今日は皆さんに、問題を出したいと思います。皆さんはヤマメという魚と、サクラマスという魚の違いを知っていますか?

ちょっと意地悪な問題なのですが、正解は、「違わない」のです。生物学的には、両方ともサケ科の同じ種類の魚です。しかし、その生き方は全く異なります。川に一生住み続ける“陸封(りくふう)型”と呼ばれるのがヤマメで、川を下って海で育つのがサクラマスです。

では、ヤマメとサクラマスとの運命の分かれ道はどこにあるのでしょうか? その答えは、両者が生まれて約1年後に激烈を極める、縄張り争いにあります。体の小ぶりなヤマメが争いに敗れ、居場所を失って川を下るそうです。

海に出たヤマメは、川よりも天敵の数も種類も多い海で、危険にさらされながら生きることになります。ですが、海には餌となる小魚が豊富にいます。川に居続けるヤマメの大きさが20~30センチメートルほどなのに対して、海で生き延びたヤマメ、つまりサクラマスは、2倍以上の70センチメートル程度にまで成長します。そして海に出てから約1年後、産卵のために生まれた川に“凱旋”するのです。

ヤマメと比べて体の大きなサクラマスのほうが産み落とす卵の数は多く、子孫を残せる可能性が高くなります。つまり、一度は競争に負けたヤマメが約1年後にサクラマスとなり、川に残っていたヤマメに逆転勝ちするのです。

皆さんはこの話を聞いて、ヤマメとサクラマスのどちらになりたいと思いましたか? 私はかつてサクラマスの生き方に憧れて、積極的に広い世界に出て、学び、成長したいと考えたものです。

しかしながら、今の考えは違います。私が今、なりたいのは、ヤマメでもサクラマスでもありません。ヤマメやサクラマスを育む、川になりたいのです。

この会社にも、さまざまなタイプの人がいます。1つの仕事をコツコツやり遂げるヤマメタイプの人もいますし、社外でいろいろと学んでスキルアップをしたいと考えているサクラマスタイプの人もいます。

どちらの生き方も素晴らしいことですし、私はそれぞれの生き方を応援したいと思っています。今の仕事の専門性を高め、極めたいと考えている人には、それにふさわしい場所を与えられるようにします。外の広い世界で学び、成長したいのであれば、むしろ積極的に後押しして送り出したいと思っています。ヤマメは川で、サクラマスは海で、それぞれ精いっぱい生きているのですから、どちらも胸を張ってよいのではないでしょうか。

私はこの会社を、ヤマメやサクラマスが生き生きと泳げる、川のような会社にしたいと思っています。皆さんは、自分の思うような生き方をしてください。そして、自分と生き方や考え方の違う人とも、認め合える関係を築いていってください。

以上(2022年2月)

op17009
画像:Mariko Mitsuda

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です