年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、大野 理恵さん(Career Fly 株式会社 代表)です。
今年(2020年)に入り、ビジネスをとりまく環境において一気に変化が起きたのは周知の通り。『オフィスに行かなくても仕事ができる』という価値観の変化、『DX(デジタル・トランスフォーメーション)への対応が急速に進化、発展、浸透しオンラインツール、社内コミュニケーションツールが常態化』というテクノロジーの発展、『リモートワーク、副業の一般化、フリーランスの増加、ワーケーション、選択できる働き方の多様化』。どこにいても仕事ができる環境が整い、働き方の慣習自体が変化している、世界中で文化慣習の変容が起きている。
- 価値観の移り変わり
- テクノロジーの発展
- 働き方への文化慣習の変容
この3つの変化から、【雇用のボーダーレス化】を進展させる環境が整い、採用する人材の国籍や居住に関わらず雇用が可能となることが常識化していく、この常識化をいち早く中小企業が取り入れていくことで、事業成長、発展を手にしていくことが大切になる、雇用のボーダーレス元年と位置づけているCareer Fly 株式会社の大野さんに最新の外国人人材事情についてお話を伺いました。
世界中で動き出している【リモートインターン】の状況、リモートインターンを活用している企業の事例、海外理系女子に特化している、求職者に特徴を持っている尖った事業概要、なぜこの事業に至ったか、大野さんの経験から見えてきた社名に込めた想いまでお伝えできればと思います。
最初に大野さんの人となりご経歴について。
1 大野さんとのエピソード、ご経歴について
1)なんて行動力がある人なんだと感心しました
大野さんにお会いしたのはおおよそ5年近く前。でも初対面では懇親会の中で名刺交換で軽くお話しする程度。そこからご縁はなく、しかしその数カ月後に驚くことが起きました。
それは、私が大野さんと出会った懇親会の中で参加者の皆さんに『こんな面白い会社があり、そのプロジェクトでこんなことをされています』とさらっと情報提供させていただいたこと。
大抵の方々は、『ふーん』、『へー』って感じで終わるのが世の常。その懇親会から半年後ぐらいに私がお話した会社、プロジェクトのことでその社長さんから、『杉浦さんが元々話の発端の大野さんと大きなイベントやるんですよ!』と連絡がありました。『大野さんってどなたですか?』と聞き返すほど私は忘れておりました。
私がさらっとお伝えしたことに、興味を持って、直接連絡を取り、自身で企画をクライアント企業に提案、数百名規模のイベントを実行する。そして後から私が知る。こんな経緯から、すごい人がいるもんだ、行動力があるとはまさにこのこと。そこから親しくしてくださっています。
2)インドの方々から私へもたくさんコンタクトが。。。ある日突然増えてビックリ。
今年の夏頃に、突然異国の方々から、Facebook上で友達申請が毎日のように増えてきた事がありました。特にインド人の男性から。多い日には10名近くの方々からコンタクトがありました。全く意味が分からずその申請者と共通の友人に大野さんが必ず入っていて、またビックリ。大野さんにお聞きしますと、ビジネスSNSのLinkedInやFacebook上でインドの方々とは1万名単位でつながっているとのこと。さすが国際派と思いました。
インタビュー時には、Career Fly 社 = インド、 大野理恵 = インド と言い切れるくらいに関係が深いと笑顔で話されていました。現在、Career Fly 社と事業パートナーがインド本国に7社あり、来年インドに進出も計画中とのことです。
3)ご経歴、そこから会社理念に通じること
大野さんの自己紹介時、ご自身の写真にオーストラリアとインドの国旗を掲示されています。日本の環境に馴染めなかった。昔から、言いたいことを言ってしまうタイプ。意見が食い違うこともしばしば、それを容認しない日本の特性に辟易としていた、息が詰まる感じの中で育ってきたと話します。社会人になって、オーストラリアで留学を経験。その時に、多種多様な人々と出会い、自分を受け入れてくれる、多民族共生の文化に魅了されていったそうです。そしてインドも同様に。この経験から国籍、ジェンダー、年齢に関係なく本来の能力で認められ活躍できる社会環境を創出したい、採用の領域で雇用ボーダーレスを実現していきたいと自社の事業に向き合っていらっしゃいます。Career Fly 社のミッション(目指すこと)に掲げる、【ちがい-Uniqueness-を創り、世界でCareer Flyする個と企業の創出を目指す】というところに現れていると感じます。
社名のCareer Flyが、キャリア(人生)の飛躍を後押しする会社、関わる全ての人のキャリアフライを実現するハブエージェンシーとなる、この辺りの事業定義についてもご自身の経験から明文化している事が理解できます。
2 海外理系女子に特化して事業を展開
1)85カ国5000名が人材データベースに登録
人材紹介、人材派遣の業界で13年ほど勤務の後にCareer Flyを起業、ありきたりな人材紹介業ではない尖った領域で事業を展開されています。それがHPの冒頭の言葉【海外女子が日本企業に違いを生み出す。】その理由、同社の強みは、以下の2点。
・量で違いを生み出す!
