6月に厚生労働省より、令和3年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。これは過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを、取りまとめたものになります。
本稿では、本資料の傾向を読み解きながら、労災に関するリスクについてご案内いたします。
1 労災補償状況の傾向
公表資料を見ると、「脳・心臓疾患」に関する事案の労災支給決定件数については、減少傾向がみられるものの、「精神障害」に関する事案については、増加傾向かつ過去最高の件数となっており、喫緊の対策が求められていることが見て取れます。
■脳・心臓疾患の労災補償状況
■精神障害の労災補償状況
2 「精神障害」の労災支給決定の原因となった出来事
それでは、増加が懸念される「精神障害」に関する事案について、具体的にどのような出来事を原因として労災が認定されているのでしょうか。資料を見ると、ハラスメントに関わる支給決定件数が約3割を占めていることが見て取れます。
■精神障害の出来事別決定及び支給決定件数一覧
※支給決定件数上位6件を記載
※「特別な出来事」は、心理的負荷が極度のもの等の件数
3 ハラスメントが発生する職場の特徴
昨年公表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」では、パワハラを受けた方がいる職場の特徴として次のものがあがっています。
■職場の特徴(パワハラ経験有無別)現在の職場でパワハラを受けた方の数値
※上位5件を記載
4 さいごに
パワハラという一事を取り上げましたが、前述の労災認定の出来事すべてにおいても、上司と部下との職場のコミュニケーションがあれば、「精神障害」の労災を回避できる可能性は高まるのではないでしょうか?今一度、職場のコミュニケーションを見返し、活性化を図ってみることをお勧めします。
※本内容は2022年7月12日時点での内容です
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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