書いてあること
- 主な読者:各部門のトップにふさわしいのは、どのような人材なのかを検討している経営者
- 課題:自分の考えはもちろん、他の経営者がどう考えているのかも知ってみたい
- 解決策:歴史上の偉人に例えて、各部門のトップの素養についてイメージを固める
1 経営者が考える部門長の素養
各部門のトップにふさわしいのは、どのような人物なのか。他の経営者の意見を聞いてみたいと思いませんか?
経営者111人を対象に、2022年3月にインターネットを通じてアンケートをしてみました。「総務・労務、企画・開発、人事、法務、財務、営業、DX」の7部門のトップとしてふさわしいのは誰なのか。各部門5~6人の偉人を例示した上で、「その他」も含む1人を選んでもらいました。
アンケート結果を2本に分けて紹介します。
- 00630 【経営者アンケート】経営者が部門長に求める素養を偉人で例えたら、人事部門のトップはあの「先生」だった! (この記事)
2 総務・労務部門は武田信玄
1)戦国最強軍団の陰に、トップの気使い・人使いあり(16人、14.4%)
戦国最強軍団のトップに君臨した「甲斐の虎」ですが、「人は城、人は石垣、人は堀……」の言葉で知られるように、部下との信頼関係の構築に腐心し、多様な人材を上手に活用した“気使い・人使いの人”という側面もあります。
その人間力を評価する声が多く、トップでなくナンバー2としての活躍も期待できそうです。
- 人使いが上手そう(60代男性)
- 人の使い方を教わりたい(60代男性)
- 旗振りが上手そう(50代男性)
- 気配りができる(50代男性)
- 戦略にたけ、部下からの信頼度が高い(60代男性)
- 視野の広さ(50代男性)
- 総務・労務は何でも屋(60代男性)
- 情に厚い(70代男性)
- 人材登用、人を見る目がある(40代男性)
2)第2位:豊臣秀長(15人、13.5%)、目立たず支えるナンバー2は若手層にも人気
- Mr.ナンバー2(40代男性)
- 陰の立役者(50代男性)
- トップを目立たずに支える(50代男性)
- 陰で支えるような人(50代男性)
- 裏方に徹する(40代男性)
- 上を立ててくれる(40代男性)
- バランス感覚に優れる(70代男性)
- 常におごることをしない(60代男性)
3)第2位:勝海舟(15人、13.5%)、上司でも部下でも結果を出せるオールラウンダー
- 清濁併せのむことができそう(60代男性)
- 森も木も見て最善の判断をしてくれそう(50代男性)
- 人を動かす力がある(60代男性)
- 組織をボトムアップに支えてくれそう(40代男性)
- 強い相手にも対等に渡り合う交渉術が素晴らしい(60代男性)
- 個々の能力を高め、適材適所に人を配置するようなきめ細かさ(70代男性)
- 地味な役回りだが、人的な損害を最小限に抑えた手腕はすごい。人の間に立って、妥協点を見つけられる(60代男性)
- いついかなるときにも冷静沈着に判断するとともに、江戸城無血開城のように、自身の功名よりも民の日常を守ろうとする意識は望ましい(60代男性)
4)第4位:直江兼続(8人、7.2%)、しっかりと筋を通す「愛」の人
- 筋を通す人でないと務まらない(50代男性)
- 自ら率先して陣頭に立つことができる行動力と、出金・入金の把握をした上で立つことができる(60代男性)
- 真面目そう(50代男性)
- 単純に人物が好き(40代男性)
5)第5位:北条義時(7人、6.3%)、「旬な人」の評価はさまざま
- 気配り上手(80代男性)
- 調整力(60代男性)
- 頭が良い(50代男性)
6)第6位:春日局(4人、3.6%)、大奥を取り仕切った凄腕をマニアが評価
- 仕切りのうまさが抜群(80代男性)
