書いてあること

  • 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員と、それを見守る経営者
  • 課題:「すごい」と思える上司がいるが、日々、何をしているのか分からない
  • 解決策:固定観念を取っ払って上司の行動を観察してみる。そして、具体的に行動する

1 営業スタイルが明確に異なる2人の上司

営業部に所属する中堅社員のAさん。Aさんには2人の上司がいます。1人はB部長で、“いかにも営業”というタイプ。昔ながらの足で稼ぐ営業を徹底し、部下には「俺の背中を見て仕事を覚えろ!」と檄(げき)を飛ばします。

もう1人のC部長は、B部長とは全く違うタイプ。日ごろ、何をしているのか分からない謎の存在ですが、社内外の多くの人から頼られていますし、営業成績も抜群です。「C部長は一体どのような営業をしているのか?」と、Aさんの関心は高まっています。

C部長の行動の謎を解いて自分の営業に生かしたいAさんは、直接尋ねみることにしました。「C部長が日ごろ、何をしているのか分かりません。でも、営業の数字は上げています。一体、何をしているのですか?」。するとC部長は次のように返しました。

「ははは。私は営業部の部長だからね、文字通り“営業”をしているだけだよ。だけど、“売り方”が他の人と少し違うかな。私の場合、先にサービスをして恩を売り、それから商品を売っているんだよ」

2 上司のミステリアス。今と昔

「社長や専務はもちろん、事業本部長が何をしているのか分からない」。こう思っている人は少なくないでしょう。立場や責任が違いすぎて、どこで何をしているのか全くイメージできないということです。ある意味でベールに包まれた上司のミステリアスな感じは、かつては部下から見ると憧れにつながる面もあったようです。

しかし今どき、こうした行動の隠し方ははやりませんし、スケジューラーなどで見える化されているため、隠すこともできません。上司は、“報酬以上に働いている”ことを示すために、行動をオープンにすることが求められる時代です。

それでも、冒頭のC部長のような存在は「何者?」ということで、注目を集めます。C部長のような人が注目されるのは、幅広い活動を通じて人脈が広がったり、多様性が確保されたりして、それがビジネスの可能性を広げているからでしょう。

これからの上司に求められるのは、会社にこもる上司でも、昔ながらのやり方だけを踏襲する上司でもありません。これまでの組織の常識では測れない新しい価値観を、分かりやすく部下に示すことができる上司です。

3 上司が背中で見せるもの

C部長のような型にはまらない営業スタイルは、マニュアルなどを作ってコピーすることができません。よく上司は仕事ぶりを「背中で見せる」といいますが、昔とは見せる内容が違います。見せる内容は、複数業務への関わりを示す分単位のスケジュールや、成功や失敗の事例だけではありません。ましてや、滅私奉公的に組織に貢献する根性論でもありません。

これから上に立つ者が示すべきなのは、「新しいやり方をしてもいいのだ。そのために、社内外でこのように承認を取ればよいのだ」という、道の切り開き方です。そして、楽しそうに新しい道を切り開く背中に部下は魅力を感じます。

この行動は非常に大きなものを組織に残します。上に立つ者が、自分の達成したい目的を掲げ、苦手な人間ともうまくコミュニケーションを取りながらビジネスを進める姿は、そのまま部下自身や組織の可能性となり、将来に花開くことでしょう。

以上(2021年8月)

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画像:peshkov-Adobe Stock

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