書いてあること
- 主な読者:資金繰りに不安があり、もう一段のコスト削減を図りたい経営者や財務担当者
- 課題:コスト削減の中でも、手始めに経費削減を行う際のポイントを確認したい
- 解決策:まずは基本的な考え方や進め方に立ち返り、通信費の削減を検討する。割安なサービスやプランに変更することから始め、IP電話といった新たな通信機能の導入へと広げていく
1 難易度別・コスト削減のヒント
1)郵送関係の通信費
難易度C(ルールの変更や制度の導入をすれば実行が可能)
- 大量の同一郵便物に対して「広告郵便物」を利用する
- 郵便物に「区分郵便物」を利用する
- 冊子を郵送する際には、クロネコDM便などを利用する
難易度B(実行するための作業や手続きが必要)
- 1000通以上の郵便物(形状・重量が同一)に「バーコード付郵便物」を利用する
2)電話関係の通信費
難易度B(実行するための作業や手続きが必要)
- 法人向けの携帯電話の割引プランを利用する
- 会議システムやSNSを利用する
難易度A(事業全体への影響の考慮が必要)
- IP電話を導入する
2 通信費を削減する際の考え方
通信費とは、社内外への連絡に必要となる費用のことで、主に郵送関係と電話関係に大別できます。郵送関係の通信費には、
郵便切手・はがき代、書留料金、小包郵便料金、ゆうパック料金、宅配便料金など
が該当します。また、電話関係の通信費には、
固定電話・携帯電話料金、FAX通信費、インターネット通信費など
が該当します。
通信費に該当するものの中には、郵送関係・電話関係を問わず、利用条件によって多種多様なプランを用意しているものがあります。各事業者間の競争が激しく、自社の利用条件によっては、有利な条件を引き出せる可能性もあるので、各社に相談してみるとよいでしょう。
また、電話料金やFAX通信費などのように、使えば使うほど料金が掛かる従量課金制のものがある一方で、インターネット通信費のように定額制のものもあります。通信費をコスト削減するためには、利用をなくす・減らすという基本的な削減策はもちろん、「従量課金制のサービスを、定額制のものに切り替える」こともポイントになります。
3 郵送関係の通信費を削減する際の具体的な手法
1)難易度C:大量の同一郵便物に対して「広告郵便物」を利用する
手紙やはがきのうち、「商品の広告」「役務の広告」「営業活動に関する広告」を目的とし、同一内容で大量に作成された印刷物の郵便料金を割り引くサービスです。差し出し通数などの条件によって、料金が8%から43%の割引になります。
広告郵便物の主な利用用途は、バーゲンセールの案内、商品やサービス紹介用のダイレクトメール、商品のセールス、新規開店の案内状などが挙げられます。
2)難易度C:郵便物に「区分郵便物」を利用する
手紙やはがきなどを出す際に、あらかじめ受取人の住所・居所を指定する郵便区番号ごとに区分して出すと、郵便物の料金を割り引くサービスです。差し出し通数や送達日などの条件によって割引率は異なります。例えば、受取人の住所・居所の郵便区番号ごとに区分し、差し出し通数が2000通以上1万通未満の場合、割引率は3%となります。
区分郵便物の主な利用用途は、企業や商店が定期的かつ大量に請求書、納品書を郵送する場合や、商品の広告を主な目的にしていない各種広報誌や通知書を送る場合などが挙げられます。
3)難易度C:冊子を郵送する際には、クロネコDM便などを利用する
ヤマト運輸が提供するクロネコDM便は、カタログなどを郵便受けまで届けるサービスで、普通郵便の感覚で利用できるのが特徴です。
なお、3辺の合計が60センチメートル以内、重量が1キログラム以下などのサイズの制約があります。送ることができるのは、信書以外のカタログやパンフレットに限られ、請求書、手紙、複数の個人情報を含むもの、サンプル品や試供品など荷受人の希望をもとにしたものなどは送れません。また、受け取り側の署名は不要であるため、相手に書類を確実に届けたい場合などの用途には向きません。
4)難易度B:1000通以上の郵便物(形状・重量が同一)に「バーコード付郵便物」を利用する
手紙やはがきのうち、所定のバーコードを記載した郵便物の料金を割り引くサービスです。差し出し通数(1000通以上)などの条件を満たしていれば、3%(往復はがきは1.5%)の割引となります。バーコード付郵便物の条件の詳細は、日本郵便のウェブサイトで確認することができます。
ただし、バーコードの印刷は自社で手配しなければなりません。そのため、担当者の業務負担が増え、バーコードの印刷費用などのコストが発生します。
4 電話関係の通信費を削減する際の具体的な手法
1)難易度B:法人向けの携帯電話の割引プランを利用する
携帯電話は法人向けの割引プランの利用によって、コスト削減を図る方法があります。契約する回線数に応じて通話料や通信料が割引されたり、各回線に付与される無料通話をグループ内で分け合えたりできるなどの特典があります。
格安スマートフォンや格安SIMを導入するのも手です。ただし、自社で複数台導入する場合、利用に当たって支障がないかを考慮しておきましょう。大手通信会社の法人向けのプランは、無料もしくは安価でセキュリティー対策や、紛失時のリカバリーなどの充実したサービスを提供していますが、格安スマホではサービスを絞り込んで通信料を下げているものもあります。
2)難易度B:会議システムやSNSを利用する
PCやスマートフォン向けアプリ・サービスの利用によって、コスト削減を図る方法があります。例えば、カメラやマイクを使ってコミュニケーションを図る会議システムの場合、カメラがなくても音声だけで通話することができます。スマートフォン向けの専用アプリがある会議システムなら、簡易な操作で通話も可能です。同様に、テキストや写真などを投稿するSNSの中にも、音声通話できるものがあります。
インターネット回線に接続するための費用は掛かりますが、同じ会議システム、同じSNS間の通話は原則無料となります。ただしIP電話と同様にインターネット回線を用いるため、十分にセキュリティー対策をしないと、悪意ある第三者に会話を盗み取られるなどのリスクが起こり得るので注意が必要です。
3)難易度A:IP電話を導入する
一般的な電話回線ではなくインターネット回線を利用する電話がIP電話です。同じIP電話会社を利用する契約者同士の場合、基本的に通話料が全国どこでも無料などとなっています。また、契約者以外の一般の固定電話や携帯電話への通話も、固定電話に比べて通話料が一般的に安価です。
なお、一部のIP電話の場合、050から始まる電話番号に変更したり、音質が通常の固定電話に比べて聞き取りにくかったりすることがあります。この他にも、セキュリティーが脆弱なIP電話が外部から乗っ取られ、国際通話が不正に発信されるなどの問題も発生しています。
IP電話を導入する場合、こうしたリスクを考慮した上で、一斉に切り替えるのではなく、通常の固定電話の回線を残して、段階的に進めていくのがよいでしょう。
以上(2023年2月)
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画像:pexels