理工系分野教育を受けた女性は、各国に大量に存在するそうで、IT人材が不足している日本の労働人口において、理工系海外女子人材が量をカバーすることができると。ミャンマー、ブルネイ、ベトナム、インドのような新興途上国を中心に理工系学部を専攻する女性の割合は高いそうで、日本で理工系人材育成が遅れている状況を顧みると、第4次産業を牽引する理工系人材確保は急務であり、海外女子は数を補う救世主となるはずです。と謳っています。
実際、大野さんは、ミャンマーの工科系女子大学に赴き、授業まで請け負っていらっしゃいます。
・質で違いを生み出す!
→ダイバーシティ・文化形成:日本企業においては、ちがいを持ちすぎる海外女子を自社にて受け入れることでドラスティックな企業文化と社員意識の変革実現が可能
→新サービス創出・既存サービス改革:STEM分野の最新技術と知見を企業へ伝えることで、新規ビジネス創出を実現する(ASEANは理系女子が数を占める)
→強固な組織作りに貢献:たった一人の海外女子加入により海外進出の足がかりができる理工系脳も持ち合わせながら高い渉外力も兼ね備えている
異質な文化をいかに取り入れることができるか、企業の変化対応力がまさにコロナ禍で劇的に変わってきていますが、人材からその変化を起こしていくことが重要な時期になったと感じます。
日本国内だけで、今まで通り、慣れた環境で人材紹介業をやっていれば正直簡単なお話ですが、大野さんはあえて、企業体質変化にまで想いを巡らし、【採用】→【受け入れ(日本国内で)】→【定着】と一手間増やすだけのレベルではなく、幾重にも幾重にも丁寧にクライアント企業と向き合い、海外女子の日本での活躍の支援の実績を積み上げて来られてきました。かなり人材紹介の枠組みを超えて頑張っていらっしゃいます。これはクライアント企業側も今までとは違った経営、挑戦、ボーダーレスの取り組みの枠を超えていくことが今まさに必要に感じます。
現在大野さんに会社で把握している(登録している)、海外理系女子(主に、ITエンジニア・メカエンジニア・グローバル人事・グローバル営業職)は85カ国5000名を突破しています。年齢層は22〜34歳のジュニア世代、おおよそ58%が自国に居住、42%が日本に居住している人が登録しているそうです。
2)実際に海外理系女子を受け入れている企業について
私からのご縁で大野さんと仲良くしてくださっている方が何社かあります。その中で、2社が大野さんの会社HPに登場してくださっています。
・大成株式会社 加藤専務
→記事中のコメントより、『外国籍社員雇用で企業風土を変えていく』ことを目指しており、数カ国語を操る外国籍社員の方を積極雇用されています。既存社員の意識を変えていくには、まず風土を変えていく、その先に個人レベルの意識改革を実現させていく。外国籍社員採用に関して、当初反対の声が挙がっていたがやってみることで会社の空気感を「外国籍社員いいね。」に変える=風土変革を生み出し、改革へとつなげています。中国、韓国、インドネシア、エジプトなど多国籍社員が活躍する大成社においては、今後も国内外の各事業を牽引する優秀人材雇用を前向きに捉え進化し続けていくと考えています。
同社の記事はこちらです。
・株式会社空色 中嶋社長
→記事中のコメントより、『事業の継続性や海外展開を考えていくと、外国籍人材採用は必ず選択肢として挙がります。労働人口の減少により、採用競争は加熱し競争力の高い会社に人は流れます。この競争に打ち勝てるとは限らない会社は、日本人採用が難しくなるため外国籍採用を避けて通れなくなります。
繰り返しになりますが、私が思うには外国籍人材採用をやらない理由がないと思います。』と中嶋さんからも当たり前の時代が到来している認識を感じ取れます。
同社の記事はこちらです。
3 リモートインターン最前線について
1)グローバル企業では当たり前になっているリモートインターン
・海外とのインターンに関しての取り組みの違いを知る
