書いてあること
- 主な読者:固定資産の調達方法にリースを検討している中小企業の経理担当者
- 課題:リース・レンタルの違いがよくわからない
- 解決策:リースの基本的な考え方から、会計上の取り扱いまでを解説する
1 リースとは
1)リースとは
企業は、製造・販売・事務・管理など、さまざまな目的で経営に必要な設備を調達します。リースというシステムが導入される以前は、自己資金または借入金によってそれら設備を購入により調達していました。しかし、資金力が乏しいあるいは信用力が低い企業などは、設備資金を十分に確保することができません。そこで、設備を「購入する」ことではなく「使用する」ことが設備投資の本来の目的であることに着目し、新たな設備調達手段として米国で1950年代に誕生したのがリースです。
リースとは英語で「賃貸借」を指し、この設備調達手段であるリースは賃貸借を意味するリースと区別するため、「ファイナンス・リース」と呼ばれます。ただし、日本では「リース」の呼称がファイナンス・リースを指すのが一般的です(以下「リース」)。
2)リースと通常の賃貸借の違い
リースは、設備資金を貸し付ける(借りる)のではなく、設備そのものを賃貸する(賃借する)取引ですが、もともと、設備資金調達の代替手段として構築されたもので、その取引の仕組みや契約の内容は通常の賃貸借とは異なっています。
リース事業協会によると、ファイナンス・リースと賃貸借・レンタルとの違いは次の通りです。
2 リース料の算式
1)リース料の算式
リース料の算式は一般に次のようになっています。
リース料の算式に使用されている項目の内容は次の通りです。
2)基本額
一般的にリース物件の購入価額から見積残存価額を差し引いた金額で、これがリース料の計算の基本となります。
リース取引における物件の購入価額は、通常の商取引と同じく、ユーザーとメーカー(販売店)の間で決められます。
見積残存価額とは、リース期間が終了した時点で、その物件がどのくらいで売却できるかを見込んだ「物件の処分価値」のことです。この残価の見積もりは、物件の種類・機能によって異なってきます。例えば、自動車・建設機械・工作機械などのように中古市場が確立されている物件では残価が見込まれますが、これら以外の物件では、ほかに転用が利かないものがほとんどであるため、残価は見込まれません。
3)金利
リース会社は、通常、物件の購入資金を金融機関から調達します。この資金には当然金利が伴うので、リース料の構成要素の中でも物件購入価額の次に重要な要素となります。
この金利の算出では、リース料は月額均等払いのため、発生する金利に関しては「元利均等返済方式」によって計算されます。
この利率をいくらにするかがリース料を大きく左右します。
金利はリース会社の調達金利に一定の率を加えたものとなりますが、リース会社は巨額な資金を借り入れており、調達金利は相当低い率となっているのが一般的です。
従って、リース会社は、将来的な金利水準の変動を十分見極めた上で金利を決めています。
4)固定資産税
土地・建物・機械装置などの固定資産の所有者には、固定資産税が課されています。リース物件に対しても同様に固定資産税が課されるので、リース物件の所有者であるリース会社にも所有物件の固定資産税を支払う義務があります。リース料にはこの税金も含まれます。
5)保険料
リース物件には、一般に火災や盗難などによる損害に備えて「動産総合保険」が掛けられています。
この保険料もリース料に含まれます。保険料率は物件の種類によっても異なりますが、大口契約によりかなり割安となっています。
6)管理費(販売管理費)
管理費は、リース会社の販売費および一般管理費のことです。
7)利益
リース会社が確保する「リース会社の利潤」のことです。リース会社の収益は、この「利益」部分をどの程度見込むかによって決定されます。この「利益」部分は、物件金額やユーザーの信用状態によっても差が生じてきます。
3 月額リース料率を使ったリース料の算出
1)リース料の算出例
各リース会社ではリース期間に応じた「月額リース料率」を用意しています。リース期間は基本的に各機器の法定耐用期間よりも短く設定できるため、リース利用者にとっては購入した場合と比べ、早期の償却ができるという利点があります。
図表3は、パソコンやコピー機のような見積残存価額が事実上ゼロの物件に関しての月額リース料率の例です(リース終了時に残価が見込まれる物件はさらにリース料率は低率となります)。
リース物件の価格にこの月額リース料率を乗ずれば、毎月のリース料が簡単に算出できます。
上記月額リース料率を基に、仮に、モニター・ソフトウエアなどの周辺機器を含むパソコン10台セットの価格合計150万円を5年リースした場合、月額リース料は次の通りです。
- 150万円×1.818%=2万7270円
5年間では163万6200円(2万7270円×60カ月)を支払うこととなります。同じ計算を3年リースの場合で考えてみると、次の通りです。
- 150万円×2.937%=4万4055円
3年間で158万5980円(4万4055円×36カ月)を支払うこととなります。
また、リース期間終了後に継続して機器を使用したいと考えた場合、「再リース」によって継続できます。
1年間再リースした場合の再リース料は、目安として1年間で月額リース料並みの料金となります(上記5年リースのケースでは、1年間の再リース料は2万7270円)。
なお、本稿はあくまでリース料の算出などの基本的な考え方をまとめたものです。実際にリース料やリース契約を検討する際は、リース会社から十分な説明等を受け検討を行う必要があります。
2)リース会計基準(日本会計基準)
現在のリース会計基準(日本会計基準)は、2007年3月30日に公表された「企業会計基準第13号 リース取引に関する会計基準」及び「企業会計基準適用指針第16号 リース取引に関する会計基準の適用指針」が適用されています。
リース会計基準の対象となるのは、金融商品取引法の適用を受ける会社およびその子会社や会計監査人を設置する会社およびその子会社となります。
なお、国際財務報告基準(IFRS)では2019年1月1日以後、米国会計基準では2018年12月16日以後から始まる会計年度において、すべてのリース取引について資産計上をする新しいリース会計基準(IFRSと米国会計基準ごとに詳細は異なります)が適用されています。日本会計基準においてもIFRSや米国会計基準との足並みをそろえるため、現在改正に向けた草案作成等が行われています。
一方、中小企業の場合、「中小企業の会計に関する指針」に従って、会計処理することができます。
この「中小企業の会計に関する指針」については、現在「中小企業の会計に関する指針(平成31年2月27日改正版)」が公表されおり、所有権移転外ファイナンス・リース(中途解約不可や、所有権移転条項がないなど一定のリース取引)について、次の2つの会計処理が規定されています。
- 通常の売買取引に係る方法に準ずる会計処理
- 通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理し、かつ未経過リース料を注記する方法
以上(2020年1月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)
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