書いてあること
- 主な読者:新品以外の商品で、顧客の開拓やブランディングを検討する経営者
- 課題:二次流通市場を利用し、販路拡大や自社商品のブランディングをしたい
- 解決策:二次流通市場での取り組み例、成功のコツを知る
1 アプリや「オフプライスストア」が二次流通市場で台頭
近年、不用になったブランド品などをスマホで出品・販売する「フリマアプリ」が注目を集めています。代表的なのはメルカリやヤフオク!などで、「タンスの中のモノを処分したい」「ブランド品を安く買いたい」などの理由から利用者が増えています。新品の状態で消費者の手に届く一次流通市場に対し、こうした取引は「二次流通市場」と呼ばれます。
二次流通市場を通じた取引には、アパレル業界を中心にメーカーも期待を寄せています。一次流通市場で販売が難しくなった商品は値下げ販売し、最終的に廃棄処分するのが一般的です。とはいえ、安易な値下げ販売はブランド価値を下げることになりかねません。特に、アパレル業界では、売れ残った商品は、まだ着られるものでも廃棄処分してきました。一方、世界的な環境意識の高まりの中、こうした商習慣に批判が集まるようになり、一部のメーカーでは、自ら二次流通市場に参入する動きもあります。
二次流通には、大まかに以下のようなものがあります。特に昨今では、今回紹介するプラットフォームと、オフプライスストアの存在感が高まってきています。
2 各社の取り組み・狙い
今回紹介する各社の取り組みを「想定する顧客(一般消費者向け、法人向け)」、「目的(自社のブランディング・商品価値の維持、在庫処分)」で分類すると、次のようになります。
1)リーバイス:自社商品の中古品販売プラットフォーム「LEVI’S SecondHand」
デニムの世界的ブランドのリーバイスは、米国国内で自社の中古品の販売プラットフォームを開設しました。「LEVI’S SecondHand」は、自社の店舗に顧客が持ち込んだ商品を、状態やアイテムに応じて5~35ドルのギフトカードと交換します。再販不可能な状態の商品でも、リサイクル用の素材として引き取ります。同社と提携する企業がクリーニングを行い、プラットフォーム上で再販されます。
同社の取り組みは、自社の商品を責任を持って引き取り、再販することで、「循環型社会」の実現に貢献するとともに、ギフトカードとの交換で自社商品のリピート購入につながる取り組みといえます。
2)アンドブリッジ:出店攻勢のオフプライスストア「&Bridge」
「タケオキクチ」などのブランドを傘下に持つアパレル大手のワールドは、小売業や製造業などの在庫評価や動産担保融資(ABL)などを提供するゴードン・ブラザーズ・ジャパンとアンドブリッジを設立し、余剰在庫となった商品を定価の数十%オフで販売するオフプライスストア「&Bridge(アンドブリッジ)」を展開しています。
アンドブリッジでは、アウトレットモールにブランドごとに出店する従来の戦略と一線を画し、ワールド傘下のさまざまなブランドの商品を一つの店舗で取りそろえ、アクセスしやすいショッピングセンターや都心部に出店する他、オンラインストアも展開しています。
ワールドの2021年3月期の決算資料によると、今後も出店を加速し市場での認知度向上を図っていく方針です。同社はアンドブリッジなどの「デジタル事業」セグメントの売上構成比を、現行の5.3%から7.5%へ引き上げる計画です。
3)ファイン:ブランドタグを付け替えるオフプライスストア「Rename」
ブランドの価値を維持したまま価格を大幅に引き下げて販売するオフプライスストアと対照的に、あえて「ブランドタグを取る」オフプライスストアも登場しています。
ファインが運営するオフプライスストア「Rename(リネーム)」は、元のブランドのタグを切り取り、リネームのタグに付け替えて再販します。このメリットとして、タグを切り取って再販することで、ブランドの価値を維持しながら在庫を処分できます。顧客は、ブランド名に左右されずに、優れたデザインで高品質な商品をお手ごろ価格で買うことができます。
リネームは、これまでに150以上のブランドを取り扱っており、有名ブランドの廃盤になったライセンス商品の取り扱い、破産したメーカーの在庫の現金化なども手掛けています。
また、同社は工場で余剰となった生地を工場の閑散期に服として製造し販売する「Rename X(リネームクロス)」も展開しています。
4)エクイップ:中古計測器のマーケットプレイス「Ekuipp」
エクイップは、主に製造業で使用される中古計測器・測定器のオンラインマーケットプレイス「Ekuipp(エクイップ)」を運営しています。製造業では、計測器などが使用されないまま倉庫内に保管されたり、廃棄されたりすることが多くあります。
出品者はEkuippに出品することで機材を現金化でき、購入者は流通量や用途が限定される機材を「掘り出し物」として安価に調達できます。また、提携企業による校正(計測の狂いの調整・修理)を依頼することもできます。出品時には出品者の社名は表示されないため、秘匿性をある程度保持したまま、機材の売却を行うことができるのもメリットの一つといえます。
5)日本メディックス:自社商品の「オフィシャル中古」
前述のリーバイスのように、法人向けの自社の中古品を買い取り、「お墨付き」として二次流通市場へ送り出す企業もあります。
医療機関の製造・販売や輸入を行う日本メディックスは、オークションサイトの登場などで、品質を保証されていない中古医療機器の流通が増加していることなどを受け、耐用期間内の自社の中古品に検査やメンテナンスを施し、「オフィシャル中古」として販売しています。また、品質を保証するため、全ての中古品に半年間の無償修理期間を設けています。
品質不良が人命に関わることもある医療機器を自社で保証することで、保証外の中古品による自社へのリスクを低減しつつ、自社商品の評判を維持する取り組みといえるでしょう。
3 二次流通市場の関連動向
1)推定市場規模
環境省の「平成30年度リユース市場規模調査報告書」によると、国内の二次流通市場(リユース品)の市場規模は、以下のように推定されています。
直近の市場規模の推定はまだ公表されていませんが、2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、外出の機会や通勤することが減った人がスーツを出品したり、収入が減少した人が不用な日用品などを出品したりする動きも出ており、市場のさらなる拡大が想定されます。
2)利用者の動向
二次流通市場を利用するユーザーは、中古品の購入時にどんなことを重視しているのでしょうか。メルカリのプレスリリース「2020年度フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」から、その動向を見てみましょう。
回答の上位を見ると、「価格」がトップにあり、値段面でのメリットに魅力を感じている回答者が90%近くに達しています。その後には「品質・機能」「信頼性(販売者・販売店)」と続いており、「信頼できる売り手から安く買いたい」意向がうかがえます。
これは、法人向けの事例として紹介した、エクイップや日本メディックスの取り組みにも通じるものがあるといえるでしょう。
以上(2021年6月)
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画像:pexels