書いてあること
- 主な読者:電子メールを使った経験がほとんどない新入社員
- 課題:ビジネスの電子メールには独特の文化があるが、それが正しいのか分からない
- 解決策:メール文学を踏まえつつ、「簡潔に、分かりやすく、丁寧に」が基本
最近、プライベートでは電子メール(以下「メール」)を使うことはなくなったけど、ビジネスではまだまだ主力の連絡手段だ。まぁ、電話するよりは気が楽だけど、「いつもお世話になっています」とか、「何卒よろしくお願い申し上げます」みたいな独特な言い回しは慣れないな~。ちょっとマイルドにするために絵文字を使いたいけど、さすがにまずいかな……。
1 メールはまだまだ第一線
最近はチャットツールなどさまざまな連絡手段がありますが、メールがビジネスにおける主力の連絡手段であることは変わりません。業界や職種によっては「メール離れ」が進んでいますが、全体から見るとまだまだ少数派です。
社会人になった皆さんは、メールの“お作法”を学ばなければなりません。メールは長く使われてきたツールなだけに、独特の進化を遂げた部分があります。この辺りについてもある程度は理解し、正しいマナーを身に付けましょう。
2 メールの宛先設定は3種類
まず、メールの宛先には次の3つがあります。
- TO:メインの送り先。TOのアドレスは全員が確認可能
- CC(Carbon Copy):念のための送り先。CCのアドレスは全員が確認可能
- BCC(Blind Carbon Copy):伏せた送り先。BCCのアドレスは送り主だけが確認可能
例えば取引先にメールを送る場合、CCに先輩を入れて「本件は先輩も承知しております」ということを相手に伝えたりします。あるいは関係者が多いとき、メンバーをまとめてCCに入れることもあります。BCCには、別の先輩など周囲に内緒で知らせたい相手を入れます。あるいは一斉送信メールで、送信先のアドレスを隠したい場合にも利用されます。
これが基本的な使い方ですが、ワンランク上を目指すなら次のポイントを押さえてください。
- 何でもかんでも先輩をCCに入れない
- 関係者が多いときはメーリングリストを作る
先輩をCCに入れれば安心とばかりに、何でも先輩をCCに入れないようにしましょう。大量のメールが送られる先輩に迷惑をかけるからです。また、こちらの担当者が多いと、相手は一人ひとりのアドレスを登録しなければならず、これが本当に面倒です。メーリングリストを作り、「こちらに送っていただければ、関係者が確認できます」とスマートにいきたいものです。
3 平成時代の「メール文学」
本来、メールはカジュアルなツールですが、手紙の代わりという意識があったのか、やたらとお堅い表現が使われます。例えば、
- いつもお世話になっております。◯◯(会社名)の□□(名前)です。
- 先日はありがとうございました。
- ご多用中に恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
は、本当によく使うフレーズです。しかも、同じ相手とメールをやり取りする場合、2通目からは、
- いつもお世話になっております。「◯◯(会社名)の□□(名前)です。」
と、「 」でくくった名前の部分を省略してもよいという暗黙の了解があったりもします(人によります)。最近ほとんど見かけなくなりましたが、1行当たりの文字数を合わせて右端を揃えてくる「職人」もいました。いずれにしても、「郷に入っては郷に従え」ということで、先輩にメール本文のお作法を確認するとよいでしょう。
ただし、ご用心。「メール文学」の最大の難点は、妙に丁寧になりすぎて、何を言いたいのか分からなくなってしまうことです。ビジネスは、次に何をすべきかを明確にしなければ停滞します。そのため、メールの内容についても、
- 確認して欲しい
- アポイントを取りたい
- 連絡が欲しい
など、相手に対して何を求めているのかが明確な文章にしましょう。
4 最もありがちなミスは「添付漏れ」
メールで最も多いミスは添付漏れでしょう。早く送りたいという気持ちもあり、ついつい添付を忘れてしまいます。添付ファイルがあるときは、本文を入力するよりも先にファイルを添付すれば間違いありません。また、自社と相手とのルールで問題がなければ、メールに添付するのではなく、クラウドのドライブなどでの「ファイル共有」を提案するとよいでしょう。
