ビジネスでの「言い方」について、次のようなことに困ってはいないでしょうか。

  • 商談などで「丁寧な言葉にするとどうなる?」と迷い、しどろもどろになった
  • 他意はないのだが、自分の言い方でイラッとされたり、誤解されたりしがちである
  • クライアントや上司に、もっと信頼してもらえるような言い方にレベルアップしたい
  • 普段、チャットに慣れているため、目上の方とのメールや対面での言葉遣いに迷う

こうした方には、ビジネスで使う言葉の「言い換え」をご提案します。特に考えたいのは、「依頼」「断り」「感謝」シーンでの言い換えです。
今どきは、チャットやSNSで用件のみをスピーディーにやり取りすることも多いでしょう。普段はそれでいいと思いますが、例えばツールを使わない方や目上の方とやり取りするとき、言葉遣いに迷ったり、知らないうちに失礼な言い方になってしまったりするかもしれません。そうならないよう、本記事の言い換え例が少しでもお役に立てれば幸いです。
なお、本記事でご紹介しているのはあくまで一例です。相手との関係性や、時と場合などによって、適切な言い方は変わってきますのでご留意ください。

1 「依頼」:相手が気持ちよく引き受けたくなる「お願い言葉」

相手との関係性や内容にもよりますが、人に何かをお願いするときは、言葉を選びたいものです。言い方次第ではトラブルにもなりかねませんので、相手が気持ちよく引き受けたくなるように言い換えてみましょう。

1)相手に対応を求めるときには配慮を表す

言い換え例

「見てください」「確認してください」「ご覧ください」

「お目通しいただければ幸いです」「ご一読ください」「ご査収ください」
「ご高覧くださいませ」「ご笑覧くださいませ」

メールや書類などを確認してもらうとき、「ご覧ください」より、さらに相手を敬う「ご高覧」という言い方があります。「ご高覧」は目上の方へメールで確認をお願いするときに使うとよいでしょう。「ご査収」は「調べて受け取る意で、主に丁寧な感じの文章に用いられる硬い漢語」(*)((*)「日本語 語感の辞典」中村明(岩波書店))で、主に取引先へ納品する際のメールや添え状などに使います。「ご笑覧」はさらにへりくだった言い方で、手紙に向いているでしょう。
また、「お目通し」「ご一読」に「のほどをお願いいたします」を続けることもあります。「のほどを」は、相手にお願いする事柄に添えて遠慮がちに伝える言葉です。

ちなみに、「いただく」と「くださる」には、語感に違いがあります。「くださる」は、「相手がわざわざ手間をかけて」というニュアンスが強くなります。重要なお願い事や、社外の方、目上の方ならば「くださる」で問題ないでしょう。ただし、ほんの少しのお願い事で「くださる」は、言いすぎた印象もあるので注意が必要です。

さらに「お忙しいところ恐れ入りますが」「ご多用の折とは存じますが」など、相手に配慮する言葉を言い添えたいものです。そして、忙しい相手にこそ、「○日ごろまでに」とスケジュールを明確に伝えることが大切です。調整が可能なら「スケジュールが難しいようでしたら調整させていただきます」と一言添えるとよいでしょう。

2)催促するときこそ丁寧に

言い換え例

「ご返答ください」

「いかがでしょうか?」

 相手に返答を求めるときや、催促しなければならないシーンもあるでしょう。そんなときはストレートに要求するよりも、「いかがでしょうか?」と様子を伺うのも一策です。そうすると、相手を非難するニュアンスを回避できます。
催促メールのマナーや、その返信マナーについては、下記のコンテンツもあります。

【文例付き】上から目線にならない催促メールのマナー
【文例付き】相手を不快にさせない催促メールへの返信マナー

3)教えてもらう立場で「参考」は失礼な感じも

言い換え例

「参考までに教えてください」

「ご教示いただければ幸いです」「勉強させていただきますのでお教えください」
「後学のためにご教示ください」

ビジネスでは、相手に教えを請うシーンもあります。基本はへりくだった立場で教えていただくようお願いすることです。

気を付けたいのは「参考に」という言い方です。辞典で引くと、参考とは「自分の考えを決めるための足しにすること」(**)((**)「新明解国語辞典」三省堂)、「いろいろ他のものとひきくらべて自分の考えを決める手がかりにすること。また、その手がかり」(***)((***)「日本国語大辞典」小学館)となっています。あくまでも「足し」「手がかり」にしかすぎない扱いです。

