昨年、勤務中の飲酒運転による事故で児童が死傷する事故が起こりましたが、事故を起こした自動車は自家用車であったことから、事業用自動車と異なり企業に対してアルコール検査の義務がありませんでした。

このことを受けて、道路交通法施行規則などが改正され、自家用車にも安全運転管理者制度が適用される企業に対してアルコール検査の義務が適用されます。本稿ではその改正の内容、および企業の責任について概説いたします。

1 対象

今回の改正は、安全運転管理者の選任義務がある事業所が対象となります。

<安全運転管理者の選任対象となる事業所>

  • 自動車5台以上、または定員11人の車両を1台以上使用している事業所。
    ※自動二輪車は0.5台で計算。
  • 自動車運転代行業者は、台数に関係なく営業所ごとに選任事業所(自動車使用の本拠)ごとに1人を選任

対象は、令和2年3月末時点で約34万事業所、管理下運転者数は約769万人に上っています。

2 改正点

安全運転管理者の業務内容について、以下の業務が段階的に追加されます。

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なお、道路交通法では、次の通り使用者の責任を明示しており、今回の改正はその責任の履行について明確化したものと捉えられます。

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3 交通事故時における企業の賠償責任について

交通事故により、企業が被害者に対して負う民事上の責任は、従業員が業務中などに起こした事故について、企業が従業員とともに損害賠償義務を負うという「使用者責任」と、自動車の運行により利益を得て、その運行について直接または間接に指揮・監督しうる場合に損害賠償義務を負う「運行供用者責任」の2つがあります。

一例として、危険運転致死傷罪の成立のきっかけとなった、1999年の飲酒運転による交通事故では、企業は適切な調査を行っていれば、被告の常習的な飲酒運転を把握することができ、本件事故の発生を未然に防止することが可能であったと認定し、裁判所は被告のみならず企業らに対しても約2億5000万円を連帯して支払うよう命じています。

4 さいごに

今回の改正により、飲酒運転に対する社会の目はますます厳しいものになるでしょう。改正としては、安全運転管理者制度が適用される事業所に課せられる義務ではありますが、適用されていない事業所であっても、飲酒運転による事故が発生した場合の企業のリスクは莫大なものとなります。

自社の業務に供されている自動車がある場合には、今一度安全に運行される体制は整っているのか、服務規律や車両管理規定を確認するとともに、運行状況などを定期的に確認してみることをお勧めします。

※本内容は2022年1月12日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

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