皆さんに、「能力」と「自信」ということについてお話をしたいと思います。

皆さんはよく、「あの人は能力がある」というような言い方をすると思います。それでは、この能力というのがどういうものなのかと考えたことがありますか。

学生時代には、例えばテストの点数や順位、体力測定の数字といったように、能力を分かりやすく表現する基準があったかと思います。「彼の成績はクラスで1番」「彼は学校で一番足が速い」というのは、とてもはっきりとした能力の基準です。また、数字で表現はできなくても、例えば「部活で県大会に出場した」なども分かりやすい能力の証明です。

これが社会人になると、とたんに能力の基準というのが分かりにくくなります。社会人として求められる能力は、記憶力や読解力だけではなく、コミュニケーション能力や問題解決能力、場合によっては身なりや態度までも含まれるわけですから、学生時代のように「テストで100点取れたから能力がある」といった単純なものではなくなってしまうわけです。

社会人の能力というのは、こうしたさまざまな力を合わせた総合力で評価されます。それだけに、社会人になるとたとえ優秀な人であっても、「自分は果たして能力があるのか」と、自身の能力に対して不安を抱いてしまう人も多いようです。自分自身で自分の総合力を評価するというのはとても難しいことですから、それもやむを得ないことかもしれません。

私は、社会人が自分自身の能力を確認するための方法は「自信」の有無ではないかと思います。例えば、仕事をするとき、過去に取り組んで成功してきた仕事であれば自信が持てるはずです。逆に、初めて取り組む仕事や、これまで取引がなかった会社に初めて訪問するときなどは、心のどこかに不安を持っていると思います。自信を持ってできる仕事が自分の能力の範囲というわけです。

ここで一つ、見方を変えてみてください。仮に、常に自分が自信のある仕事だけをしていたとしたらどうでしょう。自信が持てる仕事とは、つまり自分がこれまでこなしてきた仕事です。言い方を換えれば、自分自身の幅を広げる新しい仕事に取り組んでいないということです。

仕事の幅を広げて、自分自身の能力を高めたいと思ったら、新しい仕事に取り組んでいかなくてはなりません。たとえ初めは自信がなくても、未経験の仕事に取り組んでそれを克服したとき、新しい自信が自分の中に生まれていることでしょう。そのときこそ、自分自身の能力が一つステージを上ったことが実感できるでしょう。

社会人は自分の能力に対して不安になることもあるはずです。けれども、それは決して恥ずかしいことではありません。仕事を通して不安を乗り越えることで、不安は自信へと変わります。そして、その自信は自分に力がついた証しでもあるのです。皆さん、新しい仕事には積極的にチャレンジしましょう。

以上(2022年7月)

op16474
画像:Mariko Mitsuda

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