1 水道光熱費を削減せよ!
このシリーズでは、架空のサクゲン株式会社を舞台としたコスト削減の取り組みをシミュレーション付きで紹介しています。今回のテーマは「水道光熱費」で、コスト全般の削減シミュレーションは以下からエクセルをダウンロードしてください(ウェブで閲覧の場合に限ります)。ダウンロードしたエクセルに、御社の数字を入力して使うことができます。
水道光熱費の削減は、オフィスなどの小口需要家であれば小まめな節約が、工場などの大口需要家であれば契約の見直しが中心となります。
特に、電気料金の契約プラン変更や、いわゆる新電力(小売電気事業者)への切り替えは、電気使用量によって数百万円単位の削減効果を得られる場合があります。まずは、オフィスや工場などの所在エリアに、サービスを提供している新電力を調べておくとよいでしょう。
2 水道光熱費の削減方針
管理部長と製造部長が、水道光熱費の削減方針について話し合います。
管理部長:水道光熱費の削減方針をまとめましょう。
製造部長:水道光熱費の大半は工場で使っているものだが、これを削減すると品質に影響しかねないよ。
管理部長:それでしたら、契約プランや電力会社を変えるのはどうですか? 最近は、大手ガス会社などが新電力サービスを提供しているので、検討する価値はあると思います。
製造部長:そうだね。新電力は安定性などが不安だけど、見積もりを取ってみようか。
管理部長:分かりました。次に下水道料金ですが、当社の場合、業種の関係で減免措置を受けられるようです。月1000円以下と効果は少ないですが、申請するだけなのでやっておきましょう。
製造部長:いいね。あと、オフィスの冷暖房の電気代を節約できないかな? 設定温度を1度変えるだけでも十分な削減になるらしいよ。社員の体調が第一なので無理はできないけど。
管理部長:気がついたら誰かが勝手に温度を調節している状況ですからね。これを機に、基準温度を決めたほうがよいかもしれません。
製造部長:温度設定の好みは社員それぞれだからね。服装を自由にするとか、風が当たる位置を考えて、座席を変えるとかも視野に入れよう。
管理部長:分かりました。
この会話を受けて、削減方針を次のようにまとめました。
水道光熱費
- 定 義:会社で日々消費される水道・電気・ガスに対する支出
- 支出内容:上・下水道料金、電気料金、ガス料金、暖房灯油代など
- 削減方針:利用方法を変える、契約内容・契約先を変える、減免措置を受ける
- 削減目標:1200万円
さらに、提案があった削減方法のアイデアの取り組み難易度を決め、1年間の削減効果と削減に必要となる追加支出をシミュレーションして、取り組みの優先順位を決めました。具体的には次の通りです。
なお、図表中の削減効果は、サクゲン株式会社のシミュレーション条件によるものです。実際の効果は会社ごとに異なります。
3 水道光熱費の削減シミュレーション
1)冷房・暖房を抑制する(難易度:低)
冷房・暖房は、次のような方法で使用を抑制することで、コスト削減につながります。
- 使用していない場所では空調設備の電源を切る
- 空調が必要な場所では設定温度を決める
- 遮熱カーテン、遮熱ブラインド、窓ガラスに貼る遮熱シートや扇風機を使う
サクゲン株式会社では、30坪の日本橋オフィスで、夏場の4カ月間は冷房、冬場の5カ月間は暖房を使用しています。1日当たりの消費電力は30キロワットで、電気料金として16円/キロワットを支払っています。
空調の設定温度をこれまでよりも冷房は1度高く、暖房は1度低くした場合、1年間の削減効果は次のようになります。参考までに、環境省によると、冷房は1度高くすると約13%、暖房は1度低くすると約10%の消費電力量の削減につながります(環境省「エアコンの使い方について」)。
1万円≒(30kW×13%×16円/kW)×20営業日×4カ月+(30kW×10%×16円/kW)×20営業日×5カ月
なお、空調設備がある場合、法令上、社員が働く事務所内の室温が18度以上28度以下、相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければなりません。節電を過剰に意識するあまり、実施する取り組みが不適切なものにならないように注意しましょう。
2)電気料金の契約を見直す(難易度:中)
電気料金は、契約プランの見直しや、新電力への切り替えなどをすることで、コスト削減につながります。
