書いてあること
- 主な読者:会計の基礎を勉強し始めた新入社員で、「純資産」について知りたい人
- 課題:純資産に含まれる項目の名称が難しく、内容も複雑なので分かりにくい
- 解決策:純資産は資産と負債の差額。株主に帰属する部分とそうでない部分がある
1 純資産とは
純資産とは、
会社の正味の財産(=資産-負債)で、投資家からの出資金や利益の積み立て分など
が該当します。純資産は貸借対照表の右側に表示され、次のように大別されます。なお、株主資本と評価・換算差額等を合あわせたものを「自己資本」と呼びます。
- 株主に帰属する部分:「株主資本」
- そうではない部分:「評価・換算差額等」「新株予約権」
2 プラスの場合とマイナスの場合
資産が負債より大きい場合はプラスの正味財産といい、正常な状態です。一方、資産が負債より小さい場合にはマイナスの正味財産といい、債務超過の状態になります。債務超過とは、
自社の資産だけでは借入金の返済や買掛金、その他債務の支払いができない状況
で、これが続けば実際にデフォルト(債務不履行)を起こし、最悪の場合には倒産します。
3 純資産の部に書かれていること
貸借対照表の純資産の部に記載される主な項目は次の通りです。全ての会社の貸借対照表に次の全項目が記載されているわけではなく、逆にここでは紹介していない項目が記載されていることもあります。あくまでも、会社の状況次第です。
1)株主資本
株主資本とは、株主からの出資と会社が稼いだ利益の蓄積であり、資本金、新株式申込証拠金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式、自己株式申込証拠金の6つに区分されます。
1.資本金
資本金は、会社の設立または株式の発行時に、株主から会社に払い込まれた、または給付された財産の額です。資本金として計上された金額を減額する場合、株主総会の特別決議や登記変更など一定の手続きが必要です。
なお、この払い込みまたは給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上せずに資本準備金(詳細は後述)とすることができます。
2.新株式申込証拠金
新株の引受人は出資金の払込期日に株主となるため、株式の払込期日前に払い込まれた金額(手付金)は資本金として処理できず、一時的に新株式申込証拠金として表示されます。
3.資本剰余金
資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金とに区分されます。資本準備金は、株式の発行時に株主となる人から払い込まれた、または給付を受けた財産のうち資本金に組み入れなかった額です。会社法により、一定の積み立てが強制されています。赤字(欠損金)が生じた場合などには、これを取り崩して補填することができます。ただし、資本準備金を取り崩すためには、株主総会の普通決議など一定の手続きが必要になります。
その他資本剰余金は、企業再編(合併など)時に発生する合併差益、株式交換差益および株式移転差益や、自己株式を処分した際に発生する差損益などが表示されます。
4.利益剰余金
利益剰余金は、利益準備金とその他利益剰余金に区分されます。利益準備金は、利益の配当時に、配当額の一定額を積み立てる項目で、会社法により積み立てが強制されています。これは、異常に高額な配当によって会社の財産が一定以上減少し、借入金の返済や買掛金の支払いができなくなることを防ぐためです。なお、株主に配当金を支払う場合、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで、その配当の額の10分の1以上を資本準備金または利益準備金として積み立てる必要があります。
また、その他利益剰余金には、過去において計上した利益のうち、社内留保している繰越利益剰余金や任意積立金が表示されます。
5.自己株式
自己株式は、会社が保有する自社の株式のことです。会社が自社の株式を既存の株主から買い受けた場合、資本の払い戻しとなるため、純資産の控除項目として表示されます。
6.自己株式申込証拠金
自己株式の処分(会社が保有する自社の株式を外部(将来の株主)に売却すること)に際して払い込まれた金額のうち、払込者が株主となる前(払込期日前)のものは、自己株式申込証拠金に表示されます。
2)評価・換算差額等
評価・換算差額等は、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益及び土地再評価差額金の3つに区分されます。
1.その他有価証券評価差額金
その他有価証券とは、市場価格のある株式(売買目的有価証券、子会社及び関連会社株式を除く)、社債等の債券(満期保有目的の債券は除く)のことで、会社同士の持ち合い株などが該当します。その他有価証券については、時価評価(決算時の時価(市場価格など)に帳簿価額を修正すること)を行うことで生じる評価差額のうち、当期の損益に反映されなかったものをその他有価証券評価差額金に表示します。
これは、その他有価証券はその保有目的(持ち合いなど)から、時価との評価差額の全額を損益に反映するのはふさわしくないとの考えのもと、その一部(税効果を考慮した後の評価差額、つまり、税効果会計によって認識された繰延税金資産または繰延税金負債に見合う額を除いた額)が純資産に表示されます。
2.繰延ヘッジ損益
ヘッジ手段とするデリバティブ取引の損益を発生時に認識せずに、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで損益認識を遅らせるために、ヘッジ手段に係る損益を繰延ヘッジ損益に表示します。これは資産・負債のいずれの性質も有しないことから純資産に表示されます。
3.土地再評価差額金
土地再評価差額金は、事業用土地を時価で評価し、土地の帳簿価額を改定する1回限りの臨時的かつ例外的な会計処理によって計上されるものです。土地の再評価差額から再評価に係る税効果の影響を加味した金額を純資産に表示します。
3)新株予約権
新株予約権は、株式の交付を受けられる権利です。新株予約権は、将来、権利行使されると払込資本となるため資本金または資本準備金に計上されますが、権利行使されず失効してしまうと払込資本にはなりません。従って、払込資本となることが確実ではないものの、返済義務のある負債の性質を有しないことから純資産に表示されます。
4 純資産を使用する主な財務指標から分かること
1)自己資本比率
自己資本比率とは、会社の総資産に占める自己資本の割合のことをいいます。計算式で示すと次の通りです。
自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100
自己資本比率は、会社の財務健全性を示す指標です。この指標が高いほど安全性は高くなり、一般的に40%以上あれば安全と考えられています。
2)総資本利益率(ROA、Return On Asset)
総資本利益率とは、利益を自己資本(純資産の部)と他人資本(負債の部)の合計額(総資本)で除した比率をいい、一般的にROAと呼ばれます。計算式で示すと次の通りです。
総資本利益率(%)=(当期純利益or営業利益or経常利益)÷(自己資本+他人資本)×100
総資本利益率は、総資本を使ってどの程度の利益を生み出せたかを示し、効率性を見る指標です。この指標が高いほど、利益を効率的に生み出せていると見ることができます。
3)自己資本利益率(ROE、Return On Equity)
自己資本利益率とは、当期純利益を自己資本で除した割合のことをいいます。計算式で示すと、次の通りです。
自己資本利益率(%)=当期純利益÷自己資本×100
自己資本利益率は、株主が拠出した自己資本を使って株主のためにどれだけの利益を上げたかを示す指標です。この指標が高いほど、投資が効率的に行われているとみられます。
以上(2022年1月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 伏見健一)
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