Q.災害時の財務対策として、最初に何を考えるべきですか?
A.災害により事業がストップした場合、事業再開までに必要な資金はいくらかを把握し、その資金はどうやって充当・調達するのかを事前にまとめておく必要があります。
1 事業再開のために必要な資金の把握
財務対策は、被災直後に表立った問題となりにくいため、後回しにされがちな災害対策です。しかし、防災や減災に対する具体的な対策は取っていても、いざ災害が起きると想定外の被害が生じ、復旧費用などで資金繰りが急速に悪化する恐れもあります。
また、災害により事業がストップした場合も、人件費などの支払いはしなくてはなりません。こうした場合、復旧過程においては資金が必要になります。
一般的に、緊急時において、月商(月の売上高)の1カ月分を目安に準備しておくとよいといわれていますが、実際は業種や資産の所有状況など、会社ごとの事情や災害規模によって異なります。今、会社が被災し、事業がストップした場合、再開までに必要な資金(事業がストップした場合の運転資金(キャッシュフロー)と復旧に必要な資金)はいくらかを、正確に把握しておかなければなりません。
例えば、中小企業庁「中小企業 BCP策定運用指針」の財務診断モデルでは、必要事項を入力することで、災害時におけるキャッシュフローや復旧費用が予測できます。
2 事前に確認したい4つの資金
1.自己資金(現金預金)
定期預金などのように、払い戻しに一定の手続きが必要なものは別途把握しておきましょう。また、小口現金の紙幣が被災により破れたり、燃えたりした場合、損傷状況によって価値が全額、半額、失効の3パターンに分かれます。業種などにもよりますが、現金の保有は少額に抑えるのが無難です。
2.受取保険金
加入している保険が、どのような被災状況時に活用でき、どの程度の期間で保険金が支払われるのかを把握しておきましょう。
3.有価証券などの資産売却による資金
決算期だけでなく定期的に時価を把握し、どの程度の資金になるのかを把握しておきましょう。また、売却手続きや、売却時に考慮しなければならない特有の背景などもまとめておきましょう。
4.金融機関などからの調達資金
災害時などに利用できる、(政府系)金融機関や信用保証協会の制度があります。事前に融資条件や手続きを把握しておきましょう。また、オーナーは経営者個人からの借入も考えられます。
以上(2020年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之、税理士 中川昌紀、CFP(日本FP協会認定) 辻野顕子)
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画像:Maslakhatul Khasanah-Shutterstock