今日は私の失敗談をお話しします。若い頃、大きなプロジェクトを任されたときのことです。
新規ビジネス立ち上げのプロジェクトだったので、さまざまな苦労がありましたが、一番難航したのは、社内外の関係者との調整でした。特に、社外のあるベンダーとは仲がこじれてしまったのです。
正直なところ、私はそのベンダーの窓口担当者が苦手でした。初めのうちは意見を積極的に出してくれる頼れる存在と思っていましたが、途中からは、自己主張が強過ぎて、プロジェクトの進行を妨げる“厄介なやつ”だと感じていました。
当時、とにかくプロジェクトを前に進めたかった私は、その窓口担当者の言うことに耳を傾けなくなり、提示された懸念もあまり考慮しませんでした。結果的にその懸念が現実のものとなってトラブルが発生し、プロジェクトの進行が大幅に遅れてしまったのです。そのときになって初めて「ああ、あの人の言う通りだった。私が間違っていた」と思いましたが、後の祭りでした。今でも、とても苦い思い出として心に残っています。
この失敗に関する反省点はさまざまありますが、最も良くなかったのは、私の中で、ベンダーの窓口担当者に対して大きなバイアスがかかっていたことです。「あの人は進行の邪魔ばかりする。進めたくないに違いない」と強く思い込んでいた私は、何を言われても素直に聞けず、意見の内容を真剣に考えることができませんでした。
皆さんも似たような経験がないでしょうか。「きっとあの人なら反対するだろう」「あの人のことだから、何か裏があるに違いない」。日ごろ、皆さんが社内外の人についてそう言っているのを耳にすると、私は心配になります。ネガティブな思い込みが強過ぎて、バイアスがかかった状態で相手を見ているのではないかと思うからです。
ビジネスにおいてバイアスはとても危険です。物事を客観的に捉えられなくなり、大きなトラブルを招いてしまうかもしれません。そこで、できるだけバイアスを取り除くために、私が心掛けていることを2つお伝えしますので、皆さんも参考にしてください。
1つ目は「誰が言っているか」ではなく、「何を言っているか」に注目することです。本当にその意見は正しいのか、あるいは間違っているか。「何を」という、内容にだけ集中して考えるのです。
とはいえ、私も感情的になり、どうしても「誰が言っているか」が引っ掛かるときがあります。そこで2つ目として実践しているのは、周りの意見を聞いてみることです。できるだけ私の主観を交えずに周りに状況を伝え、どのように感じるか聞いてみると、意外と私自身のバイアスに気付かされることが少なくありません。
こちらにバイアスがかかっていると、相手もそうなります。互いの理解なくして、ビジネスは前に進めません。バイアスは百害あって一利なし。今日から肝に銘じてください。
以上(2022年2月)
op16914
画像:Mariko Mitsuda