書いてあること

  • 主な読者:はじめて財務分析をする社員、あるいは新人を教育したい担当者
  • 課題:財務分析をするといっても、具体的に何から始めるのか分からない
  • 解決策:収益性・安全性・生産性の順に分析。他社との比較、時系列での比較も忘れずに

1 財務分析は意思決定の手助けとなる

ビジネスは意思決定の連続です。定性的な分析や主観的な思いも必要ですが、そこに定量的な分析も加えれば、意思決定の精度が上がります。そのために必要なのが「財務分析」です。財務分析とは、

「上がっている、下がっている」「良くなっている、悪くなっている」など、会社に対する仮説を財務諸表の数値を使って検証する

ことです。自社を分析して問題点を発見することもありますし、他社を分析して今後の取引の参考にすることもあります。「財務分析といっても、何から始めたらよいか分からない」という人も安心してください。基本的には、

収益性・安全性・生産性の順に分析

となるので、この記事でポイントを紹介します。

また、具体的な分析指標や計算式を確認したい人は、こちらのコンテンツをご覧ください。

2 収益性分析:十分な収益を獲得しているか

収益性分析では、最初に総合的な指標である「総資本経常利益率」を確認します。次に利益率と回転率に分解して、それぞれの指標を確認します。

利益率では、売上高総利益率・売上高営業利益率・売上高経常利益率を比較します。その際、例えば売上高営業利益率が低いことが分かれば、給料などの販売費及び一般管理費が膨らんでいないかを確認します。また、売上高経常利益率が低いことが分かれば、支払利息など営業外費用が膨らんでいないかを確認します。

回転率では、まずは総資本回転率を確認します。次に、売上債権回転率・棚卸資産回転率・有形固定資産回転率などで資産の効率性を確認します。例えば、棚卸資産回転率が低いことが分かれば、商品が販売されずに自社が過剰在庫を抱えていないかを確認します。

3 安全性分析:安全に経営を継続していけるか

安全性分析では、最初に流動比率・当座比率を比較します。流動比率・当座比率は1年以内の短期安全性を見る指標です。流動比率が高いにもかかわらず当座比率が低い場合、在庫などの棚卸資産が過剰となっている恐れがあるので確認してみます。また、手元流動性比率を見ることで、より現状に即した短期安全性が確認できます。

次に、固定比率・固定長期適合率を比較してみます。固定比率・固定長期適合率は、1年超の長期安全性を見る指標です。また、自己資本比率か負債比率を見て、負債に依存していないかを確認してみます。

4 生産性分析:効率良く生産できているか

生産性分析では、労働生産性・設備生産性・労働分配率の各指標から、それぞれの経営資源を効率的に利用できているか確認します。生産性とは、経営資源(インプット)に対する付加価値(アウトプット)の比率です。

付加価値を算出する方法はさまざまなものがありますが、中小企業庁方式が代表的です。この方式では、付加価値は売上高から商品仕入れ・原材料仕入れ・外注加工費などの外部購入費用を差し引いて算出します。

5 他社との比較、時系列での比較が大事

財務分析では、自社と他社とを比較してみることも大事です。自社の収益が10%伸びていることだけに注目すれば、自社の収益は好調といえますが、もし、同時期に他社が30%伸びているとしたら、自社の生産性は低いという仮説が立てられます。その仮説を検証するために、日本政策金融公庫「小企業の経営指標」や帝国データバンク、東京商工リサーチの企業調査などを活用してみましょう。

また、単年ではなく最低でも3年程度は時系列で確認しましょう。その結果、例えば、直近1~2年の間に指標が悪化していることが分かれば、最近変更した経営方法に問題がある恐れがあります。また、以前から指標が悪い状態にあることが分かれば、経営方法に問題があったことになります。

以上(2023年5月)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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画像:pixabay

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