Q.二次災害を防ぐため、社員を自宅待機させることはできますか?
A.会社は、社員を自宅待機させることができます。ただし、給与(または休業手当)の支払いについてはケースにより異なります。
1 自宅待機を命じる主な方法は「休業」「休暇」
地震などの場合、建物の損壊などの一次災害が収まったからといってむやみに出歩くと、落下物による負傷などの二次災害に遭う恐れがあります。こうした場合、会社は二次災害を防ぐため、社員に自宅待機させることがあります。主な方法は、会社が休業を命じる方法と、社員が休暇を取得する方法の2種類です。
二次災害の恐れがある場合、会社は強制的に事業をストップしたり、通勤に危険が伴う社員に対し出勤しないよう指示したりするなど、休業を命じて自宅待機させることができます。こうした場合、仮に社員が出勤したいと言っても、会社は自宅待機を命じることができます。なお、自宅待機を命じる場合、休業手当の支払いが必要になることがあります。
社員に休暇を取得させて自宅待機させる場合、就業規則等に基づき、社員に休暇を申請してもらうことになります。休暇は本来、社員が自身の希望に基づいて取得するものなので、休暇を取得するよう社員に強制することはできません。
つまり、会社は社員に対し、休暇の取得を勧めることはできますが、社員がこれを拒んだからといって、懲戒処分など不利益な取り扱いをすることはできません。
なお、社員が休暇を取得して自宅待機する場合、会社がその間の給与を支払う義務があるかは、休暇の種類によって異なります。年次有給休暇の場合、自宅待機中の給与を支払う必要があります。一方、就業規則等で、災害時や病気療養時に付与する特別休暇を設けていて、その間は無給とする規定がある場合、給与を支払う必要はありません。ただし、年次有給休暇と特別休暇の両方を取得できる場合、どちらを取得するかは社員の希望によります。
2 オフィスでの待機命令と就業時間の関係
就業時間中に災害が起きた場合、会社としては、危険が取り除かれるまで、社員をオフィスで待機させることを考えるでしょう。ただし、その待機命令が必ず認められるとは限りません。
社員は労働契約に基づき、就業時間中は会社の命令に従う義務を負っているので、就業時間中であればオフィスで待機するよう命じても問題ありません。一方、就業時間外の行動については、原則として会社が介入することができません。従って、危険があるからといって、終業後もオフィスにとどまるよう命じることはできません。
では、社員に「オフィスにとどまるように要請する場合」はどうでしょうか? 会社としては、社員の安全を確保したいという思いがあります。しかし、災害時、社員は親族や住居が心配で、一刻も早く帰宅したいと考えます。難しいところですが、オフィスでの待機要請にそれほどの強制力はないと考えるべきでしょう。
以上(2020年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)
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