書いてあること
- 主な読者:ソフトウエアの費用を抑えたいと考える経営者、IT担当者
- 課題:ソフトウエアを無償のものに切り替えたいが、トラブルなどが不安
- 解決策:導入企業の声を聞いたり勉強会に参加したりして情報収集する
業務で使うソフトウエアを無償ソフトウエアに切り替えることで、コスト削減ができるケースがあります。特に最近は、テレワークにより複数のデバイスを使う機会が増えていてソフトウエアのライセンス料も膨らみがちなので、ソフトウエアを見直すチャンスです。
無償ソフトウエアを導入する際に検討したいポイントを紹介します。
1 ソフトウエアは無償でも、見えないコストが発生する
中小企業の場合、無償ソフトウエアに精通する人材がおらず、運用体制も確立されていないことがあります。ソフトウエアが無償でも、それを使ったオペレーションの構築にはパワーが必要です。そのため、無償ソフトウエアを使うなら、ITサポートを行う企業に相談したり、ユーザー会などに参加したりして情報を集めることが不可欠です。
以降で無償ソフトウエアを使った場合のコスト削減効果などを紹介していきますが、その前に大切なことは、
- 運用体制を整備し、オペレーションにしっかりと落とし込まないと、後々、有償ソフトウエアを使うよりもコストが掛かってしまう
ということです。経営者はこの点を十分に認識する必要があります。
2 どれだけコストを削減できるのか?
無償というだけに、気になるのはコスト削減効果でしょう。例えば、マイクロソフトのオフィスソフトウエア「Microsoft 365 Business Standard」の1人当たりの月額料金は1360円で、従業員が50人なら年間81万6000円となります。
これを、グーグルの文書作成サービス「Googleドキュメント」や表計算サービス「Googleスプレッドシート」などの無償ソフトウエアに切り替えれば、ほぼコストを削減できます。実際に一部の自治体や企業が無償のオフィスソフトウエアを導入してコストを削減した事例もあります。簡易な文書作成や表計算しかしないなら、無償ソフトウエアで十分なケースがあります。
3 無償ソフトウエアの種類
1)フリーソフト/フリーウエア
一般的に、購入や利用における費用が掛からないソフトウエアを指します。例えば、キングソフトのウイルス対策ソフトウエア「KINGSOFT Internet Security」、アドビシステムズのPDF閲覧ソフトウエア「Acrobat Reader DC」などがあります。また、ガイアックスのグループウエア「iQube」のように、無償で利用できる代わりに人数を制限するものも多数あります。
その他、無償で利用できる期間や機能、容量を制限するもの、無償の代わりに広告が表示されるものもあります。前述の「Googleドキュメント」や「Googleスプレッドシート」の場合、さらに便利な機能を使いたければ「G Suite」という有償プランを用意しています。
2)オープンソースソフトウエア(OSS)
ソフトウエアをプログラムした記述(ソースコード)を公開するソフトウエアを指します。例えば、Mozilla Foundationのウェブブラウザー「Firefox」、日立製作所のBI(Business Intelligence)ソフトウエア「Pentaho」、グーグルのモバイル用OS「Android」、WordPress FoundationのCMSソフトウエア「WordPress」などがあります。
利用者はソースコードを書き換え、ソフトウエアに必要な機能を追加することができます。独自に機能を強化し、サポートを付与して有償ソフトウエアとして販売するといったことも可能です。
ライセンス料が掛からないものが多いことから「OSS=無償」と思われがちですが、必ずしも費用が全く掛からないわけではありません。導入や保守、新機能などの開発は外部に委託するケースが多く、これらに掛かる費用を考慮する必要があります。
多くのOSSが、世界中の開発者が集まるコミュニティーなどによって開発されています。バグの修正もコミュニティーが主導で対応するため、コミュニティーの円熟度がソフトウエアの品質向上や機能強化に大きく影響します。
4 目利きのポイント
1)互換性があるか
無償ソフトウエアに切り替える場合、これまで使っていたソフトウエアと同様にファイルを閲覧、作成できるかといった互換性を確認します。例えばマイクロソフトのオフィスソフトウエアを無償のオフィスソフトウエアに変えると、ファイルを閲覧できるものの文書や表のレイアウトが一部崩れたり、操作方法が違ったりするなど、使いにくいものもあるので注意が必要です。
2)無償のまま使い続けるか
無償ソフトウエアの中には、利用者数が増えたり機能を追加したりすると有償になるものが少なくありません。事業の拡大によってソフトウエアの利用者数が増えたり、どうしても必要な機能が有償版にしかなかったりする場合、有償ソフトウエアに切り替えることも検討すべきです。コスト削減を図る一方で、業務の効率性が損なわれないよう注意しましょう。
3)稼働環境を満たしているか
無償ソフトウエアが安定稼働するPCやサーバーのスペックを確認します。プロセッサやメモリーの推奨環境、ディスクの空き容量などを確認し、自社で使用するPCなどで問題なく稼働するかをチェックします。メニューが英語の海外製ソフトウエアの場合、日本語化ツールの有無も確認しておくのが望ましいでしょう。
4)他システムと連携できるか
自社で使用中の既存ソフトウエアとの連携を想定する場合、問題なく連携するかを事前に検証します。例えば、収集した数値情報を抽出、変換、格納するETLツールを介して分析ソフトウエアに移行できるか、無償ソフトウエアが備えるアダプターを介してデータ移行できるかなどを確認します。連携できない場合、別途ツールが必要かどうかも含めて代替案を検討します。
5)導入している企業はあるか
導入を検討している無償ソフトウエアの導入状況(企業、業種、規模など)を調査します。導入企業名が分かるなら、導入中や運用後の課題をヒアリングするとよいでしょう。特にOSSの場合、導入事例が公式ウェブサイトやニュース系ウェブサイトで数多く紹介されているので、参考にしましょう。IT担当者が上司などに無償ソフトウエアの導入を提言するときの資料にもなるので、他企業の動向も把握しておくべきです。
以上(2020年9月)
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画像:pexels