突然ですが、私は新年度から、皆さんの評価の方法を見直すつもりです。そのきっかけになったのは、A君に対する評価について、私に至らない部分があったからです。これからその経緯について話しますが、皆さんの仕事の取り組み方にも関係することなので、しっかりと聞いてください。
皆さんもご存じのように、A君は若手から中堅社員になりつつあり、これからの成長が期待される一人です。私を含めたA君の上司たちは、A君に対してそれなりに評価しているつもりでした。
ところが最近、ある取引先の幹部の方と話をしたときにA君の話題になり、取引先の方々は私が想像していた以上に、A君を高く評価していることを知りました。
確かにA君は人当たりが良く、私も取引先から好まれる人物だとは思っていました。その一方で、取引先との交渉の進め方が遅いという難点があるとも感じていました。ところが、取引先の幹部の方は、A君は綿密に連絡を取り、こちらの事情も踏まえて行動してくれると感謝していたのです。しかも、取引先におもねって言い分をそのままのむのではなく、我が社の立場もしっかりと説明した上で、両社の折り合いがつくような提案をしてくれているそうです。
私がこの話を踏まえ、A君から取引先を引き継いだ若手のB君に話を聞いてみたところ、A君が築いた取引先との良好な関係のおかげで、取引先の我が社に対する信頼も厚いとのことです。
こうした話を聞いて、私はA君に対してとても感謝し、これまで社外での評価を考慮せずに低く評価していた自分自身の、人を見る目のなさを反省しました。
私がA君の交渉の進め方が遅いと思っていたのは、「我が社の都合」で見ていたからでした。A君は、たとえ進め方が遅いという社内の評価を受けてでも、取引先から感謝され、結果的に我が社が取引先と長くWIN-WINの関係を続けられることを優先してくれていたのです。
この反省を踏まえて、私は新年度から、皆さんを評価するために、取引先を含めたいろいろな人の意見を聞くようにします。そして、皆さんにもお願いがあります。それは、社内での、特に上司からの目先の評価だけを気にして仕事をしないでもらいたい、ということです。もちろん、私の顔色を見ながら仕事をする必要もありません。
皆さんは、取引の現場の最前線に立つ者として、我が社のことだけでなく、取引先にとって何がベストなのかも考えて行動するようにしてください。取引先のために最大限の努力をすれば、取引先は必ず評価してくれます。取引先との最前線に立つ皆さんが評価されるということは、我が社の評価が上がるということでもあります。もし私や上司が現場の事情を知らずに、取引先からの評価が下がるような要求をしていると感じたら、遠慮なく反論してください。私は新年度から、それができる社員も、高く評価します。
以上(2022年3月)
pj17095
画像:Mariko Mitsuda