書いてあること

  • 主な読者:エステティックサロンを開業したい経営者
  • 課題:業界の動向、法規制、開業にかかる費用が分からない
  • 解決策:開業にかかる費用を洗い出し、売上高などを予測できるようにする

1 業界の動向

1)エステティックサロンとは

エステティックサロンは、契約や施術に関するトラブルが絶えず、エステティックサロンについて、よいイメージを持っていない消費者もいます。

また、エステティックサロン業界では、長時間労働などが慢性化しているなど、その労働環境が問題視されています。近年では大手エステティックサロンが、残業代の未払いで自社の従業員に訴えられ話題となりました。エステティックサロンの経営には、高い技術を持つエステティシャン(従業員)の確保が欠かせません。エステティシャンの多くを女性が占める中、結婚、出産などの後もエステティシャンを続けられるような労働環境を整備することが求められています。

2)全国のエステティックサロン数 

全国のエステティックサロンの正確なデータは把握されていません。参考としてNTTタウンページ「iタウンページ」に登録されている「エステティックサロン」の件数を紹介します。都道府県別のエステティックサロンの件数は次の通りです。

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全国のエステティックサロンの件数は2万2731件となっています。また、富山県、福井県、長野県において人口10万人当たり件数が多くなっています。

3)大手エステティックサロンの動向

日経MJ「サービス業総合調査」によると、エステティックサロンの売上高ランキングは次の通りです。

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日経MJの分析によると、節約志向の高まりにより、売上高が伸び悩むエステティックサロンが増えているようです。

なお、回答が得られなかったため、「サービス業総合調査」では紹介されていませんが、エステティックサロンの有力企業として、ミュゼプラチナムと不二ビューティ(たかの友梨ビューティクリニック)を傘下に持つRVHや、TBCグループが挙げられます。

2 トラブルに対する業界の対応と課題

1)エステティックに関する相談件数の推移

国民生活センター「消費生活相談データベース」によると、全国の消費生活センターおよび国民生活センターに寄せられたエステティックサービスに関する相談件数の推移は次の通りです。

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エステティック業界は他業界に比べて、顧客とのトラブルが多い業界といわれています。全国の消費生活センターおよび国民生活センターには、解約や施術のクオリティなどに関するトラブルが寄せられています。

2)施術に関するトラブルへの対応ー業界団体が実施するエステティシャン資格制度

エステティシャンの技術の未熟さに起因するトラブルによる業界全体のイメージダウンを防ぐ対策として、業界団体などが資格制度を設け、高い技術を持つエステティシャンの養成を図っています。

現在のところエステティシャンに関する国家資格はありません。エステティシャンになるための試験や条件がないため、技術が未熟であってもエステティシャンとして顧客にサービスを施すことが可能な状態にあります。

こうした状況を受け、日本エステティック協会と日本エステティック業協会は、業界全体の信頼回復に向けさまざまな取り組みを進めています。その一つとして、「エステティシャンの技術育成」が挙げられます。

両協会では、それぞれ独自のエステティシャン資格制度を作り、エステティシャンの技術を育成することによって顧客に対する信頼を獲得し、業界全体のイメージアップを図ろうとしています。

3)契約関連のトラブルへの対応

契約関連のトラブルへの対応については、国で関連法が整備されています。

1.特定商取引に関する法律

「特定商取引に関する法律(特商法)」では、訪問販売やエステティックサロンが含まれる特定継続的役務提供など、消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に事業者が守るべきルールと、クーリング・オフなどの消費者を守るルールを定めています。

例えば、エステティックサロンの場合、契約書面を受領した日から8日間はクーリング・オフが可能です。事業者の側に不実告知または威迫行為があり、顧客が誤認または困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、クーリング・オフ期限が延長されます。また、クーリング・オフ期間経過後も、契約期間中であれば、いつでも、理由の如何を問わず中途解約が可能であることが定められています。

また、2017年12月1日には改正特商法が施行されました。この改正では、医療機関で実施される、シミの除去や脱毛などの美容医療契約についても、特定継続的役務提供の対象に追加され、クーリング・オフが可能になりました。美容医療は、エステティックサロンが窓口となり、シミなどに悩む顧客を提携する美容クリニックなどに紹介するケースが多々あるとされているため、改正動向についても押さえておく必要があるでしょう。

