コロナウイルスの感染拡大によって、2020年の採用市場は激変しました。働きたい人に幾つの仕事があるかを示す有効求人倍率は、2020年1月の1.49倍から11月の1.04倍まで急降下。バブル期をしのぐ“空前の人手不足”といわれたビフォーコロナの時代から一転、企業業績の悪化が採用意欲を一気に奪っていきました。
またコロナ禍は、採用活動の方法にも大きな影響を与えました。中でも(現在の大学4年生、大学院2年生の)新卒採用は混迷を極めました。シーズンが始まる2020年2月、感染拡大によって会社説明会は軒並み中止。採用活動の真っただ中にあたる4月には緊急事態宣言が発出され、オンライン面接など新たな形での採用活動を余儀なくされたのです。
しかし見方を変えれば、この状況はまたとないチャンスです。他社が採用に慎重になる不況期は競争相手が減ります。ウィズコロナで採用活動に混乱を来たしている企業が多い中、いち早くノウハウを会得することができれば、採用の勝ち組になれます。
自社の未来を担っていく優秀なコア人材を獲得するために、この好機を逃さないでほしいーー。こういった思いから、本連載「2022年新卒採用必勝法」を立ち上げました。第1回目の本稿では、まず21年卒採用の総括、そしてウィズコロナ2期目となる22年卒の採用動向を探ってみます。
1 21年卒では、学生の中小志向が鮮明
リクルートワークス研究所が2020年8月に発表した大卒求人倍率調査によると、21年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.53倍と、前年の1.83倍より0.3ポイント低下しました。ここまで求人倍率が低下するのは、リーマンショックの甚大な影響を受けた年以来10年ぶりです。
内訳を詳しく見てみましょう。2022年3月卒と2021年3月卒の求人倍率を従業員規模別に見ると、次のようになっています。
従業員規模が小さい企業ほど求人倍率の低下幅が大きくなっていることが分かります。また従業員規模300~999人企業(0.86倍)と1000~4999人企業(1.14倍)を比べると、求人倍率が逆転しています。なんと統計調査を開始した2010年卒以来、初めてのことだそうです。
この理由は、企業の採用意欲が減退しただけではありません。学生の志望が大企業から中小企業へシフトしているのです。この調査によると、従業員規模1000人以上企業を希望する学生が28.8%減少する中、1000人未満の企業を希望する学生は前年比44.7%増加しています。300人未満の企業においては、8社で1人の学生を奪い合っていた状況から3社で競う状況となり、絶望的ともいえる採用環境が大幅に改善しています。
2 22年卒はやはり不透明感が漂う
では、22年卒の採用動向はどうなんでしょうか。
「就職人気ランキング」で上位の常連だったJTBは22年卒採用を見合わせることを決めました。ANAホールディングスも例年の10分の1以下に圧縮すると発表しました。こうしたニュースが、2020年秋から相次いで報道されるようになっています。年頭からの緊急事態宣言もあり、今後もJTBやANAのようにコロナ禍による業績悪化で採用を控える企業が出てくる可能性も否定はできません。
採用担当者を対象とした22年卒の採用計画に関するマイナビの調査「2021年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」(2020年9/4~10/5)によると、これまで継続的に新卒採用を行ってきた企業のうち、78.3%が採用を行うと回答しました。約8割が新卒採用継続という数字は、ほぼ例年並みです。
しかし内訳を見てみると、「実施する予定で概ね詳細も決まっている」とした企業は25.2%にとどまります。一方、「例年どおり検討中で、詳細は決まっていないが実施する予定」と答えた企業が44.2%、「例年より検討が遅れていて詳細は決まっていないが実施する予定」としたのが8.9%。5割以上の企業が実施はする予定だが詳細は決まっていないと回答し、採用計画に関する不透明感が漂っています。
またリクルートワークス研究所「2022年新卒採用見通しに関する調査」(2020年10/7~11/12)によると、例年と「変わらない」が45.0%でしたが、「減る」が11.6%、「増える」が7.7%と、「増えるー減る」がマイナス3.9ポイントとなりました。マイナスとなったのは2011年ぶりで、10年間続いた採用数増加のトレンドが途切れたことになります。
