1 コロナ禍におけるテレワーク実施率の推移

先般、総務省が公表した「提言:ポストコロナの働き方「日本型テレワーク」の実現」関連資料によると、企業のテレワーク実施率は、2020年3月の17.6%(3月2日から8日)から、1回目の緊急事態宣言終了の頃には、56.4%(5月28日から6月9日)に上昇しました。

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しかし、緊急事態宣言解除後は低下し、11月には30.7%(11月9日から16日)まで低下しました。2回目の緊急事態宣言時には38.4%(2021年3月1日から8日)へ再上昇しましたが、1回目の緊急事態宣言の際の実施率とは水をあけられている状況です。

2 直近のテレワーク実施率

それでは、オリンピックを間近に控えた6月のテレワークの実施状況はどのようになっているでしょうか? 株式会社東京商工リサーチの直近の調査結果を見ると38.3%(6月1日から9日)となっており、3月調査とさほどの変化は見られませんでした。

もう少し、掘り下げて調査結果を見てみると、在宅勤務を「現在、実施している」企業のうち、「従業員の何割が在宅勤務を実施していますか?」の問いについては、最多は「1割」の25.6%(1,013社)、続いて「2割」14.05%(555社)、「10割」13.72%(542社)となっています。

政府は「出勤者数7割削減」を呼びかけていましたが、達成している企業は29.0%(1,149社)でした。規模別では、7割以上の削減は、大企業23.8%(1,051社中、251社)、中小企業は30.9%(2,898社中、898社)という結果となっています。

3 おわりに

前述の通り、昨年の緊急事態宣言の発令の際に、急速な広がりを見せたテレワークですが、それ以降のテレワーク実施率は、緊急事態宣言に多少反応しつつも、落ち着いた数値となっているようです。

パーソル総合研究所が本年7月30日から8月1日に行った「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によれば、テレワークを行っていない理由として、「会社がテレワークに消極的で、実施しにくい」という理由が10.3%を占めています。このことは、十分な準備を行わないまま、テレワークが導入された結果、テレワーク本来の良さやテレワークで出来るようになったことよりも、生産性の低下等の課題にフォーカスされてしまったからではないでしょうか。

しかしながらテレワークは、感染症対策の観点だけでなく、長時間労働の抑制やワークライフバランスなどの観点からも、働き方の選択肢として維持されることが望まれます。そして、近時の求職者も高い関心を示していることから、今後はテレワーク制度の有無も企業選びの際のポイントのひとつになるかもしれません。

コロナ禍はいずれ終わります。しかしながら、労働力の不足は長期的に企業の人材戦略に影響を及ぼすでしょう。出勤抑制が求められるからではなく、将来を見据えたテレワークの定着、改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※本内容は2021年9月2日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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