そのため、例えば新入社員が先輩から仕事を教えてもらう場面や、社外の方から何かを教えてもらう場面では、「参考になります」「参考までに教えてください」は、失礼にあたります。「勉強になります」「後学のためにご教示ください」などが適切な言い方です。対等な立場で意見交換をするのであれば、「参考までに」を使うのは問題ないでしょう。

4)自分が「させてもらう」お願いは、相手に可否を問う

言い換え例

「○○させてください」

「○○いたしますこと、ご容赦いただければ幸いです」
「○○いたしますこと、お許しいただければ幸いです」

自分が何かをさせてもらうようお願いする場合は、「ご容赦いただけますか」「お許しいただければ幸いです」など、相手へ可否を問うニュアンスが加わると、より丁寧で配慮の感じられる言い方になります。事象をくみ取って配慮してもらう「ご斟酌(しんしゃく)」という言葉もあります。

5)「同行する」「一緒に食事をする」なども丁寧な言い方で

言い換え例

「同行させてください」「一緒に行かせてください」

「ご一緒させていただければ幸いです」「お供させてください」

上司の商談に同行したり、社外の方や上司と食事をともにしたりすることもあるでしょう。上記は、目上の方とともに行くシーンで使うことができる言葉です。

また、「ご相伴(しょうばん)にあずかります」という言い方もあります。お願いするのとはニュアンスが違いますが、目上の方に誘われて、「同行させていただきます」「(何かを)一緒にさせていただきます」を表す丁寧な言い方となります。

食事なら「ご饗応(きょうおう。供応とも書く)にあずかります」という言い方もありますが、フォーマルすぎて上司や先輩にはやや大げさに聞こえるかもしれません。その場合は「ごちそうになります」のほうが、気持ちが伝わりやすいでしょう。

2 「断り」:角の立たない「お断り言葉」

何かを断るときも、言い方次第でトラブルになることもあるため、気を使います。とはいえ、回りくどすぎて断る意思が伝わらないのも問題です。ここでは、角の立たないお断りする言葉や、それに関連して、目上の方に対して意見するときの言い換え例などをご紹介します。

1)強い否定の言葉はできるだけ使わない

言い換え例

「無理です」「できません」

「○○の面がネックで難しいのですが、Bの方法ではいかがでしょうか?」(具体的に
困難な事由を述べた上で、代案・譲歩案を出す)「あいにく難しく存じます」
「心苦しいのですがいたしかねます」「私には荷が勝ります」「力及ばず」

 断る際の「無理」という言葉は、プライベートの会話では、冗談のニュアンスも含め、わりと頻繁に使われます。しかし、実はかなり強い否定の意味を持つ言葉なので、ビジネスではできるだけ避けたいところです。上記のような言い換えを心掛けましょう。具体的に何がネックになっているのかを述べた上で、代案や譲歩案を出すことが望ましいです。

また、目上の方からお願いされたことに対して、身に余る役目を拝命し光栄だけれども、今の自分は未熟で果たせないというニュアンスであれば、「荷が勝ります」「力及ばず」と伝えた上で、「勉強します」「経験を積みます」と、今後に前向きな姿勢を示しましょう。

2)「上司がそう言うので」は基本的に使わないが、時と場合による

言い換え例

「上司がそう言うのでできません」

「弊社の見解は○○ですので(自社としてのできない理由)、申し訳ございません、
ご対応させていただくのは難しい状況です」

自分には決裁権がなく、会社としての判断で断らなければならないシーンもあるでしょう。その際は、「上司がそう言うのでできません」「上司に言われたのでできません」といった無責任な印象の断り方ではなく、対外的な発言は上記のように言い換えましょう。
ただし、相手にとって納得感があるなど、時と場合によっては、あえて「上司がOKと言わないのでできない」という言い方で断ることもあります。

