少し気が早いですが、来年の大河ドラマ「どうする家康」が6月よりクランクインとなったそうです。主人公は皆さんもご存じの徳川家康。織田信長、豊臣秀吉の跡を継いで、戦国の世の最終勝利者となり、約260年続く江戸時代の礎を築いた人物です。ところでこの家康、「どうする家康」の前にも過去2回、大河ドラマの主人公になったことがあります。1983年の「徳川家康」と、2000年の「葵(あおい)徳川三代」です。どちらも名作ですが、面白いのは家康という同じ人物を扱っていながら、そのキャラクター像が大きく異なるという点です。

1983年の「徳川家康」では、戦国の世を終わらせて天下泰平を成し遂げようとする求道者のような人物として描かれました。家康の生涯最後の戦いとなった「大坂冬の陣・夏の陣」でも、敵方である豊臣秀頼の命を助けようとするなど、慈悲深くヒロイックな面が強調されていました。従来のたぬきおやじのイメージを脱却した“良い”家康像は、当時としては斬新で話題になりました。

一方、2000年の「葵徳川三代」では、戦国の世を長年生き抜いてきた老獪(ろうかい)な戦略家として描かれ、徳川家の天下を盤石にするためには手段を選ばない非情な一面が強調されました。大河ドラマでは視聴者の共感を得るため、主人公の暗い側面は控えめに描写されることが多いのですが、この作品ではあえてそれらを前面に押し出した“リアル”な家康像が評判になりました。

私は、このキャラクター像の違いは、家康という人物をどの側面から描くかというところからきていると思っています。家康を約260年間の平和をもたらした人物という側面から掘り下げるなら、「徳川家康」のような描き方になるでしょうし、豊臣家から天下を奪った人物という側面から掘り下げるなら、「葵徳川三代」のような描き方になるのでしょう。

ビジネスでも同じようなことがいえます。私たちは当社の商品・サービスに誇りを持っていますが、もちろん商品・サービスは完全無欠というわけではなく、長所もあれば短所もあります。問題は、例えばお客さまや取引先と、商品・サービスについて話をする場合、どの側面を強調するかです。

恐らく皆さんの多くは、商品・サービスの話をする場合、いかに長所を強調するか、つまり“良く”見せるかが大事と考えているでしょう。もちろん、そういうケースも多いですが、お客さまや取引先の中には、長所ばかりを強調されると、うさん臭く感じて警戒する人もいます。そうした場合、あえて腹を割って短所についても話をする、つまり“リアル”を見せた上で、商品・サービスを利用するメリットをお伝えしたほうが、相手の信頼が得られることがあります。どの商品・サービスをお薦めするかだけでなく、その説明の仕方についても、お客さまや取引先が何を望んでいるかを考えながら対応してください。

以上(2022年8月)

pj17115
画像:Mariko Mitsuda

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