書いてあること
- 主な読者:会計の基礎を勉強したい人で、損益計算書の「費用」について知りたい人
- 課題:費用の種類がいくつもあって紛らわしい
- 解決策:売上に直結するか否か、臨時的か否かで考えると整理しやすい
1 費用とは
費用とは、
事業活動上のコストで、商品の仕入れや人件費の支払いなど
が該当します。損益計算書では、利益計算上のマイナス項目として記載されます。費用はそれぞれの性質や対応する収益の違いをもとに5つに区分されています。損益計算書を見る際、それぞれの利益の意味を知ることはとても重要です。利益は収益から費用を差し引いて計算されるので、費用項目の性質を知ることで、各段階利益の意味も理解できます。
2 費用項目に書かれていること
損益計算書の費用の項目は次の通りです。なお、全ての会社の損益計算書に次の全項目が記載されているわけではありません。
1)売上原価
売上原価は販売した商品の原価で、次の算式で計算されます。
売上原価=期首棚卸資産+当期仕入高-期末棚卸資産
期首に手許にある在庫商品に当期に仕入れた商品を加え、期末に手許にある在庫商品を差し引いた金額が売上原価です。
期末棚卸資産の金額は、決算日に行う実地棚卸で決定します。もし、帳簿価額と差額がある場合は、商品減耗損(売上原価の内訳科目)を計上します。
また、期末の在庫の時価が著しく下落し、回復の見込みがない場合は、商品評価損を計上します。基本的には、売上原価の内訳科目ですが、時価の下落事由(災害により損傷した場合など)により、後述する営業外費用や特別損失となることもあります。
2)販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費(以下「販管費」)は、広告費や従業員の人件費、旅費交通費など商品を販売するためにかかった費用や、オフィス賃借料や消耗品費、福利厚生費など会社の運営に必要な一般管理費です。また、一般的には減価償却費も販管費に含まれますが、製品の製作に関連する固定資産の減価償却費は売上原価に計上されることになり、社宅のような非事業用資産の減価償却費は営業外費用となる点に注意が必要です。
3)営業外費用
営業外費用は、借入金の支払利息や雑損失など本業とは関係のない活動から生じた費用です。なお、雑損失は既存の費用項目になく、売上原価・販管費・特別損失に含まれない項目を処理する場合に使用されます。
4)特別損失
特別損失は、固定資産売却損などその期だけ臨時的に生じる損失(費用)です。災害により生じた損失も特別損失に含まれます。
5)法人税、住民税及び事業税
法人税、住民税及び事業税は、会社の利益に応じて負担する税金(厳密には一部会社の規模などに応じて負担するものもあります)で、法人税等と略されることもあります。この3つの税金以外の税金(固定資産税や印紙税など)は、租税公課(販管費)として処理されます。
3 まずは損益分岐点(損益分岐点売上高)を押さえる
1)損益分岐点とは
費用を用いた代表的な財務指標は、損益分岐点比率と安全余裕率です。まず、損益分岐点を解説した上で、それぞれの財務指標を紹介します。
損益分岐点とは、事業の採算が合うか合わないか(黒字か赤字か)の分岐点です。損益分岐点(イメージ)は次の通りです。
売上高線と費用線が交わる点(売上高=費用)が損益分岐点です。売上高が損益分岐点を超えれば採算が合う事業と判断できます。損益分岐点を金額ベースで表現するときは損益分岐点売上高といい、販売数量ベースで表現するときは損益分岐点販売数量といいます。
2)損益分岐点売上高の計算方法
損益分岐点売上高を求めるために、費用を「変動費」と「固定費」とに分類します。
変動費は売上高に応じて発生する費用であり、売上高が0のときは発生しません。小売業であれば商品の売上原価が変動費、製造業であれば原材料費や外注加工費が変動費です。
固定費は売上高の有無や増減に関係なく発生する一定の費用であり、人件費や減価償却費、オフィスの賃借料などが該当します。
損益分岐点売上高は次の算式で計算されます。
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費÷売上高)
4 費用を使用する主な財務指標から分かること
1)損益分岐点比率
損益分岐点比率とは、実際の売上高と損益分岐点売上高の比率を表す割合です。計算式で示すと次の通りです。
損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100
損益分岐点比率は、現在の売上高と損益分岐点の乖離を示すので、この指標が低ければ低いほど経営の安全性が高いと見られます。
2)安全余裕率
安全余裕率は、実際の売上高と損益分岐点売上高の差額を割合で示したものです。計算式で示すと次の通りです。
安全余裕率(%)=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高×100
安全余裕率は、売上高がどの程度減少(または増加)したら赤字(または黒字)になるかを示すので、この指標が高ければ高いほど経営の安全性が高い(余裕がある)と見られます。
以上(2022年1月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 鬼丸真史)
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