書いてあること

  • 主な読者:資金繰りに不安があり、もう一段のコスト削減を図りたい経営者や財務担当者
  • 課題:コスト削減の中でも、手始めに経費削減を行う際のポイントを確認したい
  • 解決策:まずは基本的な考え方や進め方に立ち返り、交際費の削減を検討する。交際費の支出を事前承認制にすることから始め、予算設定の方法を見直し、めりはりをつけた支出を行うようにしていく。公私混同をさせないための従業員への教育も重要

1 難易度別・コスト削減のヒント

難易度C(ルールの変更や制度の導入をすれば実行が可能)

  • 交際費の支出を事前承認制にする

難易度B(実行するための作業や準備が必要)

  • 税法上の扱いを確認する

難易度A(事業全体への影響の考慮、従業員の自発的な協力が必要)

  • 交際費の支出に、めりはりをつける
  • 交際費の予算設定の方法を見直す
  • 公私混同がないよう従業員教育を徹底する

2 交際費を削減する際の考え方

交際費は、企業が得意先や仕入先を接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待」といいます。)のために支出するものをいいます。

得意先や仕入先(見込み客も含む)の接待のための飲食費、送迎費、贈答費など

が該当します。よく会議費と混同されがちになりますが、会議費は社内での会議や、取引先との打ち合わせに関して使用した費用になります。

交際費は、「取引先への接待が、信頼関係の維持にどれだけ効果があったのか。もし、接待をしなかったら、信頼関係がどれだけ悪くなってしまうのか」など、目に見える費用対効果が分かりにくい場合があり、不要な支出の温床になりかねません。

そのため、交際費を削減するためには、予算の見直しや、事前承認制を導入するなどして、無駄な支出を防ぐ仕組みをつくることがポイントになります。

3 交際費を削減する際の具体的な方法

1)難易度C:交際費の支出を事前承認制にする

交際費の支出を事前承認制にする方法があります。接待交際の目的、場所、出席人数、予算などを記載した申請書をあらかじめ提出し、各部門長の決裁を得るようにすることで、無駄な交際費の支出を抑えることができます。

その際、部門長に一定の支出権限を認めると同時に、それに対する責任も負わせるようにすべきです。また、支出目的に応じた交際費の限度額をあらかじめ設定しておくとよいでしょう。

2)難易度B:税法上の扱いを確認する

交際費は、一定の支出については損金算入できるなどの特例措置があるものの、税法上、原則として損金に算入できません。そのため、損金に算入できる類似した費用と混同することがないように注意する必要があります。

例えば、事前承認制における決裁者に対して、ある程度税法上の定めについて教育するなどして、決裁時に判断できるようにしましょう。

ただし、税法上の取り扱いは判断に迷うケースも多いため、財務・会計の担当者や、顧問税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

3)難易度A:交際費の支出に、めりはりをつける

交際費の支出には、得意先、仕入先などとの関係性に応じ、めりはりをつけるのが大切です。

例えば、「取引金額」「取引年数」「将来見込み」などで序列を付け、重要性の高い得意先、仕入先には、一定程度手厚い支出を認める一方、さほど重要でない得意先、仕入先には費用を掛けない方法で接待を行う、または接待交際を行わないという判断もあるでしょう。

4)難易度A:交際費の予算設定の方法を見直す

交際費の予算を売上高や粗利益に対する比率で決めると、売上高や粗利益の伸びに比例して、予算が余計に膨らんでしまう可能性があります。その場合、比率ではなく絶対額で予算を決めるというのも1つの方法でしょう。

また、適正な交際費の水準を探る上では、同業種・同規模の企業と自社の交際費の支出額を比較してみることも大切です。

例えば、国税庁「会社標本調査」では、業種別・資本金階級別で見た「交際費等」の平均金額を把握することができます。ただし、交際費は、営業上必要不可欠であると判断した金額を支出するものであり、国税庁の統計データはあくまで1つの目安です。

5)難易度A:公私混同がないよう従業員教育を徹底する

前述したように、交際費は目に見える費用対効果が分かりにくいだけに、「誰に、どれだけ、どのような形で支出するか」の判断が、従業員の裁量に委ねられる部分が多くなります。そのため、費用対効果に対する意識が薄れがちで、場合によっては公私混同した使い方ができる余地も生まれかねません。

従業員には、交際費は「会社の代表として、会社に利益を誘導するために使う、会社の貴重なお金」という意識を持たせるように、教育を徹底する必要があるでしょう。

参考:交際費等の課税の特例の概要

「交際費等の課税の特例」として、2014年4月1日~2024年3月31日までの間に開始した事業年度において、法人が支出する交際費等の額のうち、接待飲食費の50%相当額までは所得の計算上、損金に算入することができます。

また、中小法人は、定額控除限度額800万円までの損金算入と、接待飲食費の50%相当額の損金算入のいずれかを選択適用できます。

中小法人とは、事業年度終了日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人をいい、普通法人のうち、事業年度終了日における資本金の額または出資金の額が5億円以上の大法人による完全支配関係がある子法人等を除きます。

以上(2023年2月)

pj40037
画像:pexels

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です