皆さんは、極楽鳥をご存じでしょうか。極楽鳥のオスは、派手な色をしていたり、メスへの求愛ダンスをしたりすることで知られる鳥です。色が派手なオスや、ダンスが上手なオスが、メスとつがいになれるといいます。クジャクの羽やカエルの鳴き声なども同様に、メスへのアピールが目的の「モテ形質」の進化なのだそうです。

こういった進化は、その生物からすると、厳しい競争下で時間をかけて獲得したものといえます。ですが、人間の目から見ると、その姿は異様で、ある意味、滑稽にも見えます。それに見た目が派手というのは、獲物を捕らえたり、天敵から身を守ったりするのには不利です。種全体としての個体数の増加という基準で見た場合、全くムダな進化をしていることになります。

同じような生物のムダな進化に、「裏切り行動」があります。アリの中には、ある時期から集団のための労働をやめて、自分の卵を産むことに専念し始める種があるそうです。種全体のためでなく、自分だけの利益のために行動するわけです。

こうしたムダな進化は、生物界全体で見ると、同種間の競争というムダな方向に進化することで、絶対的に生存能力の高い生物を存在させず、生物の多様性を生み出す点で重要だといいます。

ですが、勝つか負けるかのビジネスでは、そうはいきません。会社として、絶対的な生存能力の高さを追求するのが当然です。会社が生き残るために、ムダな競争をしている余裕はありません。

新聞や雑誌などを見ると、一部の大企業でも、ムダな競争が行われているようです。社内での出世争いや足の引っ張り合い、派閥争いに終始し、トップになる人は社内政治の勝者。そのような人はこの困難な時代を乗り切るリーダーシップを持ち合わせていない、ということも耳にします。

一方、必要な競争もあります。例えば、社内で商品に関する提案のレベルが上がり、議論が活発化すれば、社外でも通用する商品の開発につながります。また、ライバル同士が切磋琢磨(せっさたくま)するのも、売り上げを伸ばしたり、仕事のレベルを上げたりするために必要な競争です。

難しいのは、一見、必要な競争をしているようで、実はムダな競争をしているケースがあることです。例えば、商品開発のための議論で、ただ相手を蹴落とすためだけに、長所を認めず小さな欠点ばかりを指摘するような行為は、無意味です。また、ライバル関係は歓迎ですが、会社にとって必要な連携が取れなくなっては本末転倒です。

ムダな競争と必要な競争との見分け方は簡単です。その競争が、会社にとって利益になっているかどうか、それだけです。ただし、会社にとっての利益が目先だけのものか、長い目で見た利益なのかは見極める必要があります。

皆さんの中にある競争心は、会社を成長させるために貴重なものです。ですが、その競争心が、会社にとってムダか必要かを、常に顧みるようにしてください。

以上(2022年2月)

pj17088
画像:Mariko Mitsuda

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