ここでもワンランク上を目指すなら、次のポイントを押さえてください。
- 「PPAP」(パスワード付きzipのメール送信)は、できるだけやらない
- 重たい添付ファイルを送らない
PPAPとは、パスワード付きのzipファイルをメールに添付して送信し、直後に解凍パスワードを書いたメールを送信する方法です。PPAPという通称は、次の言葉の頭文字を取ったもので、以前に人気を集めたお笑い芸人のネタになぞらえて揶揄(やゆ)されています(日本情報経済社会推進協会に所属していた大泰司 章氏(おおたいし あきら。現・PPAP総研所属)によって問題提議・命名)。
- Password付きzipファイルを送ります
- Passwordを送ります
- An号化(暗号化)
- Protocol(プロトコル、手順)
ここでは細かく触れませんが、PPAPはセキュリティー上、ほとんど意味がありません。にもかかわらず、受信した側はいちいちファイルを解凍しなければならず、とても面倒です。PPAPを行う会社はまだまだ多いですが、こうした問題があることを覚えておいてください。
また、やたらと重たいファイルを添付するのも避けたほうがよいです。「写真がいっぱいで、立派な資料」でも、容量が重すぎては受信する側は迷惑です。クラウドのドライブやファイル転送サービスを使うようにできたらよいですね。
5 分かりやすさを意識する
メールは、件名も本文も分かりやすさが大切です。件名を見て、用件や送信者が分かると理想的です。複数のテーマでメールをやり取りする際は、件名に【テーマ名】などを入れておくと分かりやすく、後で検索する際も便利です。
本文についても、謝罪など特別な場合でなければ簡潔に記します。挨拶やアイスブレークなどを入れる際は、本件との間に改行を入れるなどして区別をしましょう。
また、メールの最後に署名を入れることがあります。かつて凝ったデザインの署名が流行りましたが、今ではそこに感動する人はおらず、シンプルなものが主流です。所属、氏名、連絡先などが分かれば十分です。
それと、「これだけはやらないでください!」というお手付きを紹介します。これをやると、関係者が混乱するので、気を付けてください。
- 1通のメールに複数のテーマを書く(しかも件名では内容が分からない)
- 【テーマA】の件名でやり取りしているのに、【テーマB】の話を加える
- TOと本文の宛先が複数人列挙されており、誰が担当者なのか分からない
- CさんとDさんのやり取りに、特別な事情なくCCだったEさんが割り込んでくる
6 メールの「時間」に配慮する
メールについて意識しておきたい時間は2つです。
1つ目は送信時間です。送信側としては、早く送ってしまいたいという気持ちがあるものの、あまり早い時間や遅い時間の送信は避けましょう。「こんな時間から(まで)働いているの?」と相手を驚かせてしまいます。それに、相手がメール受信時にバイブレーターなどの設定をしていることもあり、寝ているところを起こしてしまうかもしれません。
2つ目は返信までの時間です。メールを受け取ってから返信までに、あまり時間がかかるのは良くありません。最長でも1日以内には返信したいところです。返信までに時間がかかりそうな場合は、まず「確かにメールを受信していること」と、「回答までに一定の時間を要する」ことを記したメールを送っておくようにしましょう。
7 誤送信してしまったら素早くフォローを
メールの誤送信は誰にでも起こり得るトラブルです。送信前のチェックに焦っていたら甘くなります。最近のメーラーは便利で、送信先候補をサジェストしてくれたりしますが、そこで関係のないアドレスを選択してしまう恐れもあります。
とにかく、メールの誤送信に気付いたらすぐに先輩に報告してください。そして、先輩の指示に従って、送信先にすぐ電話をしておわびとメールの削除などを依頼します。電話がつながらない場合、おわびのメールを送信します。
最初のうちは、送信前に先輩に確認してもらうとよいでしょう。また、PPAPではなく、相手とオフライン(口頭など)でパスワードを決めておくのも一策です。
以上(2024年12月更新)
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画像:Mariko Mitsuda