書いてあること
- 主な読者:同一労働同一賃金に対応できているかを確認したい経営者
- 課題:何をもって同一労働同一賃金に対応できているといえるのかが分からない
- 解決策:「均等待遇・均衡待遇」を理解し、その実現度合いをチェックする
1 「均等待遇・均衡待遇」の理解が第一歩
パート等(パートやフルタイムの契約社員)の労働条件を考える上で無視できない「同一労働同一賃金」。すでに施行済の内容ではありますが、
2024年4月1日から、労働契約の締結時に明示する事項が増えた(労働基準法施行規則)
ことなどにより、パート等の労働条件について一層チェックが厳しくなることが予想されます。ですから、自社の対応に抜け漏れがないか再度、確認してみましょう。
ポイントは「均等待遇・均衡待遇」です。
1.均等待遇
パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ場合、パート等であることを理由とした差別的取扱いを禁止することをいいます。なお、同じ取扱いのもとで、能力・経験等の違いにより差がつくのは構いません。
2.均衡待遇
パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」「3.その他の事情」を考慮して不合理な待遇差を禁止することをいいます。
以降で、均等待遇・均衡待遇を実現できているかを確認するためのチェックリストを紹介します。早速見ていきましょう。
2 チェック1:パート等の状況はどうなっているか?
パート等が「均等待遇・均衡待遇」の対象になるかを確認します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、このチェックリストは転勤のない場合を想定しています。
「○」「×」の見方は次の通りです。この確認が終わったら、次章に進んでください。
- 全て「○」:均等待遇の対象
- 1~5のいずれかが「×」:均衡待遇の対象
3 チェック2:賃金に待遇格差はあるか?
次に、正社員とパート等の待遇を比較します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、図表2の待遇は一例ですので、自社の内容に置き換えてお使いください。対象となるのは、正社員とパート等に対する全ての待遇(基本給、賞与、手当、退職金、福利厚生、教育訓練、安全管理など)です。
「○」「×」の見方は次の通りです。待遇格差がある場合、次章に進んでください。待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。
- 全て「○」:待遇格差はない。同一労働同一賃金に対応できています!
- 1~2が「○」:基本給の待遇格差はない
- 1または2が「×」:基本給の待遇格差があり、検証が必要
- 3~4が「○」:賞与の待遇格差はない
- 3または4が「×」:賞与の待遇格差があり、検証が必要
- 5~6が「○」:○○手当の待遇格差はない
- 5または6が「×」:○○手当の待遇格差があり、検証が必要
4 チェック3:待遇格差に合理性はあるか?
チェック3はとても重要です。正社員とパート等の間に待遇格差がある場合、それが合理的かどうか、つまり同一労働同一賃金に対応できているかどうかを確認する内容になるからです。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。
「○」「×」の見方は次の通りです。是正が必要な待遇格差がある場合、次章に進んでください。是正が必要な待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。
- 全て「○」:待遇格差は合理的、同一労働同一賃金に対応できています!
- 1または2が「×」:待遇格差は不合理であり、是正が必要
なお、チェック1で「均等待遇」の対象となったパート等(図表1の項目が全て「○」だったパート等)の場合、そもそも全ての待遇について正社員と同じ取扱いにすることが義務付けられているので、このチェックをするまでもなく、速やかに正社員と同じ取扱いにするための検討を行う必要があります。
5 チェック4:待遇格差の是正は進んだ?
最後のチェックです。ここまで進んできたということは、御社には是正すべき待遇格差があるということです。実際に待遇格差の是正を行った上で、次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。
全て「○」になったら、ひとまず同一労働同一賃金の対応は完了です。パート等の人数などによっては対応までに時間がかかることもあるでしょうが、同一労働同一賃金に対応しようとする会社の姿勢を社員に示すことはとても重要です。
以上(2024年4月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)
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