サクゲン株式会社では、本社工場の電気料金として年間4500万円を支払っています。現在は地域を管轄している大手電力会社と契約していますが、これを2016年の電力自由化以降に電力事業に参入した小売電気事業者(いわゆる新電力)との契約に切り替えます。電気料金が10%削減された場合、1年間の削減効果は次のようになります。
450万円=4500万円×10%
新電力には「電柱や電線などの大型設備を持たない」「他の事業で収益を上げている」などの特徴があり、大手電力会社よりも比較的安価に電気を供給することができます。ただし、契約プランによっては逆に電気料金が高くなる場合や、別の電力会社へ乗り換えるときに解約金が発生する場合があります。さらに、運営会社が倒産、もしくは新電力事業から撤退する可能性もゼロではないので、切り替えの判断は慎重に行いましょう。
また、電気料金の契約見直しには、最大需要電力を抑制するという方法もあります。契約電力は、過去1年間の各月のデマンド値(使用電力量を30分ごとに計量し、そのうち月間で最も大きい値)によって決まります。つまり、電力需要が最も多い時間帯の電力消費量を抑えるピークシフトができれば、電気料金を削減できます。
実施に当たっては、デマンドコントロールシステムを導入するという方法もあります。デマンド値が目標値を超えそうなときに、警報などで知らせたり、自動的に電気機器を制御したりできます。
3)上・下水道料金の減免措置を申請する(難易度:中)
特定の地域・業種によっては、水道事業者に上・下水道料金の減免措置を申請することで、コスト削減につながります。
サクゲン株式会社では、本社工場における下水道の使用量が月平均2000立法メートルでした。
工場所在地の東京都八王子市が実施している減免措置(1カ月当たり50立法メートルを超え、200立法メートル以下の汚水排出量1立法メートルにつき5円を乗じて得た額に100分の110を乗じて得た料金の減免)を受けた場合、1年間の削減効果は次のようになります。
1万円≒[(200㎥-51㎥)×5円×(110÷100)]×12カ月
なお、この減免措置は各地方自治体で実施状況や基準、申請方法が異なります。東京都では社会福祉施設や公衆浴場営業などが上・下水道料金の減免措置対象となっており、パン製造小売業・クリーニング業・食品製造業などの生活関連業種については、下水道料金の減免措置対象となっています。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■東京都水道局「水道料金・下水道料金の減免のご案内」■
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/tetsuduki/ryokin/genmen/
4 水道光熱費を削減するときのポイント
1)社員に省エネ意識を浸透させる
「使用していない電気を小まめに消す」「必要以上の水量を抑えて蛇口をひねる」「冷蔵庫の中に不要なものを入れたままにしない」といった細かなことの積み重ねが、水道光熱費の削減につながります。
こうしたことを、管理者側が機械的に指示するだけでは、社員の間で徹底させるのに不十分だといえます。コスト削減だけでなく、SDGsなどの点からも省エネ意識の大切さを強調してみたり、細かい省エネの積み重ねが、コスト削減や環境保全にどのくらい貢献するのかを数値化して示したりすることで、社員への省エネ意識の浸透を図るのもよいでしょう。
2)省エネに関する専門家の知見を活用する
専門家の知見を活用するのも1つの方法です。例えば、省エネルギーセンターでは、中小企業などの省エネ・節電の推進をサポートするため、「省エネ最適化診断」や無料の「講師派遣(省エネ・節電説明会)」を実施しています。
3)残業時間の削減は、水道光熱費の削減にもつながる
例えば、1人の社員が毎日1時間の残業をした場合、残業代だけではなく、その1人のために照明やパソコン、空調など、1時間分のコストが毎日積み重なっていきます。部門内で協力し、定時に業務を終了させれば、毎日1時間分の水道光熱費が削減できることになります。
なお、水道光熱費以外のコストの削減アイデアは、それぞれのリンクから見ることができます。
以上(2025年2月更新)
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画像:Mariko Mitsuda