書いてあること

  • 主な読者:サバイバルゲームフィールドの開設を検討している事業者
  • 課題:市場の動向や収支見込みに関する知見がない
  • 解決策:競合の状況や開設に必要な設備・サービス、関連する法規制などを把握する

1 サバイバルゲームの概要と市場動向

1)サバイバルゲームとは

サバイバルゲームは、板壁などで囲った施設の中で玩具銃を用い、模擬的な銃撃戦などを敵味方に分かれた数人から数十人のチームで楽しむ競技です。一般的には、BB弾と呼ばれる直径6ミリメートルの球状の弾丸を装填し、難燃性ガスや圧縮空気などの力で射出するタイプの玩具銃(以下「エアガン」)が用いられます。

野外で楽しむことが多かったり、一種の「戦争ごっこ」でもあったりすることから、雰囲気を盛り上げ、かつ安全性を確保するべく、服装(以下「ミリタリールック」)は野外の行動に適した軍装品・迷彩服(払い下げ品やレプリカ品など)や、それに近いものであるのが一般的です。

また、エアガンは、射出時に代替フロンなどの難燃性ガスを使う「ガスガン」、射出時に電動モーターでポンプを作動させて作り出した圧縮空気を使う「電動ガン」、銃弾の装填と同時に人力で銃内部のポンプを使って圧縮空気を作り出し、弾丸を射出する「エアコッキングガン」があります。

銃弾が自動で装填され、低温でも作動するなど利便性の高さから大型銃を中心に電動ガンが使用されています。拳銃モデルなど小型の銃は電動モーターなどを内蔵するのが難しいため、ガスガンやエアコッキングガンが主流のようです。

2)市場の概要

サバイバルゲームの市場は、エアガン、ミリタリールックといった「装備」と、サバイバルゲームを楽しむ場所である「サバイバルゲームフィールド(以下「フィールド」)」などで構成されます。

装備市場は、総称してミリタリーショップなどと呼ばれるミリタリールック専門店・サバイバルゲーム専門店の他、玩具専門店・量販店などが主なプレーヤーです。主として、商品の販売で収益を上げています。

フィールド市場は、主に次のような背景を持つ事業者によって運営されています。

  • 愛好家グループを母体とする事業者(個人、法人)
  • 玩具銃も取り扱うミリタリーショップ
  • 遊休不動産の活用や町おこしなどを目的とする、異業種の新規参入者

フィールドの収益源は、時間・1日単位の貸し切り料、定例会(詳細は後述)の参加費、飲食物や関連グッズの販売などです。

3)フィールドの件数

東京サバゲーナビによると、都道府県別のフィールドの件数は次の通りです。

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なお、本業の閑散期(例:春~秋季のスキー場)、商業施設のイベントといった期間限定で開業しているフィールドや、個人が運営する小規模なフィールドなど、捕捉できていないフィールドもあるため、実際には図表より件数は多いものとみられます。

■東京サバゲーナビ■
https://tokyosavage.jp/
■日本遊戯銃協同組合(ASGK)■
http://www.asgk.jp

2 フィールドの概要

1)スタイル別に見るフィールド

フィールドのスタイルは、アウトドア型とインドア型に大別されます。

アウトドア型は、郊外の山林や採石場跡などの遊休地に立地する、フィールド外部に流れ弾が飛ばないように板壁やフェンスなどで囲った施設です。障害物を設置するなどして、模擬的な野外戦闘を楽しめるようにしています。

インドア型は、廃倉庫や廃工場といった使われなくなった施設、ビルのワンフロアなど、屋内でサバイバルゲームを楽しめるようにしたものです。施設の特性上、模擬的な屋内戦闘を楽しめるようにしてあるのが一般的ですが、模擬樹木を設置するなどして森林戦を模しているところもあります。

いずれのスタイルのフィールドも、開設に当たっては障害物や競技に必要な機材を設置するだけなど、比較的手間が掛からず、原状回復もしやすいため、遊休不動産の活用策にもなります。例えば、事務所跡を什器などが残った居抜きの状態でフィールドに転用し、日常的な環境で楽しめるようにしているケースがあります。また、スキー場の運営者が、春~秋季の休業中の施設活用策としてフィールドを運営しているケースもあります。

2)主な付帯設備

フィールドの付帯設備として、セーフティー(待機・休憩所)、更衣室、洗面所、装備の整備・一時保管スペース、試射場などが挙げられます。セーフティーはサバイバルゲーム特有の設備で、他のプレーヤーからの銃撃によって退場させられた人や、プレーの順番待ちをしている人が安全に待機できるようになっていることから、その名が付いています。

アウトドア型の場合、セーフティー、更衣室、洗面所といった付帯設備は、プレハブの建物などにまとめていることが多いようです。都心から離れているフィールドであれば、駐車場も備えています。