日本企業、特に大手企業は採用に結びつく、紐つくインターンプログラムは実施していない(ワンデイインターン等の短期間である場合も)。海外では1カ月、数カ月が当たり前、履歴書にキチンとインターンの経験を書けることがかなり重要なことと大野さんは話します。
インドのインターンは内定をもらうために行くのが主流。コロナ後63%が既にリモートインターンに移行しています。これにより都会、地方、国のエリアは、オンラインツールの恩恵からもリモート化に影響してきています。
・Amazonが8,000名、EYが15,000名のインターンのうち半数をリモートインターンで実施すると発表
インドチェンナイVellore工科大の事例では、インテルなど大手通信企業が同校学生111名に対してリモートインターンオファーを出したり、2020年8月より10カ月のプログラム実施することを決定。その他25社のグローバル企業がリモートインターンプログラム参画を表明(Volvo Novartis Philipsなど)。これは優秀な学生は世界レベルで争奪戦に。日本の学生が置いていかれる、競争に取り残される状況がもう目の前に。月額5、6万円のインターンのアルバイト料、その後の入社した場合初任給が日本とインドとの違いがほぼ無い、変わらないレベルに、ボーッとしているうちに優秀な学生を世界レベルで採用できないことになる。競合他社は日本国内ではなくて海外企業との戦いなってきている、海外での採用で日本企業同士が闘う必要、雇用形態の多様性、自分たちの会社のプロモーションを海外に向けて発信していく。とやるべきことが山積していることが顕在化してきています。
海外にはインターンのプラットフォームがすでに存在していて、英語さえできれば、米国から英国へ、さらにリモートとなればアジアから欧米の国々でのインターンが気軽にできるように。日本も早く追いつかないとだめですね。
2)優秀人材をリモートインターンで採用した日本企業の実際
インド工科大学といえば、インド最高峰の工科大学、その優秀な大学生が集う大学からリモートインターンを実施した企業が、株式会社Diverta社。その加藤社長のコメントには、インターンへの考え方、実施の意味、採用へつながることへのポイントが明確化されていると感じました。そのコメントから以下に抜粋したいと思います。
- インターンシップの目的は、仕事をしてもらうのではなく、一緒に働きたいかどうかを確認することです。その適性を、うまく引き出して評価できるかを一番懸念していました。
- 一番工夫したことは、コミュニケーションです。一番の課題もコミュニケーションでした。コミュニケーションがなぜ課題になるかというと、情報を企業側が積極的に取りに行く必要があるからです。もちろん対面で仕事をしていても、コミュニケーションは大切です。ですが、オフィスでインターンシップができる場合、横にいるだけで様々な情報が目に入ります。「集中できていないな?」「調べ物してるのかな?」などです。また、行動傾向もわかります。例えば、考えるときに腕を組んで目の前の問題と向き合い考えるのか、行動しながら考えるのか、などです。
- 適応力・改善力です。まだ学生なので、知識やスキルを求める必要はありません。
こちらからの指摘やアドバイスに対して、どれだけ柔軟に改善ができるかや、適切なタイミングで質問ができるかなどを評価しました。自信を持って全てを評価できたとは言えませんが、少なくともこの適応力や改善力があれば、入社後も柔軟に変化ができるということなので、問題ないと思います。
→上記のコメント抜粋はこちらの記事から引用しています。
リモートインターン成功の秘訣について、大野さんに聞いてみますと、面白い回答がありました。『DXの導入と全く同じこと。それはトップのやる気があること、やり切る意識が経営トップになければ、DX導入を失敗することとリモートインターンの成功の鍵は全く同じです』現場任せでは良い人材は採れないということですね。
3)リモートインターンの実際と流れ
