シリーズ第3回「お客さま第一を徹底する」では、「お客さま第一」の大切さを紹介しました。続く今回は、「お客さま第一」の会社の作り方について考えてみましょう。会社を繁栄させるには「お客さま第一」が何より大切であることは分かっていても、その作り方を知っている経営者は少ないものだからです。
1 「意識」より「行動」
「お客さま第一」が徹底されると、お客さまからの評判は上がり、働く人たちは働きがいを覚え、その結果、高収益企業になることができます。しかし、これがなかなかうまくいきません。
私はその最大の理由は、「社員の意識を高める」ための「意識教育」から入ってしまうところにあると思っています。もちろん、意識が高まるのは悪いことではありません。そのために、社員に優れた会社のことが書かれた本を読ませたり、ビデオを見せたり、場合によっては優れた会社を訪問させているところがあります。そのことで感銘を受けた経験のある人も多いと思います。
しかし、その直後はヤル気が出るのですが、長く続かない人がほとんどです。意識を高めることは大切なことですが、意識教育だけでどうにかしようとしてもなかなか難しいのが現実なのです。
それではどうすれば良いのでしょうか。私は多くの会社を見てきた経験上、「意識」から入るのではなく「行動」、それも「小さな行動」から教育をすることが一番有効だと思っています。
私がこのことに気づいたきっかけは、武道や茶道などでした。「○○道」というものは、最初は必ず「形(かた)」から入ります。同じ形を何千回、何万回と繰り返すのです。剣道だったら素振りばかり、柔道だったら受け身ばかりを最初は練習しますが、その「形」を何千回、何万回と繰り返しているうちに、「意識」も少しずつ変わるのです。だから、私たち凡人は「意識」ではなくまず「形」から入るべきだというのが私の持論です。
そして、お客さまも、社員の意識向上よりも行動を望んでいるのです。お客さまは、社員の意識の高低に関わりなく、電話を早く取って欲しいのです。書類を間違わないで欲しいのです。お客さまが望んでいるのは行動だということを、「お客さま第一」を目指す経営者は認識していなければならないのです。
そして、もう1つの行動の利点は、「やったか、やらないか」が一目瞭然で分かることです。その場ですぐに分かります。社員も、行動を変えることで、自身に変化が生まれ、結果が変わっていくことを認識すると思います。
2 具体的な小さな行動が働く人を変える
お客さま志向の「小さな行動」を行うわけですが、最初はそれほど難しいことをする必要はありません。例えば、次のようなことを徹底するのです。
- 社内の会議でも「お客さま」という言葉遣いをする
- 電話は3コール以内でとる
まずは、普段からの言葉遣いや小さな行動を変え、それを徹底するということが働く人の意欲を高め、高収益企業を作る第一歩となります。働く人も行動を変えると結果が表れ、また、お客さまから喜ばれるので働きがいを感じるようになるのです。
私の長年のお客さまで、「会社に行くのが楽しいので早く朝が来ないか待ち遠しい」という若い社員がいる会社があります。中には、朝早く出社して車をピカピカに磨いてお客さまに出向いていく社員もいます。
その会社も、以前はこれほどでもなかったのですが、社長が社員に「お客さま志向の小さな行動」を徹底させたことで会社が大きく変わりました。具体的には、毎月、各人が決められたシートにお客さま志向の「小さな行動」の目標を立て、それを、月末に自身、上司が5段階で評価し、常務や社長が、シートにコメントするということを繰り返したのです。
現場仕事や夜の作業も多く、肉体的にも結構きつい仕事なのですが、離職率も格段に下がり、最近社長に聞いたところでは、150人ほどいる社員で辞めた人はこの1年でだれもいなかったそうです。むしろ、この2年間ほどで、以前辞めた社員が4人戻ってきたとのことでした。お客さまに褒められるということは本当に働きがいになるのです。
お客さまに喜んでいただくことが、働く喜びを知り、モチベーションを高める最高の特効薬なのです。その会社では「お客さまが喜ぶこと」に加えて「働く仲間が喜ぶこと」、「工夫」といった、私がいう「良い仕事」の3つを毎月の目標として設定しています
3 経営者自身が先頭に立ってやる
「小さな行動」を行い、徹底すると言っても、実際にそれを社内に浸透させるのは簡単なことではありません。上で挙げた会社でも、抵抗勢力は少なからずありました。それを徹底させるのは、社長の仕事なのですが、まずは、自身が先頭に立ってそれを行うことです。自分は言う人、部下はやる人では部下はついてこないのです。会社を良くするためにやると決めたことは、先頭に立って行う強い「覚悟」が必要なのです。
以上
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