6月になり、2019年上半期のヒット商品番付が公表されました。東の横綱には新元号「令和」が、西の横綱にはスマホ決済サービス各社が行ったキャンペーン「スマホペイ還元」が上がりました。

この他にも、各種メディアでは、改元のあった今年の上半期にふさわしい、新しい発想の商品やサービスが多数報道されました。例えば、普通は置いて使うはずのプリンターを、手で持って自分で動かせるものに変えた「リコーハンディープリンター」。ビルなどにあるのが一般的なオフィスを、エキナカに設置した「ボックス型シェアオフィス」。こうした、これまでの常識を変えたものが「新しい発想」として注目されたのでしょう。

社会や人々のライフスタイルがめまぐるしく変わりゆく現代では、商品やサービスもそれに合わせて進化させていくことが求められます。ただし、私は、「新しい発想」を生み出す源泉自体は、いつの時代も変わらないと思っています。

それは、「お客さまが本当に望んでいることは何かをとことん考え抜く」ことです。これは、かなり難しいことでもあります。本当に望んでいること、困っていることの多くは、実は本人も分かっていないからです。私の知っている経営者は、こう言っています。「本人も分かっていない、潜在的な本当の困り事を見つけて解決することが、自分の一生を懸けた仕事である」。そのため、彼は、使える限りの時間をお客さまと一緒に行動し、お客さまの話を聞くことに費やしています。

当社も同じです。お客さまが普段、どのようなことを考え、どのような行動を取っているか。喜びや悲しみを感じるのはどのようなときか。そうしたことを聞き、お客さまの表情をよく見て、そこから「本当に望んでいることは何か」を考え抜く。それこそが、私たちがやるべき一番大切な仕事です。

皆さん、ぜひ、お客さまの顔をよく見てください。連絡を取り、できるだけ直接会って話を聞きましょう。そうしなければ、お客さまの困り事を見つけることはできません。お客さまのほうから要望を言ってもらい、その後に対応するようでは遅いのです。言われてからやることは、作業にすぎません。しかし、言われるより前に実践すれば、それは、お客さまにとって「うれしいサービス」になるでしょう。

皆さんの中には、「お客さまと話をしているが、お客さまのことがよく分からない」という人もいるかもしれません。それは、お客さまの思っていることをしっかりと聞き出せていないからです。「なぜそうするのか、そう思うのか」「なぜ他の選択肢を選ばないのか」。こうしたことを質問し、お客さまの話はとことん掘り下げることが大切です。掘り下げた先に、きっと、お客さまの本当の思いが見えてくるでしょう。

「新しい発想」は、お客さまに思いを寄せ、考え抜くことで生まれます。いつの時代も、「答えはお客さまの中にある」と私は考えます。

以上(2019年7月)

pj16968
画像:Mariko Mitsuda

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