書いてあること

  • 主な読者:改正育児・介護休業法(2021年6月3日可決)の改正点を知りたい経営者
  • 課題:細かい改正点も多く、自社にとって重要なものが何かよく分からない
  • 解決策:「出生時育児休業」の新設をはじめ、4つの改正点を押さえる

1 改正育児・介護休業法(2021年6月3日可決)の4つの改正点

2021年6月3日、改正育児・介護休業法が国会で可決されました。今回の法改正では、男性社員の育児休業取得率(7.48%)が女性社員(83.0%)に比べ著しく低い(厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」)ことなどを受け、男性社員の育児休業の取得促進に焦点が当てられています。また、有期雇用社員の育児・介護休業の取得要件緩和なども盛り込まれています。

改正点はさまざまですが、中小企業にとって重要なものは次の4つです。

  • 男性社員のための「出生時育児休業」の新設
  • 育児休業の再取得に関するルールの新設
  • 育児休業を取得しやすくするための環境整備の義務化
  • 有期雇用社員の育児・介護休業の取得要件緩和

以降でそれぞれのポイントを解説していますので、ぜひご確認ください。

2 男性社員のための「出生時育児休業」の新設

男性社員について、

子どもの出生後8週間以内に最大4週間まで取得できる「出生時育児休業」が新設

されます(2021年6月9日から1年6カ月以内に政令で定める日より施行)。

現行法でも、男性社員は子どもが原則1歳になるまで「育児休業」を取得できますが、出生時育児休業は育児休業とは別に取得できます。また、出生時育児休業は、

出生直後の多忙な時期に男性社員が配偶者をサポートするための制度

なので、育児休業とは幾つか異なるルールが設けられています。

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「1.休業の申し出」については、出生時育児休業の場合、原則休業開始の2週間前までに申し出ればいいため、男性社員は直前まで休業を取得するかどうかを熟考できます。

「2.休業期間」については、出生時育児休業の場合、出生直後の配偶者のサポートに重点を置いているため、育児休業よりも休業期間が短くなっています。

「3.休業中の就業」については、出生時育児休業の場合、労使協定を締結した上で出生時育児休業の開始前に男性社員と会社が個別に合意すると、休業中に男性社員を就業させることが認められます。

「4.休業中の賃金」については、出生時育児休業、育児休業共に賃金の支払い義務はありません。休業中の生活保障が気になるところですが、この点は所定の要件を満たせば、出生時育児休業給付金、育児休業給付金が支給されるので心配いりません(両者共に最大で賃金の67%相当を支給)。

「5.休業の分割取得」については、出生時育児休業、育児休業それぞれについて2回まで分割取得が認められるようになります。育児休業の分割取得については現行法には定めがありませんが、2021年6月9日から1年6カ月以内に政令で定める日より法制化されます。

3 育児休業の再取得に関するルールの新設

原則として、育児休業は子どもが1歳になるまでですが、例えば、子どもが1歳になっても保育所に入れないなど特段の事情がある場合、1歳6カ月まで延長できます。1歳6カ月まで育児休業を延長して同様の事情が起きた場合も、2歳まで延長が可能です。ただし、現行法では開始時点がそれぞれ1歳到達日の翌日または1歳6カ月到達日の翌日に限定されていました。

この点、改正法では、

配偶者が育児休業を取得している場合で、その終了予定日の翌日以前であれば「1歳から1歳6カ月まで」または「1歳6カ月から2歳まで」の任意のタイミングで育児休業を再取得

できるようになります(2021年6月9日から1年6カ月以内に政令で定める日より施行)。この育児休業の再取得は、分割取得(2回まで)とは別にカウントされます。例えば、男性社員が子どもが1歳6カ月になるまで育児休業等を取得する場合、前述の出生時育児休業の分割取得(2回まで)も含めると、図表2のように休業期間を実質5回に分割できるわけです。

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4 育児休業を取得しやすくするための環境整備の義務化

社員から、本人または配偶者が妊娠・出産したと報告があった場合、

社員に育児休業に関する制度について説明し、取得の意向を確認

することが義務付けられます(2022年4月1日施行)。厚生労働省へのヒアリング(2021年6月4日)によると、

「取得の意向を確認する方法については法令上特に定めがなく、書面を交わすことなどは現状求められていない」

とのことです。

また、上記の内容に加え、育児休業の申し出が円滑に行われるよう、次のいずれかの措置を講じることが会社に義務付けられます(2022年4月1日施行)。

  • 育児休業に関する研修の実施
  • 育児休業に関する相談体制の整備
  • その他育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置(厚生労働省令で定めるもの)

5 有期雇用社員の育児・介護休業の取得要件緩和

有期雇用社員の育児・介護休業の取得要件のうち、

「同一の会社での雇用期間が連続1年以上」という取得要件が廃止

されます(2022年4月1日施行)。

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以上(2021年6月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:aijiro-Adobe Stock

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