なお、女性愛好家の増加に伴い、女性専用の更衣室や洗面所などを設けるところも見られるようになっており、フィールドの計画を立てる際は留意が必要です。

3)主なサービス

フィールドのサービスとして、定例会の開催、フィールドの貸し切り、銃や防具など装備の有料レンタル、飲食物や関連グッズの販売、最寄り駅への送り迎えなどがあります。

定例会は、不特定の愛好家にサバイバルゲームの参加を呼びかけるもので、1日単位で行われます。特定のチームに属していない人でも参加費を支払うことで手軽に参加できます。フィールドの定員にもよりますが、1日当たり20~30人程度を集めるのが一般的なようです。稼働率向上が図れるため、参加者が見込める土日祝日を中心に行われています。

フィールドの貸し切りは、団体客向けに施設を数時間~1日単位で貸し出すもので、多くの施設では最低利用人数を定めています。

装備の有料レンタルは、初めてサバイバルゲームに参加する人や、装備をそろえるまでに至っていないライト層を取り込むためのサービスで、多くのフィールドで取り扱っています。

最寄り駅への送り迎えは、フィールドまでの交通手段がない人に対して行うものです。現地までの移動距離が長く、路線バスの本数も少ないため、タクシーでの移動を余儀なくされるような場所に立地しているフィールドで実施されている場合があります。

4)料金の目安

フィールドの利用に関わる料金の目安は次の通りです。

  • 定例会会費(1人当たり)
    3000円(終日)
  • 貸し切り料金
    定例会会費×最低利用人数
    (例:定例会会費が3000円、最低利用人数が15人の場合、3000×15=4万5000円)
  • 装備レンタル料
    エアガン:2000~3000円程度
    迷彩服:1000円程度
    フェースガードやゴーグルといった小物類:各500円程度

5)開設に掛かる費用

フィールドの開設に掛かる費用は、大きく分けて次の3つになります。

  • フィールドそのもの
    土地・建物の賃借料・取得費、造成費(アウトドア型の場合)
  • フィールドの設備
    セーフティーなどに使う建物、水道や電気などのインフラ回り(いずれもアウトドア型の場合)、遮蔽物(小規模な建物、工作物、廃車など)
  • フィールドの備品
    受付、ロッカー、レンタル用装備(エアガン、小物類)

なお、実際に掛かる費用については、どのようなフィールドにするのかによって、大きく異なってきます。例えば、フェンスの設置など手を付ける範囲を最低限にとどめ、セーフティーをイベント用のテントにしたり、トイレを仮設タイプにしたりするなどして、設備を簡易なものにする場合、造成費はほとんど掛からず、その他の費用も抑えられるでしょう。

ただし、魅力的なフィールドにするためには、多額の投資を行い、快適性やエンターテインメント性を高める施策が欠かせません。具体的には、セーフティーなどに使う建物を設置して水洗トイレやシャワー、更衣室を設けたり、遮蔽物を小屋など本格的なものにしたりすることが考えられます。

また、装備レンタル料については、1セット当たりの大まかな目安は次の通りです。

  • エアガン:2万~3万円(銃本体、バッテリーなど)
  • 迷彩服:5000~1万円(上下セット)
  • 小物類:2000~5000円(フェースガード、ゴーグルなど)

6)法規制

フィールドを開設するに当たり、特有の法規制はありません。

また、フィールドは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」の規制対象となる「5号営業(ゲームセンターなど)」には基本的に該当しません。ただし、念のため所轄警察署の生活安全を担当する部署に相談しておくと、間違いないでしょう。

アウトドア型フィールドを次に挙げるような場所に設置する場合、許認可を取り付けたり、転用の手続きを取る必要があります。

  • 市街化調整区域(都市計画法)
  • 保安林(森林法)
  • 農地(農地法)
  • その他開発が規制されている場所

そのため、フィールドの開設を予定している場所が決まり、大まかな計画が固まり次第、土地の登記簿を取得したり、市町村の建設担当部署に問い合わせたりして、必要な手続きを洗い出す必要があります。規制によって開発できないケースもあり得るため、早めの対応が欠かせません。

また、セーフティーなどとして使う建築物を新たに設置する場合、建築基準法などに基づく手続きが必要なため、併せて建設担当部署に問い合わせておきましょう。

そして、開設に関わる工事や開設後にトラブルとならないよう、説明会や見学会を行うなどして、近隣住民の不安を解消することが欠かせません。

運営に当たっては、条例等により18歳未満の使用が禁止されているエアガンもあることから、18歳未満の入場を規制したり、該当するエアガンを18歳未満には貸し出さないなどの対応が必要です。

7)利用者などへのヒアリング、専門家への確認が欠かせない

本章で紹介したフィールドの概要は、あくまで基本的なもので、立地や競合環境、ターゲット層、ターゲット層が求める設備、敷地に見合った適正なプレー人数などの見極めが重要です。近隣のサバイバルゲーム専門店にヒアリングしたり、サバイバルゲーム愛好家を招いて試遊会を開催したりして、利用者に選ばれるフィールドを構築できるようにしましょう。

また、土地開発や風俗営業に詳しい行政書士などの専門家とも相談し、トラブルなく開設できるようにしましょう。

以上(2019年8月)

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画像:pixabay

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