今日は、皆さんに「思いやり」について考えてもらうために、1つの質問をしたいと思います。
ハンカチが必要なときに、会社の同僚が消毒済みのハンカチを貸してくれたとします。あなたはどのようにハンカチを返すべきでしょうか? ちなみに、ハンカチはそれほど高価には見えないものとします。私が4つ選択肢を出すので、自分ならこうすると思う方法を選んでください。
- ハンカチを使った後、そのまま返す
- 急いで別のハンカチを買って渡す
- 後日、借りたハンカチを洗濯して返す
- 後日、もっと上質なハンカチを買って渡す
どうでしょうか。私は、考えれば考えるほど難しいと感じる質問をしたつもりです。なぜなら、ハンカチを貸してくれた人の状況や性格、あなたとの関係性などによって、正解が変わるからです。
よほど気心の知れた、付き合いの長い同僚であれば、1番でもよいでしょう。ですが、そこまでの関係性のある同僚は少ないかもしれません。
もし、貸してくれた人が、その日にハンカチが使えずに困ることを気遣うのであれば、2番を選ぶのが妥当でしょう。
ものを大切にする人や、「借りたものは返すべき」という思いの強い人、あるいは貸したハンカチそのものに思い入れがある人に対しては、借りたハンカチ自体を返すことが重要ですから、3番が正解ということになります。
これはまれなケースかもしれませんが、もし、ハンカチを貸してくれた人がかなりの潔癖性で、「ハンカチを返してもらっても使えない」と考えるような人だったら、4番が無難にも思えます。
3番と4番の両方をすればいいと思った人もいるでしょう。ですが、「ハンカチ1枚のために色々してもらうのは、逆に申し訳ない」と感じる人もいるかもしれません。「だったら貸した本人に聞けばいい」のでしょうか。貸した人が遠慮がちなタイプなら、「『返して』とも言いにくいから、『あげるよ』と答えよう」と考えてしまいかねません。
というわけで、この質問に絶対的な正解はありません。私が知りたかったのは、この質問の答えを、自信をもって簡単に出したのか、悩んだ末に「強いて挙げれば」で出したのか、なのです。
皆さんに戒めてほしいのは、相手の気持ちを思いやることなく、“独り善がり”や“何となく”で方法を決めてしまわないことです。どうすれば相手が喜ぶかを、きちんと考えてほしいのです。
それをビジネスに当てはめるなら、自社のサービスやその提供方法は、お客さまにとって本当に最適なのか、常に考えることです。お客さまのことを思いやり続けることは、相手との関係性を深め、新しいサービスを生むことにつながります。結果的に選択を誤ったとしても、「実はこのように考えまして」と説明すれば、こちらの誠意は受け取ってもらえます。相手を思いやる努力は、決して無駄になりません。
以上(2021年8月)
pj17065
画像:Mariko Mitsuda