「わからない」と回答した企業も21年卒調査の19.7%から26.1%へと増加。マイナビの調査と同じく、コロナ禍により状況が見通せない中で、採用計画の遅れが見られます。
リーマンショック後の大卒求人倍率推移を改めて遡ってみると、直後(09年卒→10年卒)において0.52ポイント低下していますが、その翌年(10年卒→11年卒)においても0.34ポイント低下しています。やはり新卒採用意欲の低下傾向は2021年も続くと予測するのが妥当といえそうです。
3 就職活動の早期化に対応せよ
採用競合が減る。逆に学生の中小企業志向が高まる。こうした傾向が21年卒採用においても続きそうな中、この機を逃さないためにはどうすればいいのか。そのカギを握るキーワードは2つあります。それが新卒採用の「早期化」と「オンライン採用」です。
ご存じのように、「採用指針(就職・採用活動のルール)」を定めていた経団連は、21年春入社以降の学生に対しては指針をつくらないことを決定しました。そして、その代わりに政府がルールの策定を主導し、3年生の3月に企業の採用情報を解禁、4年生の6月には面接を開始することになりました。
22年卒についても、そのルールを踏襲する形になるとみられます。しかし経団連に加盟していない外資系やベンチャー企業はもちろん、経団連に加盟している企業ですら、優秀な学生を囲い込むため、先行して説明会や選考を行っています。ルールが形骸化されている状況は、さらに進行しているのです。
リクルートワークス研究所は、「早めに内々定を出す中小企業も増加しており、中小企業を第一希望とする学生数を押し上げている可能性もある」と指摘。学生の中小企業志向を、この就職活動の早期化に関連付けて分析しています。
確かに、コロナ禍で不安が増す学生にとって、いち早く自分を採用してくれることは、何物にも代え難い安心感なのかもしれません。いずれにせよ、早く学生と会うこと。採用の勝ち組への第一歩はここからです。
4 オンライン採用が明暗を分ける
もう一つのキーワードがオンライン採用です。人事領域の調査機関であるHR総研が実施した調査によると「2022年卒採用でより重要になると思われる施策」については、「オンラインでの自社セミナー・説明会」が最多で42%、次いで「オンラインでの面接」が38%、「自社採用ホームページ」が31%などと、オンラインを活用した採用活動の施策が上位3つを独占しています。21年卒採用で急激に広まり、もはや主要な採用手法の一つとなったオンライン採用は、ウィズコロナの22年卒採用で、より強化すべき施策と認識されていることがうかがえます。
採用ホームページを整備し、オンライン説明会の準備をする。これらの施策にもノウハウは必要ですが、最も重要なのがオンライン面接のノウハウといえます。
オンライン面接を実施して良かった点を同調査に寄せられた人事担当者の声からピックアップすると、「面接官の拘束時間が少ない」「移動時間・費用がかからない」などコスト削減・業務効率化につながったとするのが圧倒的でした。「場所の制約を受けないので在宅時でも対応できる」「会場の設定がいらない」「日程調整がしやすい」ことで、「辞退率が下がった」「遠方の学生も昨年より多く集まった」など、機会獲得を歓迎する声もありました。一方で、オンライン面接を実施して悪かった点としては、「学生の本音」「雰囲気」「熱意」などを推し量りづらいという声が多く上げられています。
つまり、学生との出会いが増えるという大きなメリットを享受するには、非対面での選考スキルを獲得する必要があるわけです。しかし逆にいうと、モニター越しの面接手法を攻略できれば、22年卒の採用において大きなアドバンテージを手にすることが可能というわけです。
例えば、面接を録画し複数の人事担当者で判断したり、手軽に面接できるメリットを生かし、面接回数を増やして「マッチング」の精度を高めたりして、オンライン面接を上手に活用している企業もあります(このあたりは次回に詳しく解説します)。ぜひオンライン面接のノウハウ吸収に前のめりになっていただきたい。
22年卒の新卒採用シーンは、やはり不透明感が漂っています。学生の中小企業志向も垣間見えます。この機を逃さず未来を担う優秀人材を獲得するために、学生との早期接触、オンライン採用の確立を急いでください!
以上
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