私は若い頃から、ヴィンテージの服を扱っているお店めぐりを趣味にしています。掘り出し物のシャツやユニークなデザインのジャケットなどが発掘できる楽しみはもちろんですが、私が一番ワクワクするのは、店員さんの話を聞いているときです。

ヴィンテージ物を扱っているお店の店員さんは、服などにこだわりを持っている人が多く、私が知らない服にまつわるうんちくなどを教えてくれます。そして、中でも特に、店員さんが目を輝かせて話してくれる一着一着の服との出合いの話は、面白くて仕方ありません。

「店員さんがどのようにしてその服を見つけることができたか」「店員さんにとって、その服にはどのような思い出があるか」という「店員さんと服のストーリー」に恐らく魅せられているのだと思います。

日ごろのビジネスにおいても、ストーリーに魅せられることがあります。商談相手と話をしているうちに、商品を生み出すまでの苦労や工夫といった相手のストーリーが分かり、その商品に対する興味や好感度が一気に高まる。こんな経験を皆さんもしたことがあるのではないでしょうか。

ストーリーに魅力を感じるのは、そこにその人の思いや感情が込められていて、その人の内面も少し分かるような気がするからです。つまり、ストーリーには、共感を呼び、人との距離を縮める効果があるのだと、私は考えています。

私は、皆さんにも、周りの人に自分自身のストーリーを伝えられるようになってほしいのです。そうすることで、周りのさまざまな人との距離が縮まり、皆さん自身の世界も広がっていくはずです。特に、皆さんの中で、お客様など社外の人との関係をうまくつくれないと悩んでいる人がいたら、「ストーリーを伝える」ことをぜひ実践してもらいたいと思います。

難しく考える必要はありません。例えば、日々の仕事の中の出来事で考えてみると分かりやすいでしょう。商品をつくるとき、当社ではどのようにアイデアを出しているのか。皆さん自身はそこにどのような思いを持ち、どのように関わっているのか。苦労したこと、工夫したことは何なのか。商品を使ったお客様から、商品についてどのような感想をもらったことがあるのか、それについて皆さん自身はどのように感じているのか。こうしたことは、全て、皆さん一人ひとりのストーリーなのです。

ストーリーを伝えられるようになるには、訓練と慣れが必要です。そこで皆さんに提案です。明日から順番に、朝礼でスピーチをしていきましょう。テーマは、仕事のことでもそうでなくてもかまいません。皆さんが実際に経験したことと、その経験から何を感じたか、どのような思いを持ったかを発表していきましょう。世界に1つしかない皆さんのストーリーを、ぜひ聞かせてください。楽しみにしています。

以上(2019年6月)

pj16961
画像:Mariko Mitsuda

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