2.割賦販売法

2008年6月「特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案」が成立し、2009年12月1日に改正法が施行されました。この改正では、「クレジット規制の強化」が盛り込まれており、支払い能力の乏しい人に高額の割賦を組ませることを防ぐ狙いがあります。

エステティックサロンでは、定期的に施術を行うコースの場合、都度払いはできず、コースの契約時にまとめて料金を支払うのが一般的です。しかし、この場合、一度に支払う料金が高額になるため、頻繁に割賦販売が行われます。こうした特性から、今回の改正はエステティックサロンの業績に大きな影響を及ぼしました。

2009年の法改正後は、大手エステティックサロンを中心に、ウェブサイトなどを通じて、会員となる場合に必要な料金、コースの契約時に必要な料金、都度払いの料金を掲載するなど、料金の明瞭化を図っています。

3 エステティックサロンの開業

1)多様化する業態

専業のエステティックサロンは、さまざまな取り組みで顧客の拡大に努めています。「脱毛」「足やせ」のように、提供サービスを絞り込んでいるエステティックサロンがある一方で、ゲルマニウム温浴施設や岩盤浴など、さまざまなリラクゼーションサービスを提供する複合施設にすることで、集客力を強化しているエステティックサロンもあります。

また、入会金不要で、顧客が自分で機器を使ってマッサージなどをする、セルフ方式エステティックサロンや、訪問エステティックサービス(以下「訪問エステ」)を行っているエステティックサロンもあります。

2)兼業業者の乗り入れ

エステティックサロン以外を本業とする業者が兼業という形でエステティックサロン業界に参入する事例もみられます。例えば、美容院が差異化、収益向上策として参入したり、訪問販売化粧品メーカーの販売員たちによるサービスの提供などがこれに当たります。

一般的にこれらの店舗は小規模であり、店舗で行われるエステティックサービス自体も簡易で、低価格なのが特徴です。

3)メニューの差異化戦略

業態の多様化、兼業業者の乗り入れなど、エステティックサロン業界では競争が激化しています。このような状況下では、次に挙げるような、多様化する顧客ニーズに合った、ユニークなサービスを提供することが望まれます。

  • 「ホームヘルパー」など介護の専門知識および資格を有するスタッフをそろえた高齢者向けエステティックサロン
  • 働く女性の来店をターゲットとした駅構内のエステティックサロン
  • メンタルケア(対話などを通じて顧客の心の問題をケアすること)に重点をおいたエステティックサロン
  • 託児所を併設し、子どもを持つ女性も安心してエステティックサービスを受けることができるエステティックサロン

4 開業収支モデル

以降で設定した条件に基づき、開業収支シミュレーションを紹介します。

1)賃貸条件

  • 店舗面積30坪
  • 賃料:324万円(1坪当たり9000円。1カ月当たり27万円)
  • 保証金:162万円(賃料6カ月分) 
  •  

2)内装費など

  • 内装費:900万円(坪当たり30万円)
  • 設備費、備品:400万円(ベットやシャワールームなど:360万円、ガウン・タオルなど40万円)
  • エステティック機器430万円(フェイシャルエステ・痩身併用機80万円3台、脱毛機40万円2台、スチーマー20万円3台、その他50万円)

3)開業費用

  • 350万円(開店チラシ、店頭販売用化粧品など)

4)売上高

  • 4674万円(1万円未満は四捨五入)=1558万円(後述の「エステティック業の経営指標」(黒字かつ自己資本プラス企業平均)より)×エステティシャン3人

5)原価率

  • 17.1%(後述の「エステティック業の経営指標」(黒字かつ自己資本プラス企業平均)より)

6)人件費

  • 1729万円(1万円未満は四捨五入)=4674万円(売上高)×37.7%(後述の「エステティック業の経営指標」(黒字かつ自己資本プラス企業平均)より)

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5 経営指標

日本政策金融公庫「小企業の経営指標2018」によると、エステティック業の経営指標は次の通りです。

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以上(2019年6月)

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画像:pixabay

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