1 個人農家が会社法人になることのメリット
2 法人形態を検討するときに考えるべきこと
3 設立の流れと、農地を所有・賃借するときの要件
1 個人農家が会社法人になることのメリット
農業法人は、大別すると、会社法に基づく「会社法人」と、農業共同組合法に基づく「農業組合法人」があり、さらに細かくは次の図表のように分かれています。
この記事では会社法人について扱います。農業経営の法人化をする上で、会社法人を選択するメリットには次のようなものがあります。
- 1人でも設立できる
- 農業以外の事業にも参入できる
- 農事組合法人と比べて、迅速な意思決定ができる
以降で、設立時に検討すべきことや設立の流れについて詳しく紹介します。なお、法人化そのもののメリットや、農事組合法人のポイントについて知りたい場合、次のコンテンツをご確認ください。
2 法人形態を検討するときに考えるべきこと
会社法人は営利行為が目的であり、事業内容は農業に限りません。また、構成員1人で設立でき、雇用においても制限がありません。経営者に権限を集中させることや、他の農家あるいは農家以外から出資を受けることが可能です。
これらの条件から、会社法人は次のような場合に適しています。
- 家族経営を法人化したい
- 農家以外からも人材を確保したい
- 将来、経営の多角化を考えている
会社法人には5つの区分があります。しかし、有限会社は新たに設立できないため、会社法人を設立する場合、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社から選択することになります。これら4つの法人形態は、それぞれの位置づけを図表2のように表せます。
合名会社と合資会社は、構成員のうち1名以上もしくは全員が無限責任を負うことになります。つまり、ある農業法人が多額の負債を抱えて破産した場合、その無限責任を負う構成員は、私財を投げ売ってでも負債を弁済しなくてはなりません。
よって、農業法人を設立するときは、おおむね株式会社か合同会社から選択されます。これらの違いは、図表3の通りです。
なお、農業法人で最も多いのは株式会社です。ただし、株式の全部において譲渡制限のある非公開会社に限られるという点に注意しなければなりません。
3 設立の流れと、農地を所有・賃借するときの要件
会社法人の組織形態を取る場合、会社法の規程にのっとって設立手続きを進める必要があります。ここでは一例として、株式会社を発起により設立するときの流れについて紹介します。なお、実際に会社法人を設立するときは、弁護士や税理士、行政書士、社会保険労務士などの専門家と相談しながら手続きを進めてください。
ただし、会社法人を設立しただけでは、農地を取得・賃借することはできず、その農地を所轄する農業委員会の許可を得るか、農地中間管理機構(農地バンク)を利用する必要があります。また、所有する場合には、一定の要件を満たした上で、農業委員会に届け出をして審査を受け、「農地所有適格法人」として認可を得なければなりません。これら農地制度や会社法人の設立手順について詳しくは、以下のウェブサイトをご確認ください。
■農林水産省「農地制度」■
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/soudan/index.html
■農林水産省「農業法人について『法人の設立手続』」■
https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_seido/seturitu_tetuzuki.html
以上(2025年4月更新)
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