また、似たようなシーンとして、自分では決裁権がなく、その場でOKか判断できないので、一度社内へ持ち帰る商談の場合もあるでしょう。そのときは「すぐにはお答えできません」だけではなく、前向きなイメージを印象付けることが大切です。「いったん持ち帰らせていただいて、より良い案があるかもしれませんので、社内の詳しい者に聞いてみます」「関連するデータなどを確認してまいります」などが考えられます。

3)「結構です」はOKかNGか分かるようにする

言い換え例

「結構です」

「(OKかNGかを明確にして)構いません」「問題ございません」
「差し支えございません」

 「結構です」は、断る意味と、「いいですよ」というOKを示す意味の両方があり、誤解を招きやすい言葉です。さらには、断る際の「結構です」には強めの響きがありますので、上記のように言い換えてみましょう。例えば、「ご返信は結構です」を「ご返信はいただかなくても問題ございません」に言い換えるイメージです。

 同様に誤解を招きやすい「大丈夫です」も、OKかNGかを明確にして、「問題ございません」「差し支えございません」などと言い換えるとよいでしょう。

4)意見するときは「生意気を言うようで……」というニュアンスを含ませる

言い換え例

「お言葉ですが」

「僭越(せんえつ)ながら」「差し出がましいようですが」
「不躾(ぶしつけ)ながら」「おこがましいようですが」

 目上の方へ、断るというより意見しなければならない場面では、自分のような若輩者が生意気を申し上げるようで恐れ多いのですが、というニュアンスで伝えるとよいでしょう。

5)言い添える謝罪の言葉は、断る内容や相手との関係性に合わせる

断る際に、謝罪の言葉を添えることもあるでしょう。下記に、謝罪の重さ度合いについて、一般的なイメージを列挙してみました。

謝罪の言葉の例です

「断る」とは次元の違う話になってきますが、甚大な被害を伴うミスや不祥事であれば、最大限に重い謝罪で誠意を表すことが大切です。
 しかし、ちょっとした食事の誘いを断るのに、不釣り合いに丁寧すぎる謝罪をしてしまうと、かえって嫌みになってしまいます。謝罪は、内容の度合いや、相手との関係性によって使い分けましょう。


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3 「感謝」:またの機会につながる「感謝の言葉」

社内外問わず、また、目上・目下の立場に関係なく、「感謝」はとても大切です。相手との関係を深めたり継続させたりすることにもつながります。表面的な物言いではなく、心のこもった伝え方をしたいところです。その際のポイントは「温度感」です。

1)感謝の基本は、相手に対する全肯定と「付け加える自分の温度」

言い換え例

「お時間をいただき、ありがとうございました」
「ご足労いただき、感謝します」

「すてきなご縁をいただき、ありがとうございました」
「実り深いお時間をありがとうございました」
「すてきなお話をお聞かせくださり、ありがとうございました」

感謝を表すシーンでは、例えば相手との関係をよりよく継続していきたいときは、「すてきなご縁をいただき、ありがとうございました」のように、相手との関係性や、相手そのものを肯定し、感謝する言葉を伝えるとよいでしょう。

「感謝」の言葉を言い換えるときは、言い換えるというより、

自分の思いや気持ちを自分の言葉にして、一言付け加える

のが最も伝わりやすいかもしれません。自分の中にある温度を伝えるイメージです。心から出てくる感謝の思いを言語化する。これに勝る言葉はないでしょう。

2)最後に感謝を伝えポジティブな余韻を残す

クレームであっても、最後は「貴重なご意見、ありがとうございました」と感謝を伝えましょう。心理学で「終末効果」といい、最後に与えられた情報が、その後の評価に大きな影響を与えるとされています。どのような会話、やり取りでも、感謝で終えることでポジティブな余韻を残すことが大切です。

補足 「目上の方」を想定した印象アップにつながる言い換え例一覧

 最後に、ビジネスで頻繁に使う言葉の言い換え例を紹介します。ちょっとした言葉の言い換えひとつで、相手への伝わり方や印象が変わることがあります。

言い換えの例です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年9月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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inquiry01@jim.jp

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