おはようございます。皆さん、今日の朝食は何でしたか。私はけさ、マクドナルドでハンバーガーを食べました。ハンバーガーを頬張ると、子どもの頃に初めて食べたときの思い出がよみがえるようで、とても懐かしい気分になりました。
マクドナルドが日本で初めてオープンしたのは今から50年前、1971年のことでした。マクドナルドのハンバーガーは、なぜ50年もの間、日本人に愛され続けてきたのでしょうか。その理由を探るため、今日は、日本マクドナルドの創業者である藤田田(ふじたでん)氏の話をします。
日本マクドナルドの創業前、本場米国のマクドナルドのリーダー、レイ・クロック氏の下には、日本の大手商社などから、チェーン展開の依頼が多く寄せられていました。大手商社などの中には、ハンバーガー・ビジネスを、自社が手掛ける事業の1つぐらいにしか考えていないところも多く、クロック氏はこれらの依頼を全て断っていました。しかし、藤田氏と出会い、「彼ならこのビジネスに本気で取り組んでくれる」と確信したクロック氏は、日本でのチェーン展開を自ら依頼します。これが、日本マクドナルド誕生のきっかけです。
藤田氏がハンバーガー・ビジネスをやると言い出した頃、藤田氏の周りでは「パン食の習慣がない日本人に、ハンバーガーは受け入れられない」という考え方が主流でした。藤田氏がすごいのは、この“常識”を、真っ向から覆した点です。
藤田氏は、日本人の米の消費量が年々減少しているという統計から、食の西欧化がさらに進むことを予見し、国内で店舗を急速に展開します。さらに、子どもにターゲットを絞ることで、「彼らが成人して親になったとき、日本人の食習慣にハンバーガーが定着する」というプランを立て、この思惑を見事に的中させます。藤田氏は、「パン食の習慣がない日本人に、ハンバーガーは受け入れられない」という“常識”を疑ってかかっただけでなく、自分が思い描く未来を“常識”にしてしまったわけです。
さて、私は日ごろから皆さんに対し、会社の新しいビジネスについて、積極的に意見を出してほしいとお伝えしています。幸い意見を出してくれる人が多く、そのことには感謝しているのですが、私が「このビジネスをやろうと思った根拠はある?」と質問すると、言葉に詰まってしまう人がほとんどです。もしかしたら、「何か新しいことをやらなければ……」という焦りだけが先走っているのかもしれません。まずは、自分や会社、顧客や市場を取り巻く状況について、見落としている情報がないかチェックしてみましょう。客観的なデータがあれば、何が会社にとって必要なのかが分かるはずです。そして、何かビジネスチャンスを見つけたら、今度はそれを確実な未来にするためのプランを考えてみてください。難しいとは思いますが、“常識”を疑うだけでなく、覆すまでを私は皆さんに期待しているのです。
以上(2021年5月)
pj17055
画像:Mariko Mitsuda