先日、異業種交流会に参加したときのことです。その交流会には、日本人だけでなく、海外のビジネスパーソンもたくさん参加していました。私は大勢の海外の方と話をしたのですが、特に、ある1人の方が印象に残りました。
その方は普段は英国で生活しており、日本語をほとんど話せないようでした。しかし、私に、「ごめんなさい、日本語、話せないです」とカタコトの日本語で言ってくれたのです。一方の私も、英語を話せません。そこで、「I am sorry,I cannot speak English.」と、その方に、つたない発音の英語でお伝えしました。
その方も私も、相手の国の言葉を話せないことを申し訳なく思い、そのことを、「どうにかして相手の国の言葉で伝えようとする」という状況でした。話せないと言いつつ、お互いに相手の国の言葉をなんとか使っていることがおかしくなり、二人で顔を見合わせて笑ってしまいました。
同時に、私はとても温かい気持ちになりました。二人とも、とっさに、母国語ではなく相手の国の言葉で気持ちを伝えようとしたため、言葉を話せなくても、「コミュニケーションを取りたい」という気持ちがお互いに伝わったからです。
その方と私は笑い合って、二人で固い握手を交わしました。その後は、通訳を介しながら、とても有意義な情報交換をすることができました。次回会うときまでに、その方は日本語を、私は英語を話せるようになろうという約束もしました。
皆さんは、この出来事を聞いて、どのように感じますか。私は、今回、人と人とがつながる際の大切なことを1つ学んだような気がしています。
人とつながるには、相手に対して、「あなたのことを知りたい、あなたと仲良くなりたい」「あなたのことを尊重している」という気持ちを持つこと、そしてそれを相手に分かるように行動で示すことが大切なのではないでしょうか。
その方も私も、最初からお互いに母国語だけで話をしていたら、ここまで仲良くならなかったかもしれません。不慣れながらも、「相手の国の言葉で伝えようとした」ため、気持ちがお互いに通じ合い、仲良くなることができた。私は、そのように捉えています。
このことは、日本人同士や社内の人同士でも同じです。「仲良くなりたい」「尊重している」という気持ちを行動で示せば、それはきっと相手に伝わります。特に、「相手が興味を持っていることを話す」「相手と同じキーワードを使って話す」といった行動は、相手に「仲良くなりたい」という気持ちが伝わりやすいかもしれません。
そこでこれから皆さんも、例えば人に会う前には、その人の愛読書や最近興味を持っていそうなこと、キーワードについて情報を集め、「その人と同じ目線で話す」ことを実践してみてください。
大切なのは、「気持ちを示すこと」です。格好をつけず、本気の気持ちを行動で示せば、相手にきっと伝わります。
以上(2019年6月)
pj16962
画像:Mariko Mitsuda