経営コンサルタントの大先輩の一倉定(いちくらさだむ)先生の名言のひとつに「ダメな会社というのは、社長が部長の仕事をし、部長が課長の仕事をし、課長は係長の仕事をし、係長は平社員の仕事をしている。そして、平社員は何をしているかというと、会社の将来を憂いている」というのがあります。それぞれがその地位に応じた仕事をしなければならない、ということなのです。
1 会社は社長で決まる
一倉定先生は次のようにもおっしゃっています。「会社には良い会社、悪い会社はない。あるのは、良い社長、悪い社長だけだ」。私も経営の現場を多く見てきてつくづくそう感じています。
社長の仕事は「経営」です。中小・零細企業の場合は、社長も現場での仕事をしなければなりませんが、それでも社長が経営を行わなければ、会社はおかしくなります。私も10人ほどの小さな会社の経営者をもう20年以上やっています。コンサルティングや講演などの現場での仕事ももちろんやっていますが、それでも、経営を行っているのです。
2 「経営」という仕事と「正しい努力」の積み重ね
それでは「経営」という仕事は、具体的に何を指すのでしょうか。私は、次の3つの要素から成り立っていると考えています。1)企業の方向づけ、2)資源の最適配分、3)人を動かす。経営者は、この3つをきちっと理解した上で、それぞれの能力を高めなければなりません。
私は経営コンサルタントですが、自分では「経営者のコーチ」だと思っています。そして、経営が成功するためには、経営者が、先の3つに関して「正しい努力の積み重ね」を行うことが必要です。それをコーチするのが私の役割だと思っています。
「正しい努力」に関して言えば、たとえば、プロのサッカー選手になりたい人が、毎日卓球を10時間必死で練習しても、Jリーガーにはなれません。それと同じように、経営者として成功するためには、それにふさわしい訓練が必要なのです。この連載では、その「正しい努力」とは何かをお教えできればと考えています。
そして、あとはそれを積み重ねる。コピー用紙一枚一枚の厚さは0.1ミリあるかないかですが、それが500枚、1000枚と積み重なれば、5センチ、10センチの厚さとなります。経営者は、正しい努力とは何かを知って、それを積み重ねていくことが必要なのです。
もうひとつ大切なことは、実践です。頭で理解していても結果を出さなければ誰も評価しませんし、部下もついてきません。逆に、結果が出ないときは、やり方が間違っているのではないかと素直に反省することです。
3 「方向づけ」の能力を高めるには
経営では、「方向づけ」も大切です。方向づけとは、「何をやるか、やめるか」を決めることです。企業でコントロールできない「外部環境」と、自社と他社との相対的な強みや弱みを比較する「内部環境」を分析した上で、ミッションやビジョン、理念に合わせて、やるべきこと・やめるべきことを決めることです。これを言葉で説明するのはそれほど難しくありませんが、実践はとても難しいのです。
経営を「管理」だと思っている人もいるのではないでしょうか。もちろん管理も重要な要素ですが、管理は部長以下でもできる仕事です。経営の本質は「方向づけ」なのです。方向づけを間違って、完璧な管理を行うと、崖っぷちに早く到達するだけです。さらには、お客さまに対しての感度を高めなければなりません。そのためには、社長以下、全社員が「お客さま志向の小さな行動」を徹底することが大切です。お客さまを必ず「さん」づけするとか、電話を3コール以内に取るなどです。経営者が率先してやることが大切です。
4 資源の最適配分……部下が同じことをやっても許せるか
企業における資源とは主にヒト・モノ・カネです。ノウハウや経営者の時間なども大切な資源です。その際に、大切なことは、「公私混同をしない」ということです。上に立つ人が、公私混同をしていたら、下の人はやる気をなくします。社長がプライベートで使う高級車やゴルフ場のために、命を懸けて頑張ってくれる社員はいません。こんな単純なことも分からない社長も少なくないのですが、このことは後の連載で詳しくお話しします。
5 「人を動かす」ための2つの「覚悟」
最後の要素は「人を動かす」です。こちらもとても大切な経営の要素です。同じようなことをやっている会社でも、パフォーマンスが大きく違う会社があります。それは人の動き方が違うからです。人を動かすためには、経営者には2つの「覚悟」が必要です。
ひとつは「指揮官先頭」。先頭に立って行動する覚悟です。もうひとつは「責任を取る覚悟」です。社内で起こったことについては、最終責任は自分にあると常に考えることです。
「方向づけ」「資源の最適配分」「人を動かす」を実践で成功させることが何よりも大切ですが、そのための「正しい努力」とは何かについては、次回以降、それぞれ詳しく説明したいと考えています。皆さんは、それを「積み重ねる」ことが大切ですね。
以上
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