実際に上記の株式会社Diverta社でリモートインターンを実施、来年入社の意志を固めている、Jhalakさん。まずは、Jhalakさんのインタビュー動画を御覧ください。
この動画を拝見していて、やる気に火をつけることの大切さって大事ですね。リモートでありながらも信頼関係、コミュニケーションの構築ができれば、多少の時差、大きな距離感は関係ないのだと思い知りました。
Jhalakさんの日本での活躍を期待したいと思いました。
リモートインターン実施の流れについて、
- 株式会社Diverta社とCareer Fly社がインターン生の要件選定
- 現地で大学生向けにリモートインターンの説明会を実施 200名規模で参加
- Career Fly社が作った、独自のプログラミングテストと適性検査を組み合わせたテストを実施(短時間で正しく文章を読み取り的確なアウトプットを出す、読解力、構造化思考、論理思考を測るもの)
- 数名に絞った候補者と、株式会社Diverta社側とで面接を実施。
一連のプロセスを見ていると丸投げに近い状況までCareer Fly側が対応していることが理解できます。
4)大野さんから今後について語っていただきました。
「外国籍人材雇用をもっと手軽に気軽に!」
今後、多くの日本企業が外国籍人材雇用に乗り出し、「ちょっといいかも!」と楽しんで取り組んでもらいたいです。外国籍社員っていいね!外国籍社員と一緒に働くの楽しいじゃん!、そんな風にポップに感じ採用を新たなフェーズに持っていっていただきたい。決して、ハードルが高い取り組みではないです。そのために、弊社のようなエージェントが存在します。
「雇用ボーダーレス」は2020年を皮切りに加速化します。5年後、国内企業の職場を想像してみてください。自分のデスクの「横を見れば、中国籍の同僚が座っている。左を見ればインド国籍の上司がいる。」このような環境が常態化する可能性は大いにあります。日本に居ながらです。
企業は、今後どのマーケットで勝負をかけ、どのような人材を雇用していくのか、今一度熟考することをお勧めします。膨れ上がるインドマーケットで勝負をするならば、インド事情のわかるインド国籍社員を採用した方が良いのではないか?継続して日本市場で勝負をかけ続けるのであれば、新規事業を立ち上げ、それに精通する人材を雇用する必要があるのでは?など、経営戦略をもとにマーケット選定や人員確保を行います。一方、国内労働人口減少は待ったなし。そこを何でカバーするか今のうちに策を講じた方が良いでしょう。
外に目を向けると、70億人のマーケットが存在します。労働人口はその半分36.5億人です。豊富な労働力がグローバル市場に存在するにも関わらず、外国籍人材採用を始めない理由はないのではないでしょうか。少なくとも数の担保はできるわけです。
現在、外国籍の方に対する米国のビザ支給条件がかなり厳しくなっています。米国に希望を持ち就業を試みていた多くの若者が自国へ戻らざる終えなくなっています。日本にとって、この状況はチャンスです。米国へ流れていた優秀層を獲得することができる、そんなタイミングだと捉え今このタイミングに一歩を踏み出してみるのはいかがでしょうか。
最後に、弊社は2021年にインドへ進出する予定です。新たなマーケットに挑戦することは、多くのことを得ることに(良いことも悪いことも)なります。この新たな試みにワクワク感を持ち事業活動を継続してまいります。そして、今以上にキャリアフライすることを実現していきたいです。
大野さんのコメントのとおり、Career Fly社がますます飛躍する時代が来ようとしています。日本の未来に貢献できる会社としてご活躍をインタビューを通して、強く期待したいと思いました。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年10月23日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。
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