書いてあること

  • 主な読者:決算対策の一環などとして、交際費を損金にしたい経営者
  • 課題:「5000円ルール」は本当か? 取引先との会食は全額損金にしたい……
  • 解決策:会議費などとの違いを知る。面倒でも、経費精算をしっかりと行う

1 交際費とは

交際費とは、

飲食やお中元・お歳暮、結婚祝いや香典など、さまざまなシーンで発生する費用

です。交際費と聞くと、社外の人を接待する際の費用をイメージしますが、税務上は社内の役員や従業員に対するものであっても交際費に該当することがあります。交際費は、税務特有の取り扱いが定められている代表的な費用の1つで、税務調査でも重点的に調べられます。

交際費が損金になるかどうかのポイントは、

  • 社外の人を含む1人当たり5000円以下の飲食費であること
  • 一定の限度額(損金算入限度額)に満たない金額であること

です。

なお、交際費については、「社内の食事だからこれは会議費でしょう?」「いやいや社内でも交際費ですよ」といったように、会議費や福利厚生費と混同されがちです。各費用によって税務上の取り扱いが異なるので、ここですっきりと整理しておきましょう。交際費や会議費・福利厚生費の判断フローと取り扱い(原則)は次の通りです。

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2 損金になる交際費の2つのポイント

1)社外の人を含む1人当たり5000円以下の飲食であること

会計上、交際費は「販売費及び一般管理費」として、損益計算書に費用として計上されます。しかし、税務上は原則として損金にならず(損金不算入)、費用としてすぐに認められません。

例外は、いわゆる「5000円ルール」です。これは、

社外の人と接待目的で行われた飲食のうち、1人当たり5000円以下のもの(以下「少額交際費」)は、税務上の交際費の範囲外になり、全額損金になる

というルールです。少額交際費として取り扱うためには、帳簿書類に次の項目を記載する必要があります。税務調査においてはこの記載事項についてチェックされるので注意しましょう。

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2)一定の限度額(損金算入限度額)に満たない金額であること

少額交際費に該当しなくても、社外の人との接待飲食費(以下「社外飲食費」)の50%相当額は損金にできます。また、中小法人(資本金の額が1億円以下など一定の法人)については、特例として年800万円まで損金にすることが認められています(以下「定額控除限度額」)。年800万円を超える部分については損金になりません。

従って、中小法人については、社外飲食費の50%相当額と定額控除限度額を比較し、いずれか多いほうが損金算入限度額となります。まとめると、次の通りになります。

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なお、「社外飲食費」については、「少額交際費」と同じように帳簿書類に「飲食などを行った年月日」などを記載しなければなりませんが、「飲食などに参加した者の人数」については記載しなくて大丈夫です。

3 交際費で迷いやすい実務Q&A

1)飲食費は全て交際費で処理していいの?

役員とその家族のみで使った飲食費を交際費として処理した場合、税務上は交際費ではなく、役員給与となります。この場合、役員に対する給与所得としての源泉徴収漏れが指摘されるとともに、損金にもなりません。

また、取引先との飲食費などであっても、その証拠書類を保存していないと私的費用と誤解されることがあります。交際費は、業務上必要となる費用であることを証明できるよう、所定の書類(一定の事項が記載された領収書など)を整備することが重要です。

特に同族会社のような経営陣のほとんどが親族で占められている企業については、業務上で必要となる交際費と私的な費用の区別が曖昧になりがちです。税務調査でも指摘されるケースが多いため、正確な処理を心掛けましょう。

2)接待後のタクシー代は、旅費交通費? 交際費?

取引先を接待した際、相手のタクシー代を負担したり、自身もタクシーで帰宅したりすることがあります。会計上、タクシー代は旅費交通費として処理するのが通常ですが、税務上は接待に付随する費用となり、交際費として処理します。実務上、会計で旅費交通費としたタクシー代を、交際費として申告処理することを忘れてしまうケースがあるので要注意です。

3)高級レストランでランチミーティング。損金になる?

取引先との商談や社内での打ち合わせを、食事しながら行うことがあります。こうした場合の飲食費は、基本的に「会議費」として損金になります。ただし、高級レストランでの飲食費など、打ち合わせ場所としてはふさわしくない、あるいは高額過ぎるなどと税務署から判断された場合には、税務上は交際費として処理するように指摘される場合があります。1つの基準は、前述した1人当たり5000円以下です。また、アルコールを伴うケースでは、税務調査においても重点的に調べられる可能性が高まります。

4)交際費に使うために仮払いした金額は、全て交際費で処理していいの?

経営者や営業担当者などは、毎月、一定の交際費が必要な人に、一定額を仮払金として手渡すケースがあります。その後、使用用途を明確にして精算された場合は問題ありませんが、精算されなかった場合は、その仮払いした金額は役員や従業員に対する給与として取り扱われ、所得税の源泉徴収漏れが指摘されます。なお、この精算されない仮払いについては、「渡切交際費」といいます。仮払いを行った場合はきちんと経費精算し、領収書などによってその内容が確認できるようにしましょう。

5)新型コロナウイルス感染症拡大による特別な取り扱いはある?

新型コロナウイルス感染症拡大の影響について、補足をします。例えば、資金繰りが困難となっている得意先を支援するために生じた費用(金銭による援助など)は交際費に該当しません。そのため、これらの費用は、全額損金として処理することができます。

以上(2022年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Mariko Mitsuda

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