- 上層部から部下(他部署の部下も)まで、しっかりとコントロールできる方かなと思います(50代男性)
- 組織の裏も表も知り尽くした上で戦略的に組織運営してくれそう(60代男性)
3 企画・開発部門は黒田官兵衛
1)天下を取らなかった能力抜群の名軍師(34人、30.6%)
「豊臣秀吉の軍功の陰にこの人あり」といわれ、秀吉の天下統一を支えた名軍師です。その一方で秀吉は官兵衛の能力を恐れて、広い領地を与えなかったともいわれています。
軍師としての能力に対する評価が圧倒的でしたが、中には「天下を取らなかった」ことを評価する声も聞かれました。
- 縁の下の力持ち。表舞台に出ず、主君を支える。現在でもこのような方々によって繁栄している企業は多いと思う。ただしトップが聞く耳を持つか否かだが(70代男性)
- 最も戦略と戦術を上手に使い分けることができる人のような気がする(50代男性)
- 必要性を理解して、実行に移すことができる行動力(60代男性)
- 自分にはない、「知」がありそう(60代男性)
- 周りも見ながら新しい物事を進めていけそうに感じる(60代男性)
- 広範囲な知識をもって、時節に合った的確な判断ができる(60代男性)
- 自分がトップに立つことなく能力を発揮してくれそう(50代男性)
- 下剋上は求めていない(50代男性)
2)第2位:織田信長(12人、10.8%)、とがったキャラの突破力に期待
- 異常なくらい新しがり屋(80代男性)
- マーケティングの能力が高そう(50代女性)
- 戦略に優れているし、決断力もある(80代男性)
- 発想が優れている(60代男性)
- 固定観念にとらわれない提案がありそう(40代男性)
- 未来を見て、切り開く能力にたけている(70代男性)
- 元気そう(60代男性)
3)第2位:徳川家康(12人、10.8%)、信長と真逆の安定志向派が支持
- 常に計算高く、ばくちなど冒険はせず、安定した精査が得意(60代男性)
- 安定性(70代男性)
- 企画開発は冒険も無理強いも要らない。鳴くまで待つ戦略(60代男性)
- この人に、自社の経営戦略を聞いてみたい(60代男性)
- 思考が柔軟(80代男性)
- 頭脳的な戦略を持っていそう(50代男性)
4)第4位:西郷隆盛(10人、9.0%)、人望や人間性を評価
- 人徳があり人脈を武器として部下も大事に戦い続けてくれそう(50代男性)
- 人望と行動力のバランスが良いと感じる(40代男性)
- 私利私欲より全体のことを考えている(80代男性)
- 裏も表も知り尽くしている(60代男性)
- 諦めない心(50代男性)
5)第5位:北条政子(2人、1.8%)、鎌倉幕府を支えた「尼将軍」の評価はイマイチ
- 戦国の荒武者たちをまとめ上げる力がある(60代男性)
4 人事部門は吉田松陰
1)高杉晋作など多士済々の志士を輩出した情熱と感化力(28人、25.2%)
わずか29年の生涯でしたが、主宰した松下村塾からは、高杉晋作、伊藤博文、山県有朋など維新・明治期に活躍した偉人を多数輩出しました。
ペリーの黒船に乗り込んで海外留学を試みる情熱と行動力に加え、獄中で罪人たちを学問に目覚めさせる「感化力」も持ち合わせた幕末の先駆的な思想家でした。
- 抜群の人材育成の成果がある(40代男性)
- 自分の後に続く人材を育てた(80代男性)
- 部下の教育にたけている(60代男性)
- 先を見据えた教育、必要な人材の育成ができると思える(60代男性)
- 学問だけではなく、熱意も波及させたところ(40代男性)
- この人の教育に対する思いを聞いてみたい(60代男性)
- 改革の人だから(60代男性)
- 最近、夢を持たない若者が多いから(50代男性)
- 確固たる思想を持っている(40代男性)
- 人を掌握する力を感じる(60代男性)
