「もしも、君が本当になろうと決めたのなら、もう成功したのと同じだよ」

これは、米国の第16代大統領であるエイブラハム・リンカーンの言葉です。なぜ、決めることが成功につながるのか。私は、本気で決めたら、その目的を達成するための判断基準、つまり「自分の物差し」ができ、それに従って行動できるようになるからだと考えています。けさはこの「自分の物差し」についてお話しします。

先日、メンターと話をしていたときに、「リモートにより人と会う機会が減る中、大切なのは『自分たちらしさ』を共有することである」と言われました。つまり、「これって、うちっぽいよね!」、あるいは「これって、うちっぽくないよね」とメンバーが同じ感覚を持てるということです。この「うちっぽさ」は必ずしも明文化されておらず、私たちが持っている「目に見えない物差し」で判断しているということです。

共通の物差しを持った組織が強いことは間違いないのですが、一つ前提条件があります。それは、その物差しが、「メンバー自身のものになっているか」ということです。

先日、私は交渉の途中で席を立とうと思ったことがありました。「相手の担当者が、自分たちのことしか考えていない」と感じてしまったからです。私の「ビジネスの物差し」は、まず「愛があるか否か」にあります。ですから、自分勝手な人とは、できるだけ仕事をしたくないのです。

ただ、結論としては、もう少し交渉を続けてみることにしました。話を聞いているうちに、相手の担当者が「会社や上司の物差し」で話していることに気付いてきたからです。つまり、会社から課せられたノルマを達成しようと上司の指示を遂行することに必死で、自分勝手にならざるを得ない状況のようでした。

問題は、実はその担当者は愛ある人物かもしれないのに、会社や上司の物差しを意識し過ぎて、自分を出せなくなっていることです。共通の認識となる「らしさ」は大切ですが、そこにメンバーの自主性が伴わなければ、「借り物」の物差しで判断し、行動し続けることになるのです。

物差しは環境の中でつくられ、そして浸透していきます。組織である以上、最後は上司の指示に従うべきです。しかし、そこに至るまでに自分の判断を差し挟む余地が全くない、報連相をしても聞く耳を持ってもらえないといった組織では、メンバーの「自分で考え、判断する能力」はどんどん退化します。結果として、会社の方針や上司の指示に従って自分勝手なことを言っていることに疑問すら感じなくなります。

大切なのは、会社の方針や上司の指示に、皆さんの考えを掛け合わせることです。そのときに生じる疑問や矛盾から皆さんの物差しがつくられていきます。今、皆さんは誰の物差しで判断していますか? 「自分はどうしたいのか?」と自問自答することで答えは見えてきます。

以上(2021年9月)

pj17068
画像:Mariko Mitsuda

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