書いてあること
- 主な読者:上司から無理難題を依頼されて不満を覚えている社員
- 課題:急ぎと言われても、時間は限られているので対応しようがない
- 解決策:仕事を分解し、メリハリをつけて対処する。無理難題を頼まれるのは信頼の証
1 課長! それは無理です!
業績管理課に所属する中堅社員のAさんは、必死の形相で業績資料を作成しています。原因は、50分前に外出中の課長から入った電話でした。「申し訳ないが、いつもの業績資料を大至急で作成してくれないか。午後の会議で急きょ必要になったのだ。あと1時間で戻るので、それまでに頼む」。課長はそう指示をして、電話を切ろうとしました。
「ちょ、ちょっと待ってください。あの業績資料の作成には最低3時間はかかります。とても1時間ではできません。そもそも、今どきこんな資料が必要なのかと申し上げようと思っていたところです……」。そう答えるAさんの言葉を遮るように課長は話し始めました。「そんなことは分かっている! おおよその数字が分かればいいから。すまん。今、急いでいるから、40分後にまた電話する。とにかく頼むぞ!」と言って電話を切ってしまいました。
……40分後、課長から進捗状況の確認の電話が入りました。「資料はできたか?」「申し訳ありません。まだできていません。今、関係者に数字を確認していますが、リモートで連絡が取れない社員もいます……」。消え入りそうな声でAさんは答えました。
「何でそんなことしているんだ。『おおよその数字が分かればいい』と言ったよね? 先週末に報告してもらった見込みを使ってまとめてくれたらいいよ」。課長は少し呆れたようにAさんに指示を出しました。「分かりました。それであれば、あと20分でできます」。Aさんは、そう答えて電話を切りました。
「課長も、先にそう言ってくれればいいのに……」と不満顔のAさんでした。
2 急ぎの仕事を指示されたときの心構え
急ぎの仕事は、短時間でミスなく進めなければならないため、信頼できる人に任せます。ですから、上司から急ぎの仕事を任されるということは、「短い期間でも、確実に仕事をこなしてくれる」という信頼の証しでもあります。その信頼に応えるためには、限られた時間の中で、要求されるクオリティーを満たす仕事をしたいものです。そのためには、急ぎの仕事を上手にこなすコツを知っておく必要があります。
まず、急ぎの仕事を進めるときに、通常の手順を早く回そうとしてはいけません。例えば、冒頭の Aさんの例でいえば、業績資料の作成には6つの手順があり、通常は各30分、計3時間かかるところ、各手順を一律10分に短縮して1時間で終えようとする進め方です。しかし、この進め方は基本的には間違いです。当然ですが、通常3時間かかる仕事を、「急ぎ」だからといって、1時間でこなすことはできません。それを無理に進めれば、ミスが発生するでしょう。
急ぎの仕事は、通常の手順を変更しつつ、メリハリをつけて行うことがコツです。Aさんの例でいえば、6つの手順について、「ポイントとなる2と5は各20分かけ、1と4は各10分で簡易的に行い、3と6は省略(0分)」といったイメージです。ただ、このメリハリをつけるというのは簡単ではありません。以降で、もう少し詳しく見てみましょう。
3 メリハリをつけるための2つのポイント
メリハリをつけるためには、2つのポイントがあります。
1つは、仕事の目的を理解することです。Aさんの例でいえば「業績に関するおおよその数字が分かればよい」と言われています。そうであれば、課長の指示がなくても「先週末の報告数値でよい」という考え方も選択肢として浮かぶはずです。
もう1つは、仕事の難所やポイントを把握することです。急ぎであるとはいえ、仕事には一定のクオリティーが求められます。Aさんの例でいえば、「急いでいたから、数値に誤りがあってもよい」ということにはなりません。
仕事のクオリティーを担保するためには、急いでいても、時間をかけてじっくりとやらなければならない作業もあります。仕事にメリハリをつけるためには、仕事のポイントを把握することも大切です。
4 不安があれば上司に確認する
急ぎの仕事の場合、上司の指示も大雑把になりがちです。これは「事細かに説明している時間がない」ということもありますが、信頼している人(=仕事が分かっている人)に指示しているので、「言わなくても分かるだろう」という思いがあることが最大の理由です。
急ぎの仕事は、限られた時間の中でこなさなければなりません。不安な点や迷っている点があれば、即座に上司に確認するようにしましょう。
以上(2021年10月)
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