書いてあること

  • 主な読者:消費税の基礎を知らないために損をするかもしれない経営者
  • 課題:消費税の仕組みは難解で、どこがポイントになるのか分からない
  • 解決策:本当に消費税が課されるのか、税率は10%なのかを取引内容などから確認する

1 経営者が消費税を避けて通れない理由

消費税を払うのは当然で、税率は10%に決まっている!

もし、皆さんがこう決めつけているとしたら、この記事を読んでいただく価値があります。なぜなら、

消費税が課されない取引や、10%より低い税率が適用される取引もある

からです。それに、経営者は、

消費税は利益に関係なく課され、資金繰りに大きな影響を及ぼすこと

も認識しなければなりません。

タイトルにも書いていることですが、

消費税の基本を知らないと、御社は損をする

恐れがあります。損をしたくなければ消費税の基礎を勉強する必要があります。そのお手伝いとして、このシリーズで消費税の基礎をまとめます。本を読むよりも楽で、多くのネット記事よりは少し細かい内容です。1回目となる今回のお題は、

  • 消費税の計算方法:預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算
  • 業務上の注意点:税率やそもそも消費税を支払う必要があるかをチェック

です。

2 消費税を負担する人、納付する人

消費税の対象となる取引は幅広いのですが、例外として、医療や介護サービス、学校の授業料といったものは非課税になります。

また、消費税は、消費税を負担する人(消費者)と消費税を国へ納付する人(納税義務者)が異なる「間接税」です。商品が製造されてから消費者の手に渡るまでの流れに沿って確認してみましょう。

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この商品は最終的に消費者が、小売業者から税抜1万円で購入しています。その際、消費税として1000円を負担しています。しかし、消費者が購入する前の段階で、製造業者から卸売業者へ、卸売業者から小売業者へと商品を販売した際もそれぞれ消費税がかかっており、関係者が重複して消費税を負担しているように見えますが、実際はそうではありません。

なぜなら、消費税が二重三重にかかることのないように、

預かった消費税から支払った消費税を差し引く仕組みにあっており、これを「仕入税額控除」

と呼びます。仕入税額控除の詳細はこの後に紹介しますが、まずはイメージが湧くように具体的な金額で見てみましょう。小売業者・卸売業者・製造業者が支払う消費税は合計で1000円となっていることが分かります。

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3 納税額の計算

消費税は、

「預かった消費税(仮受消費税)」から「支払った消費税(仮払消費税)」を差し引いて計算

します。とはいえ、日々、取引ごとにこの計算するのはとても大変。そのため、実際は、

課税期間内の取引金額(税込)の合計額を使用して、納付する消費税を一括して計算

します。イメージは次の通りです。

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なお、厳密にいうと、消費税申告書上の計算方法はなかなか複雑です。消費税の計算方法の詳細については、以下のコンテンツをご参照ください。

4 日々の業務で気を付けるべきこと

1)適格請求書(インボイス)の保存と記帳

前述した通り、仮受消費税から仮払消費税を差し引くことを「仕入税額控除」と呼びます。仕入税額控除を受けるには、

  • 適格請求書(2023年9月末までの取引については請求書等。以下「インボイス等」)の保存(請求書を受け取った年度の確定申告の提出期限翌日から7年間。2025年3月決算会社であれば、2024年度の取引に係るインボイス等は、2032年5月末日まで保存しなければなりません)
  • 帳簿への記載

が必要です。ですから、会計ソフトなどで記帳したからといってインボイス等を捨ててはいけません。できれば日付順などに整理して、保存してください。加えて、

相手の名称、取引年月日、取引内容など、消費税法で決められている事項を帳簿に記載

しなければなりません。ここは、税務調査のチェックポイントなので気を付けましょう。

2)取引内容をチェック

消費税は、取引内容によって次のように区分されます。

  • 消費税が課されるもの(課税取引)
  • 消費税が課されないもの(課税対象外取引)
  • 政策上の理由などで消費税が課されないもの(非課税取引)
  • 輸出取引(輸出免税取引)

相手からもらったインボイス等や自社が発行するインボイス等を確認し、課税区分に間違いがないかチェックしましょう。取引の区分については、以下のコンテンツをご参照ください。

3)税率をチェック

原則として、消費税の税率は10%です。しかし、

  • 飲食料品などの販売・購入については8%(軽減税率)が適用
  • 取引(特に古い取引)によっては、旧税率(8%・5%・3%)が適用

される場合があります。取引ごとに税率に間違いがないかチェックしましょう。そのため、帳簿を作成する際には税率の異なるごとに記帳しないといけません。

4)納税義務があるのかをチェック

会社は消費税を納めなければなりませんが、取引の規模などよっては免除されます。これを見逃すと損をするので、しっかりチェックしましょう。インボイス制度が始まった2023年10月1日以後は、相手が免税事業者かどうかで自社の消費税負担が変わってきます。消費税が免除される免税事業者の詳細やインボイス制度の影響については、以下のコンテンツをご参照ください。

以上(2024年11月更新)
(執筆 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:kai-Adobe Stock

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