Q.復旧活動などのため、社員に時間外労働を命じることはできますか?

A.復旧活動などに必要な範囲で、時間外労働や休日労働を命じることができます。

1 災害時と平常時の時間外労働等の違い

被災したオフィスの復旧など、臨時の必要がある場合、会社は労働基準法第33条に基づき、復旧活動などに必要な範囲で、社員に時間外労働や休日労働(以下「時間外労働等」)を命じることができます。これを「災害時の時間外労働等」といいます。

社員が災害時の時間外労働等を行った場合、「36協定」(労働基準法第36条に基づく労使協定)による平常時の時間外労働等と同様、法定以上の割増賃金の支払いが必要です。一方、災害時は平常時の場合と異なる点があります。

例えば、平常時の時間外労働等は、36協定で定めた時間数や労働基準法の上限を超えて命じることはできませんが、災害時の時間外労働等には時間数の上限がありません。また、災害時の時間外労働等は、18歳未満の年少者や派遣社員にも命じることができます(妊産婦については、本人が請求した場合、不可)。

災害時の時間外労働等を社員に命じるには、事前に「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書」という書面を所轄労働基準監督署に提出し、許可を得る必要があります。

ただし、事態が急迫していて事前に許可を受ける時間がない場合は、事後の届け出でも問題ありません。

災害時の時間外労働等の許可基準は概ね次の通りです。

  • 経営上の必要は認めない(単なる業務の繁忙など)
  • 人命または公益を保護するための必要は認める(電気、ガス、水道などの修理、安全な道路交通の確保、大規模なリコール対応など)
  • 突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認める(サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応など)
  • 上記2.と3.については、他の事業場からの協力要請への対応を含む(人命または公益の確保のために必要な場合、協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合など)

この他、災害発生から相当の期間が経過した場合も、許可されないことがあります。

2 災害時の時間外労働等を命じる際の注意点

災害時は、仕事や生活の変化による疲労の蓄積などから、平常時よりも過重労働が発生しやすくなります。仮に、過重労働が原因で社員が健康障害を発症すると、安全配慮義務違反を問われることがあります。

また、災害によって社員の親族が負傷したり、社員の住居が損壊したりしている場合もあります。こうした事情を考慮せずに時間外労働等を命じると、後々社員とトラブルになる恐れがあります。

そのため、事前に社員の疲労や親族、住居の状態についてヒアリングするなど、慎重な対応が必要になります。

以上(2020年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:Maslakhatul Khasanah-Shutterstock

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