書いてあること

  • 主な読者:社員を「褒める」ことで強い組織をつくりたい昔ながらの組織の経営者
  • 課題:褒めることが苦手。それに、仕事なのだから厳しくても問題ないのでは?
  • 解決策:やるべきことはシンプル。「具体的に、タイミングよく、全力で」褒める!

1 会社と社員の関係が変わってきた

「褒める」という行為が、改めて注目されています。見直しが進んでいるとはいえ、ほとんどの日本企業では終身雇用が根付き、家族的な雰囲気を醸し出そうとしています。家族的な関係づくりを進めるからこそ、一方では厳しさも容認され、「仕事だから経営者が社員を指導するのは当然。厳しくても、それは社員を思ってのこと」といった感覚が生まれます。

しかし、こうした感覚は通用しなくなりつつあります。厳しすぎる指導は社員を疲弊させ、経営者の意図に関係なくパワーハラスメントを指摘されてしまうこともあります。また、別の視点からは、不要な「圧」があると、社員は思ったことを口に出せなくなり、多様性が失われていきます。

厳しい経営環境を勝ち抜くためには、社員を萎縮させるのではなく、伸び伸びと働いてもらうことが必要です。そして、そのきっかけとなるのが「褒める」という行為です。そこで、この記事では、褒めることについて少し掘り下げて考えていきます。

2 具体的に褒める

まず、経営者は

社員がいなければ会社は成り立たない

ことを認識し、感謝の気持ちを社員に伝えましょう。「よく頑張っているね」「いつもありがとう」といった声掛けをするのです。会社の規模にもよりますが、社員にとって経営者は遠い存在です。経営者が思っているよりもずっとです。そのような経営者から肯定的な言葉を掛けられれば、うれしくなり、声掛けの内容が漠然としたものであっても、「褒められた、認められた」と感じるはずです。

ここから一歩進んで全力で褒めるために、自社の管理職をお手本にしてみましょう。管理職は現場で部下を指導し、細かなことも把握しています。そして、管理職は部下が自分の教えた通りに、あるいは期待を超える成果を上げたときに褒め、逆の場合は叱ります。つまり、管理職が褒めたり叱ったりすることは、社員の仕事と連動した具体的な内容になっています。

例えば、社員がプロジェクトに成功した場合、経営者は「よくやった!」と声掛けしますが、管理職は「君がお客様から『○○があればいいな』という一言を引き出し、それに真剣に向き合ったからだ。よくやった!」といったように具体的に褒めます。大切なポイントは、「相手が褒めてほしい、認めてほしい」と思っている部分を的確に捉えていることなのです。

3 基準を明確にし、タイミングよく褒める

社員とのコミュニケーションを深めたとしても、経営者が全社員の仕事を細かく把握することはできません。それに、経営者が社員とのコミュニケーションばかりに時間をかけることもできません。そこで、経営者は褒める基準と叱る基準を明確にしておきましょう。例えば、「イエスマンは評価しません。意見や、“異見”を言ってくれる社員を評価します」と宣言し、実際にそのようにします。こうすることで、経営者の“ご機嫌取り”をして、褒められようとする社員のムダな行動を排除することもできます。

また、褒めるタイミングも大事です。1年前の成功でも褒められればうれしいものですが、成功直後ほどの効果はありません。仕事に成功した社員を褒めるなら、社員の気分が高揚しているときが一番よいのです。

4 褒める組織をつくる

社員をよく褒める経営者が率いる会社では、管理職も同じように部下のことをよく褒めるようになります。また、社員は経営者の人柄をよく見ています。いくら経営者が全力で褒めたとしても、そもそも社員に尊敬されていなければ、社員の心の琴線に触れることはできません。

そのため経営者は、仕事はもちろん、公私ともに“全力”で率先垂範し、ちょっとした声掛けであっても、社員が「尊敬する経営者に声を掛けてもらえた!」と思えるほどの存在になれるよう努力しなければなりません。

以上(2024年7月更新)

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画像:ASDF-Adobe Stock

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