書いてあること

  • 主な読者:さらに成長するためのヒントが欲しい経営者
  • 課題:自分の考え方をバージョンアップするためにもがいている
  • 解決策:他の経営者の思考習慣も聞いてみる

1 「人をつなげる人」になる

ビジネスにはレイヤーがあり、それによって付き合い方が異なります。経営者同士のつながりは深く、トップセールスと呼ばれるように、その場で商談がまとまることがあります。また、他では聞けない貴重な情報を入手できることもあります。

そのため経営者にとって、ビジネスのつながりを広げていくことはとても大切な仕事です。しかし、つながりを広げるためにセミナーや勉強会に参加したり、紹介を求めたりしても、“当たり外れ”が大きいというのが実感でしょう。

経営者は、自らいい人と出会うこと、自分が大事にしている人にいい人を紹介してネットワークを広げること、そして何らかのビジネスを起こすことを加速させなければなりませんが、そのためには人とのつながり方を工夫する必要がありそうです。

今回は、「何としても『いい人』のコミュニティーに交じる」「いい人とは『愛ある人』のことである」「すごくいい、ちょっといい、ありがた迷惑」という3つを取り上げます。経営者が未来を見据える上で何らかのヒントになれば幸いです。

2 何としても「いい人」のコミュニティーに交じる

私の最近のアポイントは、ベンチャー界隈ではかなり有名な方(ここでは「Aさん」とします)からの紹介で多くが埋まります。紹介された人と1対1で会うこともあれば、会食で複数の人と会うこともあり、それなりの人数と会っています。

私が「すごいな!」と思うのは、Aさんから紹介される全ての人が「いい人」であることです。確率的には“よく分からない人”が交じっていてもおかしくないほどの人数を紹介されていますが、本当にいい人ばかりなのです。

Aさんは年間1000人もの経営者や学生などと会います。以前、「会う人はどのように決めているのですか」と聞いてみたことがあります。すると、「いい人から紹介された人とだけ会う。それだけです」と教えてくれました。

例えば、Aさんは、Zさんを紹介された場合、Zさんの人となりはもちろんですが、それ以上に誰からの紹介かを重視するというのです。Aさんが信頼するBさんの紹介ならZさんに会いますが、そうではないCさんの紹介では、Zさんには会わないということです。

また、いい人を集めるために重要なことは、「いかにして、いい人を集めるか」ではなく、「いかにして、良くない人を入れないか(排除するか)である」ということも教えてくれました。

いい人は、いい人とつながっています。そして、自分のネットワークがいい人だけであることを厳しく管理しているため、結果として、一人でもいい人と知り合うことが、人脈を広げる上でとても大切になるのです。

皆さんはいい人のコミュニティーに入っているでしょうか。セミナーや勉強会に参加することは大切ですが、実はいい人とつながることも大事なのです。となると、気になるのは、どのような人がいい人なのかということです。

3 いい人とは「愛ある人」のことである

お互いにプロフェッショナルのビジネスパーソンとして会う以上、その分野で“仕事ができる”のは当たり前のことです。そのため、仕事ができる人=いい人という図式は成り立ちません。

いい人のコミュニティーの中心になっている人がよく口にするいい人の特徴は、「愛がある」「『利他の心』を持っている」ことです。自分のことだけを考えず、世の中を良くしたいという信念を持って活動する人ともいえます。

そして、仕事ができるいい人(愛がある人)とつながると不思議なことが起きます。仕事ができるいい人は、相手の課題が分かります(この点は、次章で触れます)。そして、それを解決するのに役立ちそうな人を紹介してくれるのです。

実際、仕事ができるいい人や、その人から紹介された人と一緒にビジネスをすると、それまで取引先と行ってきたこまごまとしたやりとりがくだらないことに思えるほど、ビジネスをスムーズに進めることができます。

これは、相手が優秀だからという理由だけではありません。いい意味で、互いのことを信じて任せる部分が大きいので、細かく管理する必要がなく、進めやすいのです。相手を信頼しているため、相手の言動を受け入れやすいことも大きな理由です。

なお、愛や利他と聞いて「無償」をイメージする人が多いかもしれませんが、基本的にお金のやりとりはあります。ただし、仕事ができるいい人がお金をもらう目的は、通常のビジネスとは異なる面があります。

具体的には、「無理なく長く付き合うために、お金のことはきっちりしておく」、あるいは「お金をもらわない代わりに、自分が紹介する人ときちんと対話してほしい」といったことがお金をやりとりする主な目的であり、私欲のためではないのです。

4 すごくいい、ちょっといい、ありがた迷惑

ある大企業に“マッチングの神様”と呼ばれ、周囲から尊敬される人物がいます。私はご縁あってその方と出会い、何度か実際のマッチングの場に同席させていただく機会を得ました。

マッチングというと聞こえはいいですが、セッティングした人が「いい話になるから紹介するよ」と言いつつも、実は当人が気持ちいいだけで、その後のことはあまり考えられていないというケースが少なくありません。

そうした中、“マッチングの神様”は、とことん相手にヒアリングをします。同席していたとき、少し本題とそれているのではないかと感じたくらい、周辺情報も含めて本当に広い視点で相手のニーズを探ろうとします。

それも、2社のマッチングであれば交互に2社の立場に立って、「A社さんはこうすると好ましいわけですよね。それでB社さんはこの点を工夫したらニーズに合致しますか?」といった具合です。

こうして話をしていくと、場が次第に盛り上がってくるわけですが、“マッチングの神様”は途中、何度もクールダウンの時間を設けて、本当にA社とB社のためになるのか、また実現するために何が必要なのかを考えるのです。

マッチングの心構えを“マッチングの神様”に私が聞いてみたところ、「当事者にとって、マッチングというのは『すごくいい、ちょっといい、ありがた迷惑』の3つの段階がある。この段階を引き上げていくことが全て」と教えてくれました。

人と人とをつなぐことは、それを行う仲介者にとって、人から感謝される気持ちいい行為です。ただし、仲介者は、自分が人から感謝されるためや、自分の地位を高めることを目的に、相手のニーズについてよく調べずにつないではいけません。

こうした一人よがりな行為は、相手にとって「ありがた迷惑」なものです。「なぜ、自分が紹介されているのか分からない……」「ニーズは合っているが相手に全く権限がなく、世間話で終わってしまう」といったケースがこれに該当します。

人と人とをつなげる以上、相手にとって、最低でも「ちょっといい」、理想的には「すごくいい」マッチングを心掛けたいものです。「ちょっといい」マッチングとは、小さなビジネスにつながったり、その後も続く緩やかなご縁をいただいたりするものです。

これを超える「すごくいい」マッチングとは、大きなビジネスにつながることはもちろん、紹介された者同士が深い絆で結ばれることであり、そのきっかけとなるのが仲介者への信頼と感謝です。

仲介者のことを信頼し、また感謝しているのなら「あの仲介者を裏切ることはできないし、紹介してくれる人も大事にしなければならない」という思いになります。これが「すごくいい」マッチングに結び付くのです。

人と人を結び付けるためには、相手の課題を本当に分かっていなければなりません。もっとも、それは簡単に分かるものではありません。人間性を磨くことを含め、自分のビジネスのように真剣に取り組まなければ成し遂げられないでしょう。

以上(2019年6月)

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画像:unsplash

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