- 俯瞰(ふかん)できる(80代男性)
2)第2位:津田梅子(15人、13.5%)、女子教育の発展に尽力した米国育ちの先駆者
- 時代を大きく変える教育を行った(50代女性)
- ジェンダーフリーに対応した教育をしてくれそう(60代男性)
- 部下の教育にたけている(60代男性)
- 人材を育ててくれそう(60代男性)
- これから何が必要になるか先読みできる(60代男性)
- 既成概念にとらわれない発想(60代男性)
- 先進性(80代男性)
- 困難に立ち向かう強さを感じる(50代男性)
3)第3位:島津斉彬(10人、9.0%)、進取の精神で西郷隆盛も発掘した幕末の名君
- 人を見いだす目は一番ありそう。教育なら他の方かもしれないが、会社で(社会に出て)学び成長するのは本人の義務なので、社内教育の優先順位は低め(50代男性)
- 人材発掘をやってくれそう(60代男性)
- 自身の鍛錬を怠らず教育してくれそう(50代男性)
- 先見性を持った采配ができそう(40代男性)
- 地道に活躍する方は尊敬したい(70代男性)
4)第4位:山内一豊の妻(千代)(4人、3.6%)、「内助の功」も“今は昔”?
- ワンマンにならないために必要な人(50代男性)
5)第5位:緒方洪庵(3人、2.7%)、適塾が輩出した偉人は多彩さでは松陰以上?
- 福沢諭吉などを育てた(60代男性)
- 多くの偉人を育てている(50代男性)
5 法務部門は大岡越前
1)「大岡裁き」に注目集まるも、実は有能な為政者としての実績あり(25人、22.5%)
テレビドラマでおなじみの大岡忠相です。江戸中期に旗本の四男に生まれ、8代将軍徳川吉宗によって江戸の南町奉行に抜擢されました。伊勢に赴任時、隣国である吉宗の紀州藩におもねらない公平な裁き(いわゆる「大岡裁き」)を行ったことが評価されたともいわれています。
江戸では、消防団に近い「町火消」を編成した他、貧しい人などを無料で治療する医療施設「小石川養生所」を設置するなどの施策で吉宗の享保の改革を支え、1万石の大名にまで引き立てられました。
- 真面目で、規律正しい(60代男性)
- 素晴らしい裁きをする(50代男性)
- 血の通った法律運用術(70代男性)
- 情の深い、庶民目線の裁きが好き(60代男性)
- 問題が起きたときに頼りになる(60代男性)
- コンプラに関しては大岡裁きは要らないが(60代男性)
- 数々のドラマ通りなら…(70代男性)
- 人情(20代男性)
2)第2位:廐戸皇子(聖徳太子)(9人、8.1%)、十七条憲法でも知られる伝説的人物
- 前例のない時代にあれだけのものを作った実績がある(40代男性)
- 法の先駆者(60代男性)
- ルール作りに向いてそう(60代男性)
3)第3位:遠山左衛門尉(遠山の金さん)(8人、7.2%)、桜吹雪はドラマだけ?
- 平等に、人情もある(60代男性)
- 名奉行(60代男性)
- 法律に詳しい(60代男性)
4)第4位:板倉勝重(6人、5.4%)、江戸初期の名奉行は「三方一両損」のモデルとも
- 法律に詳しいだけでなく、多くの人にいい形で運用できるのは、この方が一番。法を作るよりも、運用のほうが大事(50代男性)
- 戦うことばかりが法務の仕事ではないが、機転を利かせて丸く収めることができる発想力を評価して(60代男性)
- さまざまな立場の人たちをうまくまとめられそう(40代男性)
5)第5位:北条泰時(4人、3.6%)、北条義時の長男で御成敗式目を定めた第3代執権
- 御成敗式目を作ったから(50代男性)
- 法令遵守を実行してくれそう(60代男性)
いかがでしたか? 財務、営業、DXの結果もお楽しみください。
以上(2022年5月)
pj00630
画像:Mariko Mitsuda