張ろう!」と声を掛け合うことの効果は大きく、これだけで理念や目標だけではなく、実務のこまごました点も含めて、「やる」という気持ちが共有できていた部分があります。
この状態に少しでも近づけるには、
10分間など短時間でよいので、オンライン上で朝礼を行うことが大切
です。朝礼といっても上意下達で社長が話したり、持ち回りでスピーチをしたりするのではなく、皆が気軽に話せる「情報共有の場」とします。特に営業の新しい動きや足元のプロジェクトの進捗は共有しにくくなるので、そのあたりの情報を持ち寄り、同じ地点に立つのです。
そうした意味では、ビデオはオフでも問題ありません。かつてはビデオオンを強制するケースもありましたが、状況は変わりました。それよりもビジネスの状況を踏まえ、きちんと議論できることが大切です。
また、もし真剣ではない社員がいたら、参加させなくてもよいでしょう。全員参加という悪平等を断ち切ることもリモートでは大切なことです。
3)適度な出社の機会を設ける
中には、出社したほうがONとOFFの切り替えがうまくいく、誰かとコミュニケーションができるといった理由から出社を望む社員もいます。2023年にコロナ禍の規制が解除されて以降、オフィスワークに回帰したり、出社とテレワークを織り交ぜた「ハイブリッド型」に移行したりする会社が増えてきています。
ただ、だからといって、テレワークを全面廃止したり、無理に出社日を設定したりする必要はありません。オフィスを開放し、オフィスと自宅、どちらで仕事をしてもいいことにすればいいだけです。また、個々の社員にヒアリングをした上で1on1ミーティングをオフィスで行ったり、歓送迎会を自由参加で行ったりしてもいいでしょう。
3 リモート疲れを解消する環境(制度)づくり
1)雑談ルームを開設する
テレワークではとにかく雑談が減ります。これまで雑談は無駄な時間だと思われていましたが、なくなって初めて、意外といい息抜きになり、良い関係性を維持する潤滑油になっていたことが分かります。
そこで、オンライン上に雑談ルームを設け、いつでも気軽に話せる場としましょう。もちろん、ビデオのオンオフはどちらでもよく、出入りも自由として入室のハードルを下げます。慣れないうちは、なかなか雑談が始まらないので、経営者や上司から話し掛けましょう。
2)健康管理を促す
テレワーク中は、起床・就寝時間が遅くなったり運動不足になったりと、生活リズムが乱れがちです。テレワークの社員にフレックスタイム制を認めている会社も多いと思いますが、生活のリズムが乱れたままでは、会社が把握していない時間にこっそり残業する社員が出てくるなど、労働時間管理の問題も生じます。
そこで、社員の生活リズムを整え、健康管理を促します。具体的には、毎朝の情報共有の際にオンラインでつないでラジオ体操をしたり、就業時間に中抜けしてウォーキングやランニングをすることを認めたりします。福利厚生の一環として、オンライン上のフィットネス講座の受講料を補助するのもよいでしょう。
3)メンタルヘルスの診断ツールを活用する
軽いテレワーク疲れだと、本人も周囲もメンタルヘルスの不調に気付きにくいものです。しかし、その状態を放置すると大きな問題になる恐れがあります。そこで、ストレスやメンタルヘルスの状態を確認できるツールの導入を検討してもよいでしょう。例えば、幾つかの質問に回答することで、メンタルヘルスの状態を診断するツールなどがあります。また、オンライン上で専門家に悩みを相談できるサービスもあります。
以上(2024年4月更新)
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